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岡山県哲多町
「食源の里」を推進、薬膳料理で
お客は年二万、無農薬野菜本格生産へ

哲多町長

竹元武士

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最近過疎もやや鈍化

 岡山市から国道一八〇号線を高梁川に沿って北上すると、石灰岩の切り立った、中国山脈の山間の町に着く。そこは空気がうまく、水は清く澄んできれい、そのうえ人情味あふれる町である。哲多町だ。
 人口四千百で、過疎の町といわれるが、最近では、分譲住宅の建設や若者定住対策事業などにより、過疎化もやや鈍化した。
 しかし、高齢化は進む一方で、現在二七%にも達している。そこで、本町では高齢者の健康管理はもちろんのこと、行政施策の中に成人病対策を大きく位置付け、力を入れているところである。
 飽食の時代といわれて久しい今日、日本人の食生活は欧米並みになり、高コレステロールや高血圧の人が多くなって、年齢に関係なく成人病が増えている。
 こうした中で、有機無農薬野菜をはじめとする自然食品に関心が高まっているのは当然といえる。このため、自然の中にある本町から成人病など出してはいけないと思っている。幸い、本町では従来から推進作物としていたモロヘイヤや有機無農薬野菜、キノコ、山菜、薬草が豊富である。これを使った薬膳(やくぜん)料理を味わってもらい、それが結果としてまちおこしにでもなればと考え、着手したのが「食源の里づくり」だった。

地元の板前に無償貸与

 高梁川の源流で、心を洗われるような清い流れの宮河内川があり、約二百五十ヘクタールの丘陵には、岡山県が建設した健康の森がある。その中に精神薄弱者の自立を目指した養護学校と授産施設が一体となった、全国にも例のない「健康の森学園」が平成三年にオープンした。
「食源の里」は、こんな美しい自然とすてきな施設を背景として、四年度に岡山県地域振興事業のひとつとして着工された。二千五百平方メートルの建物が五千五百万円、薬草園などが一千三百万円の総事業費六千八百万円で建設し、五年六月に完成した。施設は日本料理を修業した地元出身者に無償で貸与。腕前は保証付き、そのうえ、薬膳料理をじっくり味わえるとあって、関東、関西からもお客が訪れている。
 また、送迎バスを二台持っており、運転手は専属一人だが、お客が多いときはチーフ自らもハンドルを握り、近隣の固定客をしっかりとつかんでいる。客層は中高年の女性が圧倒的に多い。

売り上げ、年六千五百万円に

 毎週水曜日は休みで、一日平均七十人、年間約二万人に利用していただいている。総売り上げは六千五百万円で、年々伸びている。職員は常時六人、パートを入れると二十人にもなり、小さな町では大きな雇用の場ともなっている。
 ここで少し薬膳料理をご紹介しよう。
 まず、中国原産の黒米のおかゆ、黒米のツブツブがなんともいえない舌ざわりで、とてもうまいといわれている。てんぷらはゲンノショウコ、クズの葉、マタタビ、オオバコ。そのわきにはサワガニの空揚げ。これはこの辺りの渓流でとれたものである。
 それにそばがまたうまい。いま、話題のエジプト産健康野菜、モロヘイヤを使った一見茶そば風のものだ。そしてコンニャクの刺し身、フキとフキノトウの煮つけ。漬物類はハワサビと梅干し。自然の恵みをそのままとり入れたメニューである。
 人間には精神的な作用がかなりあるので、知って食べていただければ、より効果があると思い、薬草の効能もしっかり伝授させていただいている。
 さらに哲多町の和牛を使った肉料理はスタミナ十分。しかも、毎日メニューが変わるので、また同じかということがない。そのうえ、安いので人気がある。

観光と結ぶ薬草園へ

 食源の里の建設とともに、地元有志七人が立ち上がり、薬草組合を結成した。もちろん、自然の中から採取して食源の里で使用すること。さらに、栽培可能なものは生産して、町の特産品にしようとの狙いもある。
 薬草は日々草、シャクヤク、ベニバナ、サフランなど。それに、薬木のオオヘギの研究・生産も行っている。そして、秋には「食源まつり」を開き、今年も二千人を食で楽しませることができた。
 現代は飽食の時代といわれ、一億総グルメ時代ともいわれて久しい。その弊害からか、「医食同源」あるいは「薬食同源」といった言葉を耳にする。思うに戦前の日本においても、病気にならないためには、何より食べ物を管理することが大切だと考えられていた。わたしたちが毎日いただいている食物には薬効があり、それが健康を維持しているのであろう。
 今後は、薬草園の整備を進め、観光に結び付けたいと考えている。また、無農薬野菜の本格的生産に向けて、土づくりから始めることにした。幸い、本町は畜産団地が多いことから、糞尿を有効利用したいと考え、堆肥供給センターを九年に建設した。無農薬野菜生産組合とともにいま、歩みを始めたばかりである。
 こうして、行政と住民が一体となって、“田舎らしさ”を大切にしながら、食でまちおこしに頑張っている。

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