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41 山形県遊佐町

「シャボン玉BOX」 尾形なつさん
自然にやさしい石けん製造
みんなで、わいわい楽しく

子孫にもきれいな川を

 山形県の最北に位置する遊佐町は、出羽富士と呼ばれる鳥海山の裾野に広がる自然豊かなまちで、このまちを流れる月光川水系では、古くからサケの人工ふ化が盛んに行われてきた。そのサケが帰ってくるきれいな川を子供や孫の代まで残すことを目的に、リサイクルクラブ「シャボン玉BOX」は平成五年一月に設立された。
 会員は五十人(そのうち三十五人が女性)で、遊佐町以外の人も入会可能のアットホームなクラブである。「わいわい楽しくやろう」がモットーで、会則もつくらず、代表の尾形なつさん(五〇)を中心に、のびのびと活動している。
 主な活動は自然にやさしい石けんづくりで、町内の学校などから回収した食用廃油を原料にしている。粉と固形の二種類で、合わせて年間約二千三百キロほど作っている。石けんのほとんどは、会員や廃油を提供した町内の学校に配ったり、「シャボン玉BOX」主催のフリーマーケットで販売したりしている。
「シャボン玉BOX」の母体となったサケの加工グループ「レディースゆーわ」や会員が経営する小売店で、粉石けん一キロ三百円、固形石けん一袋(三百グラム程度)百円で販売している。基本的には、町内で使う分しか作っておらず、原料の廃油も学校から回収する量でまかなっている。昨年九月には、高橋山形県知事が視察に来るなど、製造現場を視察する個人や団体も多くなっており、これをきっかけに、交流している団体もある。

映画を上映、文化貢献も

 設立当初、自分たちの活動を知ってもらおうと行った映画上映会が好評で、それ以来毎年一回、町の中央公民館で上映会を開催している。ベルリン国際映画祭銀賞受賞作品の田島征三原作「絵の中のぼくの村」など教育的作品を上映し、映画館のないまちに文化貢献もしている。そのほか、講演会を行うなどさまざまな活動を展開しており、運動の輪は着実に広がっている。
 そもそもの活動のきっかけは、米の契約消費者から「おいしい米を作るには、きれいな水を残す努力をしたほうがいい」と提案されたところに、廃油を利用すれば環境にやさしい石けんが簡単に作れる、という話を聞いたことにある。
 しかし、問題は資金面だった。市販の石けん製造用プラントは、備品を含めると約百五十万円必要で、資金のほとんどない「シャボン玉BOX」にとっては、とても高価なものだった。資金調達のため、入会金を三万円に設定し(現在はなし)、会員の勧誘をしたり(結果的に十一人しか集まらなかった)、牛乳パックで作った「名刺」(一枚二十円)や「葉書」(一枚三十円)を販売した。しかし、四十万円程度しか集まらず、目標額には達しなかった。

大潟村の人たちが協力


 そんなとき、牛の飼育で交流のあった秋田県大潟村の佐藤さんから、ステンレスのドラム缶を利用した石けん製造用ミニプラントの話を聞いた。佐藤さんは大潟村の「八郎湖」というリサイクルクラブに所属しており、そこでは不要になった給湯タンクを利用したミニプラントを使い、石けんを作っていた。ドラム缶を利用したプラントはコストを抑えられるという点で、資金がない「シャボン玉BOX」には好都合だった。
 さっそく大潟村まで出向き、プラントや石けんの製造方法を習った。プラント製造は、修理工場を経営している会員に製作を依頼したが、その会員は大潟村に習いに行かなかったので、見よう見まねで製作し、何度かの失敗の後完成させた。石けんの製造にしても、最初は煮詰めすぎたりしてうまくいかなかった。
 しかし、「八郎湖」のメンバーが遊佐町まで教えに来てくれるなどの協力を得て完成した。市販のミニプラントは一気に作り上げられるのに対し、ドラム缶を利用したプラントは、粉末にするのに精米機を使ったりと手間がかかる。「シャボン玉BOX」の石けんは、作り手の苦労や愛情も詰まっている石けんなのである。
 設立から五年余り。石けん作りも軌道に乗ってきた現在、今後の目標はと聞くと、二つあるという。

サケ、シラウオのそ上増える

 一つ目が、新しい作業場を作ること。現在は尾形さんの農作業小屋を使っているが、道路の拡張工事に伴い、小屋の一部が削られた。作業をするときは農機具を片づけたりしなければならない問題が出てきた。また、会員の集まる場所がないので、話し合いをしたり、ビデオで勉強するなどの研修部屋のある作業場を新築したいそうだ。設計図と見積書もできており、総額で百六十万円ほどかかる。しかし、資金が問題で、町の助成制度に申し込むなどして建設に向けてがんばっている。
 二つ目が基金をつくること。文化・教育・福祉のために二百〜三百万円の基金をつくり、地域に貢献したいとのこと。目標達成には課題もあるが、大事なのはみんなでわいわい楽しくやっていくことで、あせらずにがんばりたい、と尾形さんは笑顔で答えてくれた。やりたいことが多くて、時間が足りないといった感じさえもする。
 三十年前は、川にシラウオやサケが少なくなった、と嘆きの声が聞かれたそうだが、今では、それらのサカナのそ上が増えたことを実感できるまでになった、という。これは尾形さんら「シャボン玉BOX」の活動の成果ではないか。尾形さんは大したことをしているわけではないと謙そんするが、少なからず、関係していることは間違いない。
 自らの意志でいきいきとボランティア的活動に従事している尾形さんを見ていると、人間の心の豊かさを感じる。これからも楽しんで、さまざまな活動にがんばってほしい。




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