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岩手県東和町 「末端は先端行政」「生産者の誇り」維持 温泉利用直売所、道の駅を計画 |
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東和町地域開発課流通販売対策推進室副主幹 |
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菅野 和 |
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平成九年五月、神奈川県川崎市に新しい村が誕生した。岩手県東和町の産直センター「東和ふるさと村」である。本町と川崎市はりんごの産直が結ぶ縁で十年前から交流が始まり、市民保養交流施設建設協定や災害時相互応援協定の締結を経て、今回の村誕生に漕ぎつけたものである。
川崎市中原区の武蔵小杉駅(JR南武線、東急東横線)に隣接する(財)川崎市中小企業・婦人会館一階にある施設内には、本町はもちろん、岩手県や同じ町名を持つ全国三つの東和町の特産品を販売する「物販スペース」と、これら特産品を主食材としたレストラン「味処とうわ」(七十四席)や、料理教室などのための「カルチャースペース」などがあり、総面積百六十四坪。
施設工事費一億三千七百万円のうち、二千四百万円は農水省の補助を受けたものである。「東和ふるさと村」の事業主体は町、JAおよび外食産業の(株)日本ばし大増とでつくる第三セクター「(株)とうわ大増」。社員数は町やJAからの出向者およびパートも含めて約二十人。オープン以来五カ月の利用客数は約三万二千。総売上額七千五百万円程度と、まずは順調な滑り出しとなっている。
低農薬米、開店前から行列
とくに毎月十八日は「東和の日」として、有機低農薬栽培、自然乾燥の「特別栽培米」を特売し、開店前から行列ができるほどの盛況ぶりである。また、自然・新鮮・安全・安心が信条の野菜、果実、雑穀、豆類およびその加工品も人気が高く、懐かしいふるさとの駄菓子類とともに固定客が付いてきている。
さて、(株)とうわ大増が「東和ふるさと村」を直営することになった経緯は、オーナー店である「ます八銀座店」を抜きには考えられない。なぜなら、(株)とうわ大増はあの大冷害の五年十二月に、その被害克服を含め、新たな農産物の流通システム構築を目指す先駆的な取り組みとして設立された会社だからである。
この四年間で、「ます八銀座店」への地場産品供給額はコメ、野菜、牛肉、地鶏、地酒などを中心に累計で二千五百万円以上となっており、この首都圏での実績が基礎となったのである。さらに、全国四東和町東京事務所との連携による情報の受発信基地としても重要な役目を果たしており、四十数席の店内は故郷の味に舌鼓を打つお客さんでにぎわい、飲むほどにアンテナも順調に伸びている現状である。
地元に八百屋、半年で二千四百万円
ところで、本町ではこれら首都圏への産直拡大を図る一方で、本町内や近隣の利用者のための地元産直施設「農家の八百屋さん」(三十八坪)も、「東和ふるさと村」より一月早い九年四月、国道二八三号線沿いにオープンさせている。
この施設運営は現在のところ農業振興のための第三セクター、(株)とうわアグリトピア公社が当たっており、同社の販売部門である「まほろばの郷物産センター」の支店として、新たな販路開拓の先鋒となっており、開店から半年でおよそ二千四百万円の売り上げ実績を誇っている。
また、「農家の八百屋さん」が担っているもうひとつの役目は、産直を支える生産者組織の育成である。生産者自らが生産と販売・流通を体験し始めたことで、計画的な栽培や加工に意欲を示しており、将来的には本施設は農家など生産者組織の自主運営に移行させたいとの思惑がある。
このように、北東北岩手県の中南部に位置する人口一万一千三百、世帯数三千五十余りの小さな町が、「末端行政は先端行政」を合言葉に大きな挑戦を続けるのは、まさに「食」は人類の文化すべての根源であり、生命を継承してゆく食糧生産にこだわり続けることで、生産者の存在価値と誇りを維持したいと考えるからである。
「東和を自給農地に」期待
だからこそ、消費者との直接交流の機会が増すことで、いままでは「知らない誰かのため」だった生産行為が、「私の農産物を待っているあの人のため」となり、同様に価格と食味が優先だった消費者も「あの人が私のためにつくってくれたもの」という、いわば自給農地を東和町に持っているような意識の芽生えに期待しているのである。
しかし、課題累積のわが国農政に投じた自主減反の小石が跳ね返されたように、農産物価格の低迷や生産費用の増大、生産者の高齢化や農業後継者の減少など、全国の生産現場と同様に抱える障害の壁は厚く、試行錯誤が当分続くものと思われる。とはいえ、都市住民が求める農業・農村の価値は、ただ生産のみではないことを実感したいま、そこに住む人間の体温や息づかいが伝わる関係づくりのため、新規事業に着手しようとしている。
たとえば、北上山系初の湧出である「日高見の霊湯東和温泉」に隣接して、開業一年で二十三万の入場者を記録した集客力をフル活用した「生産物直売・食材供給施設」と、東北横断高速道インターチェンジに関連した「道の駅」の建設をそれぞれ計画中である。この両事業の整備によって、農家所得の向上と就業機会の確保が図られるばかりでなく、生産物の販売と流通に新展開が生まれ、東和町の「食」が彩りを増すものと確信する。
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