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21世紀の地域づくりへの提言
経済から環境の世紀へ
情報化もより一層進展

帝京大学教授

伊藤善市

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豊かさからの挑戦

 二十一世紀の到来が秒読みの段階に入った。二十一世紀に入ったら、これを節目に内外の環境が大きく変わり、それに対応して人間の価値観も地域づくりの考え方もすっかり変わってしまうだろうか。
 答えは明らかに否である。二十世紀と二十一世紀は間違いなく連続する。かりに二十一世紀を迎えたら大きく変わるようなことは、すでにその兆しが現在でているはずであり、現在経験しつつある変化の兆しにこそ、われわれは注目しなければならないのである。
 すでに、戦後五十年が過ぎ、戦争を知らない世代が大多数となった。欧米の先進諸国に追いつくという、明治開国以来の長期国家目標は、日本の近代化であり、西欧化であったが、この国家目標をほぼ達成し、いまや日本は豊かな社会に成熟しつつある。
 この間、都市は効率性や機能性を重視した生活の場として整備されてきた。しかし、都市にはものの豊かさよりも、心の豊かさや自然との触れ合いを求める声が強まってきた。
 われわれは貧困に対する挑戦に成功するや否や、今度は豊かさや開発のもたらしたプラス・マイナスの成果から逆に挑戦を受けているのである。この挑戦を素直に受け止めて応戦しない限り、国民の不満は高まるであろう。

地域格差は個性差

 国民の不満を吟味してみると、その原因の一端は中央集権型の行政システムによる全国一律型の画一化と過度の公平性重視のため、個人や地域の多様性を軽視していることに求めることができる。たしかに、地域格差は縮まったが、機械的な画一化と平等化による不満に注目する必要がある。
 この点について地方分権推進委員会の報告書は「ナショナル・ミニマムを超える行政サービスは、地域住民のニーズを反映した地域住民の自主的な選択に委ねるべきであり、その結果として地域差が生ずるとしても、それは解消されるべき地域間格差ではなく、尊厳なる個性差と認識すべきである」と述べているが、同感である。
 未来学者として有名だったハーマン・カーンは「経済発展のエンジンとして、おそらく格差ほど大きな役目を果たしたものはなかった」と指摘し、「人は結局、自力で活路を切り拓く以外に道はない」のだから「格差についての考え方を改め、格差を成長の促進要因とみるべきだ」といったことが思い出される。
 地域は、人間がそこに住み、学び、働き、遊び、交わる生活の場である。したがって、住みやすい環境を整備すると同時に、人びとが誇りと愛着をもつ、魅力のあるまちづくりを実現しなければならない。

地域から行動を

 二十一世紀の地域づくりを進めるに当たって重視すべきことは、地球環境問題に対する積極的対応である。環境問題は工業化と都市化に随伴して発生したものだが、成長の質を犠牲にして成長の量を重視し、環境汚染の社会的コストを十分計算に入れなかったこと、環境に対する影響を考慮せずに、生活の便利さを優先したことなどが反省されなければならない。
 このような状況のなかで、一九九二年、ブラジルのリオで開かれた「国連環境開発会議」(地球サミット)では、「持続可能な開発」という概念が、全地球的課題として提起され、合意された。
 持続可能な開発とは「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求を満足させるような開発」であり、「持続可能な開発は生態系を破壊することなく、かつすべての人びとにとって妥当な消費水準を目指した価値観をつくり上げて初めて可能となる」ものである。
 つまり、それは現在世代と将来世代との共存、人間と自然との共生、環境保全と開発推進との両立という困難な課題を含むものである。
 いずれにしても、最終的には、生態的環境が産業活動から発生する熱をどこまで許容できるかによって、経済成長の限界が決まることになる。とすれば、工業生産の拡大志向には注意深い抑制が、浪費的消費には質素な消費態度が要請されるであろう。
「経済の世紀から環境の世紀」への移行を意味のあるものにするには、「地球的規模で考え、地域から行動しよう」ということが合意されなければならないのである。

人を分散させる情報化

 二十一世紀においては情報化がいっそう進展し、それに伴って地域づくりも大きく変ぼうすることが予想される。情報化社会は、われわれの選択の自由度が大幅に拡大する社会であるが、日本列島のように情報密度の高い社会では、それだけに情報を高速で移動させうる交通・通信のネットワークを張りめぐらすことが容易となり、職場、家庭、地域、生活意識の各面に大きなインパクトを与えるであろう。
 産業革命による工業化の進展は、膨大な人口を大都市に集中させ、遠方から資源を運び、遠くの商品を流通させる必要から、人間の流動性を生み出した。しかしながら情報化が進めば、人間を集中させず、むしろ分散させることにより、われわれの空間認識を変えるようになる。
 アルビン・トフラーによれば、産業革命の時代には社会、政治、経済の発展には、道路整備が先決条件であったが、今日ではエレクトロニクス通信システムがそれにとって代わりつつあると強調する。
 たしかに、建設コストの高い道路を張りめぐらすよりは、発達した通信網を整備するほうが、長い目でみれば賢明なやり方であろう。かりに通信が通勤に取って代わるようになれば、多くの人間を通勤から解放し、血の通ったコミュニティが復活するようになるかもしれない。

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