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山梨県芦川村
新たな局面を迎えた過疎問題
「住」がネック

芦川村企画室主査

野沢今朝幸

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 千九百六十一人が六百五十一人に。この四十年の間に芦川村の人口は、三分の一に激減し、高齢化率は四三%に達した。人口の半分が六十五歳以上となっている。
 村から人が出て行くばかりで、外から入ってくる人は全くといってよいほどなかった結果である。入ってこようとする人さえいなかったというのが現実であった。仮にこのような状況がいまも続いているとしたら、正直なところ過疎問題に対する対策は打ちようがないといえよう。
 しかし、本村に限っていえば、この数年前から都市生活者が転入してきており、それは増える傾向にあり、状況は大きく変わりつつある。ここ数年で本村に転入してきた家族は十家族、三十一人に上っている。

過疎化は受け入れ側の問題

 本村では平成七〜八年に、田舎志向の都市生活者に対して、空き家を借りて「田舎暮らし体験事業」を実施した。そのときの反応は、「体験」ではなく「定住」はできないかという問い合わせが圧倒的に多かった。その後、村で、二、三の空き家を借りることができたので、定住用にその空き家を斡旋したところ、そのことをどうして知ったか、ほんのこの二年間で百件近い問い合わせがきている。
 だから、もし仮に「住もうという人がいないからうちの村は過疎化が止まらない」と村民の誰かがいったとしたら、その認識は正しくない。それは正確にいうならば、「住もうという人を受け入れることが十分にできていないから、過疎化が止まらない」というべきである。
 国土庁地方振興課監修の平成八年度版『過疎対策の現況』によると、都市生活者のうち九・三%の人が、「いますぐにでも農山村に移住したい」としている。過疎の地域で移住を最も欲している三十歳代を例にとってみると、この全体の平均よりさらに高く、一〇・二%の者がこのような意向を示している。この数値は大方の予想をはるかに上回る数値であろう。さらに、「将来は移住を考える」という意向をもっている人の数値を加えると、三十歳代のほぼ四割の人が田舎志向をもっていることが分かった。
 このようなデータからも、「住もうという人がいないから過疎化は止まらない」といういい方は、ほとんどの過疎地域では当てはまらないだろう。むしろ、このようにいうことによって新しい情況を見落とすことになっているのではなかろうか。

Iターンへ施策を転換

 Iターンが全く期待できなかった数年前までは、本村ではUターン促進のために、村出身者を対象にした「ふるさと懇談会」などの施策に力を入れてきたが、いまではIターン促進のための施策へと大きく転回しつつある。それは、Uターン促進施策がなかなか実効が上がらなかったというだけでなく、都市生活者の田舎志向の急増ということを背景としている。
 平成七年度に実施した「空き家の持ち主に対するアンケート調査」、また昨年度から実施している「親子山村留学事業」は、Iターン促進にかかわる施策である。
 先に「住もうという人を受け入れることが十分にできないから過疎化が止まらない」と述べたが、この「親子山村留学事業」を例にとってみると、この事業を利用して本村に移住してきた家族は二家族七人しかいない。田舎志向者の増加により本村の状況は好転しているにもかかわらず、これだけの実績しか上がらなかった原因は「住むところを用意できなかった」ことによる。
 柳田国男の指示による民俗学の研究が、その揺籃時代に実施されたように、本村は日本の典型的な自然村である。
 そういう意味で集落形態も典型的な山村の面持ちを呈している。そういう地域においてはどこも同じであると思うが、転入者にとって住むところを確保することに伴う困難は計りしれない。
 本村には民間のアパートはなく、村営住宅も四戸しかない。また、分譲で売ってくれるような宅地もなければ住宅もない。住むところに関しては無い無い尽くしというところである。

田舎志向をもつ者の盲点

 仕事を通しての私の経験からいうと、都市生活者の中にはいつでもそのつもりになれば、田舎に住むことができると安易に考えている人が多い。住むところがネックとなるということに考えの及ばない人が意外に多いのである。なるほど。田舎には家の建っていない、田畑、林野など広大な空間が広がる。そして明日にでも住み込めるような立派な空き家も数多く存在する。本村の場合をみても、一部は廃屋もあるが民家の約八分の一は空き家となっており、その数は五十戸ほどにのぼっている。
 だが、都市生活者ではまず農地を買って家を建てようとするが、現行の農地法などの法制度の下では、普通は家は建てられない。また林野にしても、自然村のようなところは谷あいに形成されており、地形上、家を建てるのは難しい。また空き家であるが、盆正月あるいは彼岸に帰省するため─それは「墳墓の地」という強い意識が働いている─めったなことでは貸してもくれないし、ましてや売ってくれるようなことはない。
 だから逆にいうと、本村も含めた多くの過疎地域においては、転入者─ほとんどがIターン者であるが─の住むところの確保を行政がいかに図るかということが極めて重要なことになってきているといえよう。
 本村では、本年度より村の負担による「空き家改修事業」を始めているが、この事業は転入してくる都市生活者への即効的な住宅対策である。また、すでに二十戸ほどの村営住宅の建設計画も進んでいる。
 本村のような過疎地にあっては、「住」の整備こそ最も緊要な課題となっている。

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