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32 新潟県頚城村

「かぼちゃの馬車」グループ代表・村松智恵美さん
子供からお年寄りまで
絵本を通じての地域づくり

素人だけの絵本づくり

 新潟県中頚城(なかくびき)郡頚城村では、絵本を通じて地域づくりが行われている。グループの名前は「かぼちゃの馬車」、代表は村松智恵美さん。世話役として役場の男性職員が加わっているほかは、メンバーはすべて女性である。シンデレラのようにかぼちゃを馬車に変えたい、自分たちの夢を実現したい、このような願いがこめられている。
 会の発足は平成五年。「ふるさと創生事業講演会」での、日本ふるさと塾を主宰している萩原茂裕氏の講演「ふるさとを見つめよう」に触発されたのが直接のきっかけである。
「村の自然景観のシンボル“大池”のよさをいろいろな人に伝え、残したい。絵本であれば、子供からお年寄りまで読み、語り聞かせることができる」。この発想から絵本づくりがスタートした。
 グループは世話役も含め十三人。みんな頚城村、大池を愛するメンバーだ。結婚、出産、転居など、いろいろなことがあったが、発足時のメンバーのほとんどが現在も活動している。ふるさとを思う気持ちに変わりはないからだ、という。
 活動内容は、絵本を作り販売するのに必要なことすべて。活動方法は、自主性を重んじており、それぞれの考えで何をしてもよい。参加者もこの活動に関心があればよく、会費もその都度必要に応じて徴収し、会の運営は極めてオープンになっている。
 技術事務員、塾の講師、土木作業員など、全員が勤めを持っているのもグループの特徴である。
「美術の先生どころか、保母さん、幼稚園の先生もいないんですよ。絵本というと、こういう人たちが必ずいるのですけどね」と、村松さんは笑って話す。全員が素人、悪戦苦闘の日々であるという。

構想、シナリオづくりは体験から

 絵本づくりを大きく分けると、構想づくり、シナリオづくり、絵づくりになる。
 構想づくりでは、「大池」をめぐるすべてが材料になるという。夜の大池をテーマにしたいといえば、夜にメンバーが大池に集まる。冬の大池もいいのよねといえば、冬に…。こうして、実際に出かけて構想のイメージを広げる。
 昨年の春には、動物学者の野紫木(やしき)洋先生を迎えての「大池の探索」も行った。参加者を募集したところ、子供からメンバーの配偶者まで五十人が集まった。ここでは、大池で見たこと、気がついたことなどをメモや絵にしてもらう。「何十回と行っているのに新しい発見がある。子供たちは私たちが忘れたものを持っている」という。
 次に、こうした大池で感じたイメージをシナリオにしていく。想像力が勝負である。第一作の大池でのうさぎの「かくれんぼ」では、太陽とうさぎがかくれんぼをしていたが、夕方になり太陽が沈んでしまった。相手のいなくなったうさぎは、涙をながして寂しがった。その涙がたまって大池になった。夕方の大池のイメージである。

悪戦苦闘の描画

 最後にこのシナリオを場面ごとにカットし、絵を描き始める。メンバーの全員が絵の経験がなく、これが一番大変であるという。
 実際に絵を描こうとして、当初の自分たちの考えの甘さを知ったという。全く絵が描けないのである。そこで、中学校の美術の先生の手ほどきを受けることになった。ここで技術的なことももちろんであるが、一番の収穫は、「絵に上手とか、下手とかはない。いかに伝えたいものを伝えるかだ」との教えである。いままで自分たちはうまく描こう、うまく描こうとばかり考えていた。自分たちの目的は、大池のすばらしさを伝えることなんだ。先生の一言で、肩の力が抜けた。
 また、児童文学書の挿し絵を多く手がけている上越市の画家、村山陽先生からは、挿し絵で大切なこと、絵本づくりとは何かを学んだ。先生自身の大池でのスケッチ、そこで生活している者にしか伝えられないものを伝えることが重要であるとの先生の教え。いまでも活動の基本になっている。
 完成までの作業はメンバー全員が行う。構想の相談は夜、仕事が終わってからでもできるが、絵を描くことは、集中してできる土、日曜日がメーンとなる。「時間はつくるものとはいえ、みなさん勤めているし…。家庭もあるし」。活動時間の確保が大きな課題である。

絵本は未完成であるが

 こうして完成した作品は、現在四作であるが、実際には、絵本の形になっていない。理由は、費用の不足と納得できる作品となっていないからである。しかし、大池のすばらしさを伝えることはできた。原画を使用しての紙芝居やスライドにしての上映会である。村のコミュニティ施設を利用して、何回も上映している。「親子で来て、楽しんで、少しでも頚城村、大池のよさをわかってくれたら」という。
 絵本づくりは、ほかにも成果があった。みんなで構想を練るとき、大池のこと、村のこと、どうしたら暮らしやすい村になるかなど、地域づくりが話し合われるのである。絵本づくりは、若い女性が、村の将来のことを話し合える貴重な場ともなっているのである。
「かぼちゃの馬車」は、ホームページも開設している。自分たちの活動や村のすばらしさを伝えるためであるが、目的はほかにもある。よりよい作品にするための情報がほしいのである。他の絵本づくりのグループと交流し、よりよい作品とし、活動に広がりができたらという。
http://www.avisnet.or.jp/katarina/ アクセスをお待ちしているとのことです。




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