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地方公共団体の少子化対策

自治大臣官房企画室

河合宏一


 近年、出生数は急激に減少しており、平成八年の合計特殊出生率は一・四三と、史上最低を記録した七年の一・四二から若干改善したものの、人口を維持するのに必要な二・〇八を大幅に下回っている状況である。この少子化の進行と平均寿命の伸長とが相まって、二十一世紀半ばには、国民の約三人に一人が六十五歳以上という、超高齢社会が到来することが予測され、将来のわが国の社会経済の在り方そのものに深刻な影響を与えるとみられている。
 こうした状況を受けて、九年十月に人口問題審議会が、「少子化に関する基本的考え方について─人口減少社会、未来への責任と選択─」と題した報告書をまとめたところであり、本稿ではとくに地方公共団体の立場から少子社会にいかに取り組むべきか検討を加えることとする。

少子化の要因と背景

 出生率低下の要因の第一は、未婚率の上昇である。昭和四十年代半ば以降、男女とも晩婚化が進む中で、女子の未婚率はこの十年で、二十五〜二十九歳が三割から五割に、三十〜三十四歳が一割から二割に上昇している。
 もうひとつの要因は、平均出生児数の低下である。夫婦の平均出生児数は、十五年の四・二七人から、三十年代後半には二人台に低下し、その後四十年代後半以降は二・二人前後で推移しており、二・六人という平均理想子供数との乖離(かいり)がみられる。
 こうした状況の背景には、個人の多様な生き方の表れという側面とともに、女性の社会進出とそれを阻む日本の雇用慣行・企業風土、景気低迷や年金制度などにかかわる将来の社会に対する不安感などがあるのであろう。

少子化の影響

 少子化の進行によるマイナス面の影響は、経済面および社会面の双方にある。
 経済面では、労働力人口の減少とそれが及ぼす経済成長への影響が懸念されるほか、高齢化の進展に伴う現役世代の社会保険料などの負担の増大、それに伴う手取り所得の低迷が挙げられる。
 社会面では、単身者や子供のいない世帯が増加することによる家族形態の変容や子供の社会性が低下することが挙げられている。子供数の減少により子供自身が仲間の中でもまれる機会や我慢することなどを学ぶ機会が減り、子供自身の健やかな成長への影響が懸念されている。
 また、これまで急速に過疎化・高齢化が進んできた農山漁村のみならず、広い地域で過疎化・高齢化が進行すると予想され、現行の地方行政体制のままでは、福祉サービスや医療保険の制度運営にも支障を来すなど市町村によっては住民に対する基礎的なサービスの提供が困難になるという、地方自治にとって極めて切実な問題も指摘されているところである。

少子化の要因への対応

 少子化対策は、少子化の要因に対する対応と少子化の影響に対する対応とに分けて考える必要があろう。
 要因への対応としては、まず、固定的な男女の役割分業や仕事優先の固定的な雇用慣行を是正する必要があろう。長い間、培われた国民意識を変えるわけであり、容易なことではないが、国、地方公共団体が率先して滅私奉公的な雇用形態を改めていくなどの対応も検討してはどうであろうか。
 次に、エンゼルプランである。エンゼルプランは、平成六年十二月に、文部、厚生、労働、建設の四大臣合意により策定され、今後おおむね十年間を目途として、保育、雇用、教育、住宅など各般にわたる施策について、基本的方向と重点施策を盛り込んだものである。
 その具体化のひとつが、同年同月の大蔵・厚生・自治の三大臣合意で策定された「当面の緊急保育対策等を推進するための基本的な考え方(緊急保育対策等五カ年事業)」である。そこでは、七年度から十一年度までの五年間に推進すべき保育対策などについて、低年齢児(〇〜二歳児)保育六十万人、延長保育七千カ所、一時保育三千カ所などの具体的な目標が定められているところであり、各地方公共団体においても早急に保育体制の整備を進めていただいているところである。

少子化の影響への対応

 少子化の影響への対応としては、勤労意欲を持つあらゆる者が就業できる雇用環境の整備、企業の活力・競争力、個人の活力の維持、公平かつ安定的な社会保障制度の確立を図り、少子化の経済面の影響を極力排除していく必要があろう。
 一方、社会面の影響への対応としては、地方行政体制の整備と教育内容の改善が必要である。住民に対する基礎的なサービスの提供水準を維持する観点から、市町村合併や広域行政の推進を図るなど、地方が責任を持って円滑に住民サービスを提供するという観点に立って、地方行政体制の整備を行っていくとともに、基本的にほとんどの地域で人口が減少する中で、いかに地域を活性化させるかという観点からも、住民の多様な要請に応え、住民自身の積極的な参加を得ながら質の高い自立的な地域社会を形成していくため、地域連携の推進など既存の行政単位の枠をこえた広域的な対応が求められる。また、学校教育において、独創性のある人材の育成に努めるとともに、子供の豊かな体験の場や機会を提供することで、子供の社会性を養う仕組みづくりを進める必要がある。
 少子化対策というのは、少なくとも四半世紀先を見越した対応が求められるわけである。日々目まぐるしく変化していく現代社会において、さまざまな行政ニーズへ迅速かつ適切に対応することももちろん重要であるが、近視眼的な課題にあまりとらわれすぎず、遠く将来を見据えて着実に対策を進めていく必要があり、各地方公共団体における職員一人ひとりの積極的な取り組みが期待されるところである。




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