|
|
|
|
|
鳥取県倉吉市 地元しかないものに磨き… 中心商店街、土蔵活用で振興へ |
|
叶ヤ瓦常務取締役 |
|
|
里見泰男 |
|
|
|
|
「黒壁」参考に組織づくり
山陰の小京都、この響きの良い呼び名で旅行雑誌などにたびたび登場する倉吉市は、人口五万を超える鳥取県中部に位置する小都市である。周辺町村の中核の役割を担うこの都市の歴史は古く、城下町としての繁栄、人の手を使った脱穀機の勇「稲こき千刃」での全国販売の実績など、工業化社会以前に培った先人たちの歴史の跡が点在する、落ち着いた風情を醸し出す街だ。われわれの土蔵活用による商店街振興も、そんな歴史の重みのなかに、置き忘れたようにたたずんでいた建物を利用することから始まった。
全国どの中小都市でも、中心商店街は悪戦苦闘しているが、倉吉市でも例外ではなく、郊外型ショッピングセンターへのお客の移行、大都市への買い物ミニ旅行など、商店街はきびしい状況にある。そんな商店街の再生への取り組みは、倉吉でも国の方針のもと、平成三年から特定商業集積法の調査事業とともに始まった。調査報告書の策定に続き、より実現性の高い方法を探る懇談会や委員会を数年間続けた。
そんななか、視察した滋賀県長浜市の株式会社黒壁の取り組みを参考に、組織づくりを考えた。民間が代表者の第三セクター組織、テーマを持った取り組み、大型店との競合のない商品構成や雰囲気づくりなど、黒壁のエッセンスを倉吉に応用できないものかと考えながら、組織づくりに着手した。
「ない…」から「あるモノねだり」へ
現在もさまざまな悩みは継続しているが、株式会社赤瓦という第三セクターの組織は動き出した。倉吉のような地方都市からの情報発信を考えると、発想の転換が必要である。「ないモノねだり」から「あるモノねだり」へを基本にしている。大都市にあるモノはねだらない。味わいたければ出かけて行く。その代わり大都市にはなく、倉吉でしか味わえないものに磨きをかける。そんな取り組みができないか、と試行している。
まちのなかで眠っている建物があれば、持ち主に提供をお願いする。ある青年部に行動力があれば、その行動力を発揮してもらう。資金のある人には出資金をお願いする。知恵のある人には知恵を出してもらう。地域にあるものを集めての取り組みで地域への愛着が増す。そんなまちづくりをイメージして、赤瓦は動き始めた。
三年からの取り組みで、施設の概要や採算性など方向はこれしかないと分かっていても、次のステップへ踏み出せないケースは、しばしばある。総論賛成、では各論は? 倉吉の場合、中心メンバーがひとり○○万円と、具体的に出資金額を議論のまな板に乗せることから始めた。同時に全体の構想のなかで、用意できる資金で可能な事業を考えた。
三館が次々にオープン
利用する建物の所有者に、了解をもらう行動を起こす。まず、点での起爆剤を整備するという考え方である。この取り組みには失敗は許されない。今の商店街は、先に進むにも、現在地に止まるにも、後に退くにも、大変な努力を伴う状況に置かれていることは間違いない。まさに四面楚歌の状況だ。
幸い、倉吉は商家の町並みや土蔵群が大きく変わらずに残っている。起爆剤にはもってこいの財産である。第一歩はこれしかない、と全員が一致した。
九年九月、第三セクターのまちづくり会社、「株式会社赤瓦」が資本金三千万円で設立された。設立の準備作業と同時に各館の内容を検討、入居してもらう人を募集し、直営店の内容も考えた。実現と決まってからは、同時に行わなければならないことが目白押しだった。
頭のなかのパニック状態が、何度も波のように押し寄せる。そんな波に沈没しそうになりながら、十年五月、赤瓦の三館が次々にオープンし、起爆剤が動き出した。一号館は「観る、買う、食、休憩」の四つの機能をもつ。名乗って、もてなし中心蔵。しょうゆの醸造に使われていた土蔵を改修したものだ。
まだ不十分なノウハウ、資金
倉吉周辺で産出する地ビール、草木染め、和風小物、絵手紙、倉吉絣(かすり)や古布、そして日本海の幸などを本格イタリアンに料理するレストランなど、つくり手の顔の感じられるこだわりの店が入っている。二号館には、郷土玩具の張り子人形「はこた人形」の販売と工房、倉吉在住の三仏師の作品や木彫り教室が入っている。三号館は造り酒屋の土蔵を改修し、竹工芸のこだわりのお店を竹蔵と称し、収容している。
当初計画の整備がほぼ完了し、マスコミや雑誌の協力もあり、以前より訪れる人は増えている。中心商店街再生への取り組みは核組織が誕生し、点としての施設は不十分ながら整備ができた。しかし、商業という生き物を通してのまちづくりはまだ緒についたばかりで、問題山積みの状況だ。
中心市街地特有の駐車場問題、案内板の不親切さ、商品構成の魅力不足、広場や街路の質の低さなど、この取り組みを線や面に広げるには、まだまだノウハウも、資金も不十分だ。倉吉市や倉吉商工会議所、中小企業団体中央会、地域活性化センターなどの援助を受け、地域と一体となった商店街の活性化を夢見ている。
|
|
|