21世紀の地域づくりへの提言
自信をもって分権型社会へ
創意と工夫活かそう
地域活性化研究所代表
川島正英
二十一世紀の社会を表すキーワードとして「地方分権」をあげたい。「インターネット」もそのひとつだろうが、ともに縦から横型への文化を象徴する。相互に横へ広げて情報を受発信し、交流し、連携する。しかも個性をもち、自己責任を貫く。
地方分権は、政治・行政の手段とか手法だともいわれるが、同時に、社会・文化を横に変革していく使命を負い、政治・行政の目標、また目的といってもいい。
地方分権推進委員会が、七月八日に第二次勧告を答申、分権型社会は活性化への軌道に乗った。地域づくりも質的転換を遂げるとき。地方政治・行政の中で受ける影響は明示的だ。雑音が聞こえ、現実に障害も少なくないが、自信をもって頑張りたい。
からむし姫とイヌワシ番
分権型社会へ頑張る自治体とは―。まず福島県昭和村をとりあげてみる。会津の一角にあって、人口は二千に満たない。からむし織布と天然記念物イヌワシで知られる。
わが国最古で、麻を超える品質といわれるからむし織。村の古老たちが辛うじて支える文化遺産だ。そのお年寄りも数えるばかりになった。危機感が“織姫”募集のアイデアを生む。三十五歳までの女性に、毎月五万円の奨励費と民泊、研修材の費用を支給して栽培から織機の扱いまで一年間しつける。
平成六年から毎年五〜十人を募集したが、全国から殺到する。大都市のOLや大学卒業生…。厳しい合宿生活である。村の男女から農作業を学び、自給自足である。村の行事にも加わり、文化にまるごと浸る。
だから楽しい。研修が終わってもほとんどが村を離れない。村の青年と結婚するものも現れた。しわだらけの表情が輝やく。
イヌワシの番人は、福島中央テレビが制作して六月に放映したドキュメント「追われる森の王者―イヌワシ保護をめぐって」にも描かれている。こちらは昭和村でカスミソウを栽培するグループ・四十人の会が主人公だ。ダム、発電所、スキー場などの開発で急速に亡びつつある空の天然記念物を守る。
仕事の合間の生態調査。奥深い山に散って広範囲に駆け抜けるイヌワシの記録をとる。県当局や環境庁に資料を提供したり、開発の中止を要請したり。近県四町村のグループとも提携しての、ボランティア活動である。
「勧告」は市町村を主役に
昭和村は、分権推進委勧告の地域づくりの在り方について、二つの面を象徴していると思える。ひとつは勧告が都市計画の決定で「市町村が中心的主体となるべき」だとはっきりさせたことにかかわる。昭和村が積極的な取り組みをみせている意義は大きい。
分権型社会への質的な変革は、福祉、教育などすべての行政分野にやってくるが、住民にとって見えやすいのは、この地域づくりの分野であろう。とくに第二次勧告は、道路、公園、市街地再開発事業などの計画決定で市町村長の権限をひろげたほか、都市計画での市町村審議会の権限も強めるなどの具体化を図ったのである。
都市政策・都市計画の分野では、建設省が都市計画中央審議会に諮問して分権の視点から徹底して見直し、体系的に検討、現行の法制も改めていくという。運用の面でも、後見的な規制とか関与を排除していくとの姿勢を明らかにした。
画一的でない、個性味をもった地域づくりの実験を昭和村で見た。ここではふるさとの文化遺産を消滅寸前に再発見、それを核に地域を活性化させ始めたのだ。村の主体性はよみがえった。息づきだした。
頑張る自治体にとって、分権推進委の勧告の方向は、わが意を得たり、ということだろう。いや、むしろ「具体化が可能な」ところへ力点を置いて、権限委譲が抑制的になっている部分への不満が聞かれるかもしれない。
新世紀は公私協働で
昭和村が地域づくりの在り方に示唆的な二つ目は、住民の政治・行政への参加である。住民と行政の関係は、対話から参加への時代を経て、いま参加から「協働」の段階へと移った。計画などに自らの意見を反映するとか、逆に反対の立場を明らかにするとか、そこから一歩進むわけだ。
阪神・淡路大震災、重油流出事件などで見られたボランティア活動。国から都道府県−市町村へと縦の後見的役割が断ち切られるのだから住民が支えねばならない場面が増える。地域づくりの分野でいっそう重い。
分権委勧告は、住民ボランティアやNPO活動の大切さを、“公私協働”という言葉を使って強調した。昭和村の古老たち、イヌワシ番の若ものたちの表情を想起したい。
“官々分権”を突き抜けよう
分権推進委が勧告し、政府が法制化の軌道に乗せる分権−、地方自治五十年にしての高潮と思えるが、市町村の中には「おカネがどれだけ伴ってくるのか」と。また住民の多くも「どんなにいい暮らしとなるのか見えてこない」と。ひっくるめて、“官々分権”と評したり、市町村や住民が関心がもてないたぐいの問題だとの見方も少なくない。
だが、これが分権だ、と肩ひじ張って宣言しなくとも、住民のニーズにこたえ、日常的に個性豊かな行政をこなすことが、分権の道を示唆していることは実例で見た。
しかも昭和村に限らない。地域づくりでは地方が中央に先がけた例は枚挙にいとまがない。北海道池田町、神奈川県真鶴町、京都府園部町、兵庫県五色町、宮崎県綾町…。
地域活性化へと自らの創意と工夫を活かし、エネルギーと情熱をもって頑張る。そこに、官々分権がどうあれ、自ら選択し、自ら決定する分権の精神が見える。自信をこそ──。
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