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徳島県徳島市 単なる消費者でなく、生活者 蔵本駅前「パティオ」を戦略事業に |
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徳島市経済部参事 |
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笠井利一 |
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スーパー移転で衰退
徳島市は、古来から「阿波国」と呼ばれ、四国一の大河、吉野川の豊富な水によってはぐくまれた都市である。
その市内の西側に位置し、都心から約四キロの地点に蔵本地区がある。国立の徳島大学医学部と同付属病院などの総合病院が二つ、JR蔵本駅、県立野球場やプールなどを中核施設とする総合公園などが地区のシンボル施設として、街全体の個性を表現し、また、街のにぎわいや、地区経済など地区内約九千五百世帯の人びとの生活に、さまざまな形でかかわっている。
その蔵本町にある商店街は、国立大学に隣接する二つの総合病院と、JR蔵本駅までの約二百メートルの間に南北に広がり、三本の通りを中心に約百七十店が集積している。
そのうち、蔵本駅前商店街には昭和四十三年から地元資本によるスーパーが進出し、長年にわたって通りの核店舗として高い集客力を保ってきた。
そのスーパーが、平成六年に蔵本地区から約一キロの隣の地域に新設されたSCの核テナントとして移転したことから、それまでの共栄関係から一転して競合関係となり、商店街の人通りは一気に二分の一、三分の一に減少した印象を受けるほどの変化が起こった。
それに伴い、各商店の売り上げは大幅に減少し、そのうえスーパー退店後の店舗は放置されたままで、衰退する商店街をシンボリックに表現する存在となっていった。
理念は「コンビニタウン」
この危機的状況に、七年、地元商店街の有志二十五人が「蔵本まちづくり委員会」を結成し、商店街おこしのためのさまざまな活動に取り組んだ。まずは先進地視察から始まり、商店街への要望や自分たちの実態把握に関するアンケート調査の実施、定期市などの実験イベントも開催し、消費者ニーズの調査と、これから蔵本駅前商店街が進むべき方向性を見定める作業を行った。
これら一連の調査結果に基づき、委員会が見いだした結論は、スーパー跡地を活用したミニショッピングセンターの独自開発であった。そして、開発コンセプトは「こだわり商品を集めた地域のコンビニエンスタウン」であり、「地域との密着性を重視した商業戦略と、施設を地域全体のコミュニティ拠点とする」こととなった。
建設に際しては、施設面積五百平方メートル以上、敷地内の三分の一の広さの広場を設けると、公的な補助金や無利子融資が受けられる「商店街パティオ事業」を活用することとなった。
計画づくりには約二年を要した。途中、事業計画の策定作業、国・金融機関からの融資交渉、出店者の募集などに至るまで膨大な量の作業を、中心的にこなしてきた蔵本パティオ事業協同組合の並川理事長の過労による二度の入院騒ぎや、商業者にとって不慣れな作業などから、苦労が絶えることはなかった。
地域への密着を追求
そのかいあって、九年十二月に、売場面積千平方メートル、事業者十四店、駐車場百台、一階に旬鮮市場などの最寄り店を配し、二階にはチャイルドハウスなどの買回り店をそろえ、三階に百五十八平方メートルのコミュニティホールを設けて、地元商店街再生の起爆剤としての期待を背に「パティオくらもと」は完成した。
開店当初、オープンが冬場であったことや、品ぞろえに統一感が不足していたことなどから、計画どおりには売り上げが伸びず、低迷期が数カ月も続いて関係者が頭を抱える時期もあった。また、この事業が全国で三番目のパティオ事業であることから、毎日のように視察団が押し寄せ、「買い物客より視察団の数のほうが多い」と揶揄(やゆ)されたときもあった。
しかし、現在は各店の商品構成も充実し、固定客も増えてきたことなどから、売り上げは当初の目標に近い状態になってきている。
協同組合を設立したころ、蔵本地区で独居老人が死後三日たって発見されるという事件があった。そのことに、強いショックを受けた組合員らは、地域との密着性と地域貢献を追求する観点から、老人世帯に対するいわゆる「寄せのサービス」を決断し、昔ながらのご用聞きを復活させることとなった。
ご用聞きとPOS融合
これは、ご用聞きという古い商法を現代のPOSシステムと融合させ、会員に対して買い物代行を中心に、依頼されればはがきの投函なども行うもので、会員が三日間以上来店もしくは発注してこない場合は、連絡をとり、安否を確認するというものだ。
このシステムは、顧客を単なる消費者ではなく、生活者としてとらえようという協同組合の考えに根ざしたものであり、会員申し込みの多さはもちろん、大学生などのボランティアの申し出があるなど反響も大きく、これからの商店街の進むべき方向性を示しているのではないだろうか。
衰退する商店街にあって、「パティオくらもと」がオープンして以来、街が明るく元気になったと好評だが、運営面においてはまだまだ充実させていく必要がある。しかし、地域にコミュニティの場を提供することを目的に整備されたコミュニティホールは、各種セミナーや趣味の集いなどに利用され、地域生活者の活動・交流拠点として着々と成果を上げている。
市としても、蔵本パティオ事業を衰退する商店街再生のための戦略的な事業としており、今後、関連ソフト事業により、街全体の活性化を図っていきたいと考えている。
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