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奈良県黒滝村 「森」をテーマの施設整備で活性化 観光客二十六倍に |
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黒滝村企画観光課長 |
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吉田昌史 |
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黒滝村は、奈良県のほぼ真ん中に位置しており、「奈良のへそ」の村と呼ばれている。吉野の山の中で、森林面積が村土の九三%を占め、吉野林業の中心地として発展してきた。しかし近年、外材に押されて材木の価格が下がるとともに、木材により糧を得ていた多くの村民は、相次いで山林を手放し村を離れていった。人口はかつての約五千人から千四百人余りに減少し、山林の七割が村外者の所有になった。
このような状況の中で、同じように林業の不振にあえぐ吉野郡の村々は、それぞれ「観光立村」への変身を競うようになった。過疎化と高齢化の進む吉野郡(奈良県の面積の六〇%を占める)内で、一番小さな黒滝村の挑戦は九年前の村民アンケートから始まった。アンケートの結果、七〇%の人びとが「村を存続するには観光事業しかない」と切実な回答を寄せた。当時の村長は、「村を出た人を呼び戻すのは無理やろ。せめて残った村人で何とかやろう」と決意した。しかし、観光事業をやるにしても観光資源が何もない。あるのは山と川、そしてきれいな空気だけ。村にどんな施設をどう整備すれば、都会から人が集まるのか全くわからない状況だった。
そんな手探り状況のなか、とにかく豊かな森の恵みを生かして、美しい緑の中でくつろいだ時間を楽しみ、新しい森と人間の物語を育んでもらおうと、山里型リゾート施設の整備を平成元年に着手。試行錯誤を繰り返しながら、各種の施設を整備し、工事費も約十二億円を投じてようやく五年春、一部未完成のままオープンした。
施設名も「黒滝・森物語村」と、いままでの山間地の施設ではあまりなじみのないユニークな名称で、マスコミからいろいろ報道された。
この「黒滝・森物語村」は村民の生活から生まれたもので、テーマはもちろん“森”。他のレジャー施設とは一味違った工夫をこらし、森が人びとといかにつき合ってきたか、森がいかに大切で豊かなものかを、体感できるようになっている。施設の内容は二万平方メートルの敷地に現在、喫茶、軽食を楽しめる「山幸工房」、江戸時代の庄屋宅を移築保存した「生活体験館」、屋外でジャグジーが楽しめる「御吉野の湯」、吊り床版の吊り橋では日本最長を誇る「黒滝・吊橋」、お客さんに一番人気がある「森の子プール」。そして芝生公園。また、三万平方メートルの山地に散策道とアスレチック遊具を配した「わんぱくまうんてん」がある。
この施設のなかったときには、観光客は春のアマゴ漁と、夏のアユ漁の解禁時に合わせて四千〜五千人程度だった。多少の自信はあったが、この施設が完成したら都会からどれだけの人が来てくれるか内心は大変不安だった。
それがオープン後、新聞、テレビなどの報道もあり、当初の予想をはるかに上回る観光客が訪れるようになった。平成五年度で、年間七万人、七年度には十三万人に達した。なぜこんなに多くの人が訪れるようになったのだろうか?
過密と公害、自然の喪失など都会の生活にへきえきしている人たちは、豊かな自然に満ちた山村に恋い焦がれており、「当村がこうした欲求や、思いを的確につかんだ施設だから」と自負している。
現在この施設の最後の設備が交流棟建設で、平成十年春のオープンを目指して建設中。施設の規模は宿泊定員五十人程度。
村ではこの施設のほかに、「黒滝村全体を観光エリアに」との思いで七年にオープンしたコテージ棟、テニス、パターゴルフ、そしてバーベキューのできる施設として大変人気高い「きららの森・赤岩」、四年にオープンした国道沿いの村の入口に建設した道の駅「吉野路三〇九」総合案内センターがある。この施設は村のアンテナショップとして大変人気があり、昔から村で作られていたコンニャクを商品化する目的で、村の婦人が「よもぎの里」の組合を結成し、毎日「コンニャク」や「草餅」作りに精を出している。また、若い婦人による「もち組合」を新しく結成、村の特産品開発の拠点として活用する。
これまで農地を荒らして農家を困らしていたイノシシを、村の特産として飼育できないかと思いつき、「猪飼育場」を整備、現在、施設には八十頭を超えるイノシシを飼育、「黒滝・森物語村」で季節限定品として「猪鍋」を提供し、冬場の観光客の誘致に一役買っている。
こうした観光施設とともに、村人と都市住民との交流による村の活性化を図る目的の施設として「黒滝・文化とスポーツの森」が平成七年度に完成した。施設は「こもれびホール」と「やまなみステージ」の二つ。
「こもれびホール」はスペインの建築家、ガウディの作品を思わせるユニークなデザインが特徴の多目的ホールとして活用している。また、「やまなみステージ」は徳川時代の小芝居小屋をイメージした、L型桟敷の「屋外ステージ」で、村の大切な資源である木材をふんだんに使った建築物。今後、木材の需要拡大にも大きな期待を寄せている。
これまでの村づくりは、ハード面の整備を中心に行ってきた。その結果、村の財政負担も相当大きくなっており、今後こうした施設を活用し、いかに充実させていくかが課題だ。また、後継者の育成などソフト面の強化も重要で、「人づくりこそ、これからの村づくりを成功させる最大の決め手」と考えている。村づくりは一人でできるものではない。地域の人びとの適切な役割分担と住民と行政の一体化がより一層山村を活性化させる。
今後、村全体がより豊かで魅力ある地域として実感できるような、活力のある村づくりに努力していきたい。
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