地域づくりのための民間非営利活動に対する
地方公共団体のかかわりの在り方に関する
研究会報告
自治大臣官房地域政策室
はじめに
地域においては、従来自治会、青年団などによってさまざまな地域活動が行われているが、近年、とくに地域住民が主体となった民間非営利団体による地域づくり活動が活発化してきており、これらの活動が、地域の活性化に大きな役割を果たしているところである。
このような現状を踏まえ、自治省においては民間非営利活動に対し、地方公共団体はいかにかかわりをもつべきかを検討するため、平成六年度から「地域づくりのための民間非営利活動に対する地方公共団体のかかわりの在り方に関する研究会」を設置し、研究を行ってきたところである。
八年度にはこれまでの議論を踏まえ、中間報告を公表した。中間報告においては、民間非営利団体の概念および意義と役割を整理するとともに、民間非営利団体の活動の現状と、それに対する地方公共団体の支援の現状を検証し、民間非営利団体に対する地方公共団体のかかわりの在り方を概念的に示したところである。
その後、当研究会においては、大阪府、長野県、群馬県で現地研究会を開催し、地方公共団体の担当者および民間非営利団体関係者との意見交換を行うとともに、地方公共団体の協力を得て「地方公共団体と民間非営利団体のかかわりの現状に関する調査」を実施し、民間非営利団体と地方公共団体のかかわりの在り方について、より具体的な方策を検討してきたところである。
今般、前記の取り組みを踏まえ、研究会報告がまとめられたので、その概要を紹介することとしたい。
研究会報告概要
1:序説
わが国を取り巻く環境の変化の中で、社会を支える力として民間非営利団体の役割が高まっていることを踏まえ、民間非営利団体に対する地方公共団体のかかわりの在り方を検討するため、自治省は六年度に本研究会を設置した。昨年度には中間報告を取りまとめ、その後、現地研究会、アンケート調査などを行った。本報告書は、以上のような取り組みを経て、中間報告において積み残した課題を中心に、より具体的な施策を提示するための議論を行った結果をまとめたものである。
2:民間非営利団体と地方公共団体等との関係
1 パートナーシップ論
民間非営利団体は、自主性、自立性を基礎に柔軟、迅速で独創的な活動を行うことを長所のひとつとするものであり、それを生かすため、行政とは従属的、依存的でない関係を確立、維持することが重要である。一定の目的意識を共有しうる状況における、行政と民間非営利団体との関係としては、「相互の特性の認識・尊重」を基礎として、「対等関係」のもとで、「協調・協働」していくこと、つまり両者が互いに対等の当事者として認め合う「パートナーシップ」関係を構築していくことが必要である。
2 都道府県および市町村の役割
都道府県・市町村の役割などの基本的な方向は次のように整理できる。
民間非営利団体の活動範囲に着目すれば、広域的団体は都道府県、地域的団体は市町村を中心に、それぞれパートナーシップを形成していくべきである。民間非営利団体に関する施策の形態などに着目すれば、広域的な連絡調整などに関して、都道府県が中心的な役割を果たしていくことが考えられる。
都道府県・市町村・民間非営利団体が相互に密接な協働・協調関係のもとでそれぞれの活動を展開し、地域社会の発展に寄与していくことが重要である。
3 既存のコミュニティ団体との関係
地域社会の問題への対応は、従来、地縁的つながりを基礎とする「コミュニティ団体」が中心的な役割を果たしてきたが、近年その活動が必ずしも十分でない状況のもと、民間非営利団体の活動を通じコミュニティ団体の役割を補完していくことが重要である。新たな時代の地域社会の在り方としては、コミュニティ団体に加え、多様な民間非営利団体が相互にネットワーク化された多重的構造がイメージされる。民間非営利団体とコミュニティ団体は、共に市民の自主的組織団体として、地域の問題解決に向けて連携・協力し合う関係を築くことが望ましい。
4 社会福祉協議会との関係
社会福祉協議会に対しては、民間非営利活動のコーディネート的な役割を期待する地方公共団体が多い。他方、社会福祉協議会の活動が行政依存的な面が強すぎることに懸念を示す意見も、見受けられる。
社会福祉協議会は、現に福祉などの分野において、地域の民間非営利団体間の連絡調整役として重要な役割を果たしており、今後も地域社会の福利厚生の見地から、行政、社会福祉協議会および民間非営利団体の間の適切な関係を構築・維持していくことが必要である。
5 行政施策への民間非営利団体の参加、民間非営利団体への行政の参加
地方公共団体と民間非営利団体との緊密な連携関係の構築のためには、行政施策への民間非営利団体の参加、民間非営利団体への行政の参加という双方向の協働・協力関係を模索していくことが重要である。
3:民間非営利団体の活動環境の整備のための施策
1 民間非営利活動サポートセンター・ボランティアセンターの整備
民間非営利団体の支援には、民間非営利活動サポートセンターやボランティアセンターなどの活動拠点となる施設の整備が重要である。とくに、団体間の交流促進などの観点からは、幅広い活動分野、地域に対応可能な総合的な民間非営利活動サポートセンターなどの整備が重要である。民間非営利活動サポートセンターなどに求められる機能としては、各団体の活動拠点としての機能のほか、情報提供機能、コーディネート機能、コンサルテーション機能など、多様な機能を兼ね備えていることが望ましい。
2 民間非営利活動の啓発
民間非営利活動に対する社会的認識の不十分さにより、社会的支援の不足、参加者確保の困難性、参加者の意欲の漸減など、民間非営利団体の発展の支障となる事態が想定される。民間非営利活動に対する社会的認知度を高めるためには、民間非営利団体自身による広報活動に加えて、行政も啓発施策を講じていくことが望まれる。また、民間非営利活動の参加者などに対する表彰・顕彰制度も活動参加者の意欲を高めるなどの効果が期待できる。
3 情報提供
民間非営利活動に関する情報流通の不十分さゆえに、民間非営利活動に関する「需要」と「供給」が十分に充たされない状況が生じており、これに対処するため、団体と市民の間の情報流通の円滑化が必要である。広報誌、新聞などを通じた各団体の活動内容などの紹介のほか、民間非営利活動に関する情報のデータベース化なども検討されるべきである。
また、民間非営利団体と行政との良好なパートナーシップ関係の構築のため、民間非営利団体と行政との情報交換・交流の緊密化を図ることも重要である。
4 人材の確保・育成の支援
民間非営利団体は市民の力によって支えられており、人材の確保・育成は非常に重要である。人材の確保については、情報提供、啓発施策などにより、人びとの参加意欲を醸成していくことが考えられる。リーダーなどの育成については、各団体自らが行うことが基本であるが、行政が行うにしても、団体の自主性を損なわないよう実施方法について十分な配慮が必要である。また、一般の参加者の育成については、基本的には各団体が自主的に行うことが適切である。
4:民間非営利団体の財政基盤充実のための施策
1 資金助成について
地方公共団体による資金助成は、団体の求めに応じ、活動をできる限り制約せず、団体の自立性を損なわないように行うことが望ましい。このため、団体の活動内容を制限せず、一般的、汎用的な助成制度を設定するとともに、基金や公社あるいは民間非営利団体のコーディネート団体などの第三者的な機関を通じた支援の方法が検討されることが望ましい。その際、支援の公正性、透明性に配慮することが不可欠であるとともに、団体の行政に対する依存の度合いが強まらないよう、適宜工夫する必要がある。
2 業務の委託について
行政が事業の委託を行うことは、民間非営利団体の活動を支援することになるとともに、住民へのサービスの向上につながることも期待されることから、大変重要な意味を持っている。
民間非営利団体に業務を委託する場合は、民間非営利団体の活動状況を把握しながら、事業の実施内容を民間非営利団体と共同で立案していくなど、パートナーシップの考えを念頭において対応を行うことが重要である。
3 物的支援について
民間非営利団体が活発な活動を行っていくためには、活動拠点などの確保が不可欠であり、財政的支援と併せて、活動に必要な器具の貸与や公共施設の提供など物的支援が重要な意味を有する。
地方公共団体においては、特定の団体への便宜供与とならないよう注意を払いながら、団体の活動拠点となる公共施設の利用への配慮や必要な器具、備品の購入、配備をすすめることが期待される。
5:民間非営利団体に関する施策推進のための地方公共団体の環境整備
1 民間非営利団体に関する窓口の設置
民間非営利活動に対する包括的な支援策の検討、実施を図る必要が生じてきており、民間非営利団体に対する総合窓口の設置が望まれる。
総合窓口に求められる業務内容としては、行政における第一次的な窓口として行政情報の提供、行政と民間非営利団体とのパイプ役としての機能のほかに、庁内において、包括的に民間非営利団体に関する施策を把握するとともに、当該地方公共団体において、民間非営利団体に関する施策の在り方、方向などを企画、立案する役割が期待される。
2 民間非営利活動に関する施策の基本方針
地方公共団体が、民間非営利活動に対する施策に関する基本的な考え方や施策の概要、今後の施策の展開方針などをうたった「基本方針」を策定することは、民間非営利団体や住民と共同して地域社会づくりに取り組む姿勢を示す意味で大きな意味があり、未策定地方公共団体においては、策定に向けた積極的な検討が望まれる。
基本方針策定の際には、施策の対象となる団体の意見を十分反映するためのプロセスを経るなどの配慮が必要である。
おわりに
本報告書においては、中間報告での議論を踏まえ、その後の議論の経過を受けて、地方公共団体と民間非営利団体のかかわりの在り方について、具体的な方策の検討を行った。
地方分権の流れの中で、地方における行政サービスの多様化に対応するためには、民間非営利団体と行政のかかわりの在り方が大変重要となってくるものと考えられる。今後、地方公共団体において、この点に関する検討が一層進められ、さまざまな具体的施策が実施されていくことを期待したい。
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