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21世紀の地域づくりへの提言
地域づくりは、永遠の課題
物質文明の価値観反省を

群馬県上野村長

黒澤丈夫

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幸福度高めるものに

 地域づくりという言葉をしばしば目にするが、地域づくりとは、何を目標に成すべきものかが明白でないように、私は思える。
 そんな中で、漠然と多くの人がある地域の経済活動を盛んにして、人が多く集まるような地域とすることが、地域づくりだと考えているようだが、果たしてそれが地域づくりであろうか。
 私は考え方を異にする。
 地域づくりと、言挙げていうからには、そこの天地自然や人びとの生き方などに、心を引かれて居住する人たちが、同じ地域に居住する他の人びとと協力し合って、ひとつの社会を構成し、互いに助け助けられつつ、より一層安全で、平和で、健康的で、便利で、豊かで、文化的な目標に向かって、幸福度を高めようとする連帯感の強いものであらねばなるまい。
 それが、永遠に無限に発展しようとする、生命が誕生以来希求する本能に応え、人類だけが持つ知性の教えによって未開のころの先輩から受け継いできた、人間同士の協力によって有利に生きようとする人類の知恵の求めるところであろう。
 こう考えると、地域づくりという言葉の持つ狙いは高遠で、そこに居住する人たちの生き方に関する重大な事柄と思うべきであろう。
 私は、地域づくりとは、そこに居住する人それぞれの幸福感をいかにして、どこまで高めるかの問題で、人類永遠の課題ではあるまいかと考える。

生きがい感じる社会目指せ

 この幸福感がまた問題で、人間それぞれが異にする幸福感まで問題視していたら、地域づくりの目標を定めること自体が困難であろうが、私は少なくとも多くの居住者が、そこで生活することに満足感を持ち、希望や生きがいを感じる地域社会を構築することを目指すべきであろうと思うのである。
 このように述べると、多くの読者は、いままでの政治も行政も、みなお前のいう方向を求めて努力しているではないか、と思われるであろう。
 だが、真にそうであったであろうか。
 私は、十九世紀、二十世紀の人類は、あまりにも物質文明に心を奪われて、心や自然などの存在を等閑にして、人体の五感に心地よく感じるものに幸福を求め過ぎてはおるまいか、と思うのである。
 幸不幸は、人体が決するのではなくて、心が決する事柄だ。それを、お互いがあまりにも迂闊に生きているから、気が付かない。
 だから、努力して経済力を向上させても、真の幸福感がわいてこない。昔に比べれば、至れり尽くせりの福祉政策にも不平の声が多く、社会では凶悪な犯罪が多発している。
 われわれはいまこそ猛反省して、新しい時代に対処すべきではあるまいか。
 そこで、私には二つの提言がある。
一、精神文明の振興を図れ
 前述のように、人類は物質文明に心を奪われ、心そのものの働きをほとんど意に介さない。試みに、人間の本体は、その存在が認知できる肉体であろうか、それともものごとを考え判断し、実行などを命じる心であろうか。
 だれにも、いずれが本体とはいいきれまい。
 しかるに多くの場合、心の存在を忘れて、肉体だけに対処している。
 医術が最も良い例だ。
 病いに侵された肉体に対処する技術は進歩したが、心の存在を忘れた治療が少なくない。
 実例の教えるところによれば、心の持ち方を変えることによって回復した実例も幾多存在するのだが…。
 また、福祉における高齢者対策にも、心を忘れたものが少なくない。
 六十五歳以上を一律に高齢者と決め付けて、それより高齢の者は、社会に役立てる側の人間ではなく、社会が面倒をみてやる側に区別するような区分は、あまりにも人間の心を忘れ、生きがいを奪うことになっている。
 元気な高齢者は七十歳を超えても、老人クラブ入会を拒否して社会の現役として活躍している例もあるのである。
 私の村では人生最後の瞬間まで社会の現役であってほしいと念じつつ、すでに三十年間成人病対策などを普及し、予防に努めてきた結果、高齢率は三六%強だが、要介護者は厚生省の調査平均の半数強しかいない。
 みなが心を若くして、積極的に生きている結果と心得るが、ここにも心の文明を忘れた弊害をのぞき見ることができる。
二、自然との結び付きをおう盛に
 人間は大地の上に足を着けて、多くの動植物と共に生きる動物で、決してアスファルトとコンクリートとガラスの中の生きものではない。高度に発達した物質文明のコンクリートジャングルの中で、土や動植物と完全に隔離された生活は、決して真に幸福な生活ではなく、人間性を狂わせはしまいかと心配する。
 現に、わが村に夏休みに来る少年少女を見ると、自然に飢えているとの感を覚える。
 これでは片寄った情操しか育つまいと憂えるが、今後の地域づくりは、土や動植物との接触を密にしたり、西欧人のごとく長いバカンスを自然の中で過ごす風習を盛んにするとか、全寮制の学校を農山漁村に立地させて、青少年期から自然に親しませるような積極的配慮が必要であろう。
 以上いささか考えるところを記してきたが、これからの地域づくりで最も重要なことは、物質文明一点張りの価値観を反省して取り組むことではなかろうか。

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