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和紙と四季桜による村づくり
「四季桜」咲く農村休暇村計画

愛知県小原村企画振興課主幹

青木善昭

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和紙の里・四季桜の里

 小原村は、愛知県のほぼ中央部北端、三河高原北西部に位置する人口四千六百人の小さな村で、古くから和紙の里として有名である。室町時代からの紙すきの里としての長い歴史、戦後は藤井達吉が創始した美術工芸和紙、これを背景に県は昭和五十四年、和紙工芸の複合施設「和紙のふるさと」を開館させた。ここでは小原の紙すきの歴史を知ることができるとともに、村内の作家の代表的作品を鑑賞することができ、紙すきの技法が短時間で体験できることからも、人気を集めてきた。
 近年は、和紙の里としてだけではなく、春と秋の二度にわたり花見を楽しめる珍しい品種、四季桜の名所としても知られるようになってきた。二十年ほど前から育成に力を入れてきたが、近年ようやく約二千本が成木となり、秋の紅葉の時期にモミジの赤を背景に浮かび上がる幽玄なサクラとして、さらに雪の中で楽しむ可れんなサクラとして各種マスメディアにも取り上げられ、にわかに秋の観光スポットとなった。

四季の回廊整備事業

 小原村は都市部から比較的近距離にありながらも、その農村的・歴史的たたずまい、手工芸の伝統技術など、高度経済成長期に多くの農山村地域が急激になくしてしまったものを失わずに残してきた。低成長期に入り、人びとの興味が棚田など自然の豊かさや歴史的な落ち着き、手の技が持つ温かさに移ってきている今、当村がこれまで残してきた多彩な風景や資源は、新しい時代の豊かさを実感させるものであるにちがいない。まさに小原村は、気軽に楽しむことができるグリーンツーリズムの舞台、として高い資質を持っているといえる。
 これらの資質を生かした計画を平成九年度に「四季桜咲く農村休暇村計画」として策定したところ、同計画が国土庁所管の今年度山村都市交流補助事業として全国で唯一採択され、「おばら四季の回廊」整備事業として実施することとなった。
 基本理念を「大規模な施設を整備する施設整備重視型のリゾート開発」ではなく、「農村が持つ魅力をそのまま楽しみ、地域と交流する新しい形のレクリエーションの提案」とし、テーマを「村民と都市住民が農村の自然や歴史、伝統文化を通じて交流する村」と定めた。それを実現するために、イギリスを中心に人気があるカントリーウオーキングを範とした、約十キロに及ぶウオーキングロードを整備しようというものである。
 ウオーキングロードは、訪れた人の体力差や趣味の違いを考慮して、各種ルートを整備する。それらは季節の移り変わりや順路を逆にしたり、組み合わせをすることによって多彩なバリエーションを持ち、訪れるたびに違う魅力を発見できる村となる。
 具体的な整備としては、村の中心地区に位置し、歴史的にも高く評価される「市場城址」をその歴史的価値を保全しつつ、四季桜による修景、散策路、案内看板等の整備を行う。城址は桜の映える場所であることから、四季桜の新名所となるであろう。
 この「市場城址」を起点とする「おばら四季の回廊」を整備することにより、「和紙のふるさと」と連携した拠点ゾーンが形成される。また、歩くことによる観光でこそ、小原の歴史や自然との交流が生まれる。さらには、このような都市との積極的な交流により、村内の高齢者の生きがいづくりや商業への波及効果など、山村地域の活性化が図れるものと期待している。

ボランティアの育成

 今後の問題点としては、維持管理体制の確立がある。ウオーキング先進国のイギリスでは、たとえば管理主体は自治体、運営は主に民間団体が行っているが、ウオーキングガイド、ルートの清掃、点検、植樹といった実際の諸活動は住民やボランティアが主体となって行う、といった協力体制が成り立っている。つまり、ルートの管理運営にはボランティアの協力が不可欠であるのだが、今回の事業については行政側が仕掛けたものであり、まだボランティアの育成は進んでいない。行政と住民が対等の立場で役割分担することが大切なので、当面は行政が主体となって維持管理を行うが、将来は、住民管理の体制を構築していきたいと思っている。

和紙のふるさと活性化計画

 一方の観光の柱である「和紙のふるさと」は村を代表する観光施設であるが、十九年を経過するに至って、入り込み客の伸び悩みなど、いくつかの課題が顕在化してきた。そこで、「和紙のふるさと」を活性化するため、平成十年九月に「和紙のふるさと活性化計画推進委員会」を発足させた。会長には平成七年当時、和紙のふるさと活性化計画をまとめ上げた板倉宏前村長、副会長には和紙工芸作家として全国的に著名な山内一生先生を迎え、ほかに村内の団体の代表者等からなるそうそうたるメンバーで構成されている。今後は、計画に基づき具体的に検討していただき、体験カリキュラムの充実や休憩施設をはじめとする付帯サービスの向上、周辺に点在する豊かな自然や観光資源とのネットワーク化など、新しい「和紙のふるさと」づくりに向けて、取り組んでいかなければならない。

歩いてこその村風景

 いずれにしても、今年の三月には「おばら四季の回廊」は整備されるので、少しでも多くの方々に来ていただき、村内の人びととの交流が図られることを期待している。それは、村の人びとと気軽にあいさつし合い、道端の道祖神に立ち止まり、四季桜の下に弁当を広げる。歩いてこそ見えてくる風景を大切にする。そんな村づくりになればと思っている。

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