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地方分権はいばらの道か

時事通信社出版局長

樋口 満

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 ある地方都市がK省、M省、N省の補助金をもらって複合的公共施設を造ったが、玄関を三つ設けたことが問題となった。自治体はそんな非常識なことをやるから信用できない、という意見が出た。何も知らない地域住民ならいざ知らず、中央省庁の官僚がこう言うのだから始末が悪い。
 三省が縄張り根性で玄関を要求したから、造らざるを得なかったわけで、自治体が好んでそんなことをするわけがない、というのが地方自治関係者の反論である。
 地方分権で大事なのは、国と地方の役割を明確にし、国に余計なお節介をさせないことである。現状では、まちづくりのための都市計画の重要な部分について市が自ら決定することができず、いちいち建設大臣の許可を得たうえで知事が決める。国が知事を手足に使って介入する仕組みだ。市長もしばしば国の手足にさせられる。国の画一的で事細かな関与が地域の個性の発揮を難しくしている。
 首長は選挙で選ばれた住民の代表なのに、法律でいや応なしに国の地方行政機関、つまり下部機関の役割を負わされ、中央省庁の指揮監督に服することになるのは不合理だ。地域のことは、地域経営の最終責任を負う首長に任せるべきなのである。中央と地方が上下、主従の関係ではなく、対等・協力というパートナーの関係に立つ分権型システムの確立こそ急務である。地域の創意と個性を生かした「多極分散型国土」の形成は、地方分権によって可能性が開けてくると思う。
 政府の地方分権推進委員会はこれまで五次にわたる勧告を出してきた。地方自治体が「自己決定・自己責任」という原則の下に自らの行政運営を進めていくための勧告だ、といってよい。その中でも大きなウエートを占めるのは、機関委任事務の整理。自治事務と法定受託事務に分けたこと。つまり、自治体が今まで国の機関として、あるいは国の出先機関の長みたいな立場で執行していたもののうち、六割が自治体本来の事務になるということだけでも自治体の事務権限が広がるということになるわけである。
 しかし、第五次勧告は国の直轄事業や補助事業の範囲の限定などを柱とした公共事業の見直し、ということだったが、事業官庁の抵抗で地方分権推進委員会の作業は大幅に遅れた。国道の地方道への移管、直轄事業の範囲見直しなど先送りされた。そして「統合補助金」の創設は実現することになったが、申請書に工事個所・内容を明記する実施計画の添付を事業官庁が求めたことから、「個所付け廃止」も見送られた。
 一八七九年(明治十二年)、福沢諭吉が「政治はできるだけ地方分権でなくてはならない」と分権論を展開している。そしてようやく地方分権推進基本法が制定され、地方分権推進委員会の勧告も第六次に入ろうとしているが、心配なのは、中央省庁の省益、権益にこだわる姿勢が相も変わらず強く、自治体への「不満」「不平」が根強いことである。勧告や法律がいくらできようが、政治にリーダーシップがなければ地方分権など進まない。地方分権はばら色ではなく、いばらの道が続くのではないかと気をもんでいる。

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