aozora.GIF kawa.GIF

../gif/syokuobi.gif


tensen.gif

栃木県宇都宮市
「餃子の街」職員研修がきっかけ
観光にひと役、多くの客集める

宇都宮市商業観光課観光係主査

大金敏彦

tensen.gif

ラーメンに次いで人気

 中国で餃子(ぎょうざ)がいつ誕生したのかは定かではない。新疆ウイグル自治区の唐代の遺跡から餃子とみられる食べ物が出土したり、清代、明代が発祥だという説もある。日本には江戸中期ごろに伝えられ、長崎、横浜などの港町を中心に、点心のひとつとして存在し、戦前でも中国帰りの日本人は、好んで餃子を食べていたという。しかし、一般的には顧みられることなく、戦後、大陸からの引き揚げ者が持ち帰ると、食料難の時代と相まって全国的に普及するようになった。
 これからも分かるように、日本において餃子は「美食」や「グルメ」という言葉からは縁遠く、庶民の食べ物ということがいえる。中国では、餃子は正月や縁起物の料理として庶民に愛されていたというが、日本ではとにかくラーメンに次いで人気がある。それではなぜ、宇都宮に餃子なのか。
 宇都宮を餃子の街として売り出すことになるきっかけは、平成二年度の宇都宮市職員研修グループのリポートに始まる。この研修は、三十代半ばの職員が対象になり、五人がチームとなって自由なテーマを研究・発表し、よいものは実際の行政のなかで生かしていこうとするものだ。
 このグループは、これまで「宇都宮」という地名から連想するイメージが希薄だったことから、何かPRできる個性はないかと模索していた中、着目したのが総理府が毎年出している家計調査年報の餃子の購入額だった。

家計調査で購入額全国一

 昭和六十二年、家計調査年報に餃子の項目が加わって以来、年間購入額が全国第一位になっている餃子を使えないかと研究を始めた。市内の専門店を食べ歩いたり、近隣の「喜多方ラーメン」や「佐野ラーメン」が、いかにして全国的に知名度を上げたかの検証を行い、宇都宮の名を餃子を通して浸透させていくことを提言した。
 また、このグループが市民二百人を対象に行ったアンケートの結果も興味深い。「餃子が好きか」の問いに、九三%の人びとが「好き」と答え、「月に何回たべるのか」では「二回」「三回以上」が合わせて六一%にものぼった。さらに、「餃子を宇都宮の名物にすること」には、七二%の人が賛成という結果だった。
 新聞などでも、このユニークな研修が取り上げられ、商業観光課もこの提言を生かすため、観光協会とともに餃子マップの作成に着手した。餃子店、中華料理店の協力を得て、平成三年十月にリーフレットが完成し、観光協会やJR宇都宮駅、掲載された店舗などで一年間で一万枚を配布した。このPRにより、徐々に「宇都宮の餃子」が話題にのぼるようになってきた。
 五年、餃子会発足のため、餃子店へのアプローチを開始した。ふたを開けてみると、当初の予想をはるかに上回る三十八店舗の加入となり、七月に「宇都宮餃子会」が発足した。ちなみに、現在は四十一店舗となっている。

テレビと提携し大PR

 また、市内の由緒あるホテルの料理長が、フカヒレの餃子など全部で七品の「餃子のフルコース」を完成させたのも、マスコミの脚光を浴びる伏線となった。
 そんな折、テレビ東京から取材が飛び込み、テレビ番組(おまかせ!山田商会)とタイアップするかたちで、大PRが行われた。
 その内容は、
1.PRのためのイベントを開催する。
(十月二十四日ギョーザフェスティバル開催)
2.餃子ソングをつくる。
3.宇都宮は駅弁発祥地なので、餃子弁当をつくる。
4.餃子PRのためアイドルを選ぶ。
5.駅前に餃子像をつくる。
6.餃子キャラクターを作成する。
といったものであった。
 このプロジェクト実施の模様が、同年十月から翌年の二月に七回に分けてテレビ放映された。その後も新聞や雑誌などでも扱われ、「宇都宮の餃子」を多くの方に知っていただくことができた。マスコミのすごさに改めて驚かされたわけだが、問題はなぜ、宇都宮に餃子なのかである。
 戦時中、宇都宮に駐屯していた陸軍第十四師団が、中国東北部に進駐した際に覚えた餃子の味を、復員後、宇都宮で広めたのがきっかけになったという説もある。また、宇都宮の気候は内陸性で寒暖の差が激しいため、冬は体が温まり、夏はスタミナ源になる餃子を好んで食べるのだともいわれている。

「当たり前」に隠れてた特色

 この真偽はともかく、餃子が、宇都宮の風土と歴史に根ざした食文化であるにはちがいない。
 前述のように「宇都宮の餃子」が知られるようになる十数年も前のこと、私の職場では、仲間同士で昼食をとるために、何軒かなじみの店があった。そのひとつの餃子専門店は、いちばん遠く、一キロ近くあるにもかかわらず、週に一度は通っていたものだ。「どこの店がうまい」といった会話の中にも餃子が必ず出てきたことが思い出される。
 宇都宮に餃子の専門店が多いことや、焼き餃子だけでなく、水餃子や揚げ餃子、スープ餃子などさまざまなバリエーションの餃子が食べられていることなど、地元の人間にとって「当たり前」のことの中に、気がつかなかった地域の特色が隠れていたわけである。
 地域社会は、それぞれ独自の自然環境や風土、固有の歴史、文化、産業を有している。この地域資源の価値を、日常のなかで再発見し、再評価する行為を続けていくことが「まちづくり」の第一歩になることを餃子が教えてくれている。いま、宇都宮では餃子が観光にひと役かい、多くの客を集めている。

●前ページへ戻る

●1月号の目次へ