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花は人の足音を聞いて育つ

(財)地域総合整備財団(ふるさと財団)理事長

津田 正


 最近市民農園を借りて、花、野菜づくりを楽しんでいるが、園芸の格言のひとつである標題の言葉が好きだ。「足跡が肥やし」というのもある。畑に足しげく通い、その様子を自分の目で見、植木、土などの小さな変化でも見逃さず、こまめに手入れする、その回数が多いほど植物はよく育つという趣旨であろう。
 地域の振興、活性化も同様だと思う。先進事例を学び、有識者のアドバイスを受けることは独断的にならず、観点を広げるうえで大切なことだが、それにとらわれず、地域の現場を良く見、そのニーズをとらえ、現場に即して対応することが最重要と思う。情報化時代、氾濫(はんらん)している情報の中から真の価値あるものを見つけることはやさしいことではないが、現場の生の情報の価値が最高級なことは疑いがない。明確な問題意識、豊富な経験の裏づけによる感受能力が前提だが、とにかくよく現場を数多くたずね、その声を聞き、現場で話すことである。
 地域の実情に詳しい人が、地域の自然環境、歴史、伝統、文化、産業、技術、そして地域の人材の性格、生活様式など地域の実態を丹念に把握し、そのニーズを的確にとらえ、地域の反応をフィードバックしながら、地域の潜在能力を最大限に生かしてこそ実効ある地域づくりが進む。地域の発想にもとづいた個性を生かした地域づくりこそが永続性を持ち、その地域ならではのアイデンティティを自からそなえることが、価値観の多様化、創造性が重視される現在の多くの人の共感を得、評価されよう。
 人びとに愛される地方の名物料理は、必ず「風味」「風土」「風景」を持っているそうである。お客の嗜好(しこう)に迎合するのではない。まず地元の住民に評価され、愛着を持たれ、誇りとなっていることが不可欠で、それなくして本物の地域名産として他地域の人びとに評価されない。一番身近な人びとの口コミこそ、最初で最高の情報発信である。住んでいる人びとが楽しんでいなければ、よそから来た人は面白くないし、リピーターにならない。
 また園芸の楽しさは、きれいに咲いた花を見たり、収穫することだけでなく、しげしげと通い、植物のご機嫌をうかがい、事細かに手入れする時間にもある。手間や工夫が生きがいになるのである。地域づくりにおいても、自らの工夫、努力を通じて、自己の抱く理念や信念を追求し、実現を図ることの中に自己の存在感を確かめ、生きがい、心の豊かさを得る。その自信、誇りをバネにしてさらなる地域の花を咲かせる。地域に住む多くの人びとが多くの苦労を伴う実践プロセスそれ自体を楽しみとし、誇り、生きがいを持つことが、真の地域活性化であろう。地域を知らなければ、地域を生かすことはできない。




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