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埼玉県
狭山の緑を守るトトロ基金
沖縄から北海道、外国人も支援

トトロのふるさと基金事務局長

永石文明

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●「トトロのふるさと基金」設立

 狭山丘陵は東西約十一キロ、南北約四キロ、面積約三千五百ヘクタールで、周囲を住宅地に囲まれた市街地に浮かぶ「小さな緑の島」だ。自然保護運動の対象地としては、大きすぎることなく、小さくもない。行政区が東京都と埼玉県にまたがっているものの、一日あれば歩いて一周できるほどの手頃な広さだ。都心に近い里山のため、宅地化の波は収まりそうにない。放置された雑木林には産廃から家庭ゴミまで捨てられているのが実情。それに、高い土地価格もトラスト活動と行政により公有地化のさまたげになっている。そのため、相続で手放された雑木林が切り開かれ、資材置き場になっていく場合が多い。
 木々の芽吹きが始まる四月。コナラやヤマザクラの葉芽が膨らみ、樹冠は灰色から紫色やもえぎ色に変わっていく。雑木林の木々は春の美を競う。樹木の根の保水で抱かれた水が少しずつ谷すじに湧き出し、小さな流れをつくり、雑木林に抱かれた谷間を潤す。セリやミゾソバも芽生え、春の暖かさを感じるかのように、水面の水色の輝きとともに、緑色の葉を広げ始める。この時季、狭山丘陵は、雑木林と谷戸が一組となった、落ち着いた色合いの美しい里山となる。
 そのころ、いまでもそうだが、林の木々は切られ、どんどん資材置き場にされていった。また、早稲田大学の所沢進出計画が明らかになり、反対運動への参加が自然保護活動に入るキッカケとなった。狭山丘陵の自然保護にかかわってきた有志でこの美しいトトロの森を買い取ることを計画、トトロのふるさと基金が設立された。

会員一万三千人

 基金は任意団体で、一九九〇年四月十二日に設立。九七年二月末で約一億九千万円集まった。基金に協力してくれた会員数は寄付者も含めて約一万三千人。沖縄から北海道まで全国の人が、また外国人も賛同してくれた。
 年会費は(1)正会員(一般)が三千円、高校生以下二千円(2)家族会員五百円(3)賛助会員一万円(4)法人会費十万円。
 任意団体のため税制上の必要から寄付金などの振り込み窓口は財団法人埼玉県生態系保護協会にお願いした。同会は、所得税法と法人税法による特定公益増進法人として免税団体の認可を受けているため、多額の寄付も受けやすい。

基金の名はアニメ映画の題名から

 いまでこそ比較的広く普及したトトロのふるさと基金であるが、最初から買い取りの対象となるトトロの森の名があったわけではない。それは一九八八年のアニメ映画「となりのトトロ」(宮崎駿監督)から名を借りたものである。
 映画では、田舎に引っ越してきた一家四人が、美しく緑豊かな自然の中でトトロのお化けと出会い、いろいろな体験をしていく―といったストーリーだったと記憶している。
 映画の中に登場する七国山病院、牛沼、松郷などの地名、それに里山の風景が、狭山丘陵とその周辺にちなんだことによる。トトロのふるさと基金は設立時、大々的に新聞やテレビなどで紹介された。いまでは、トトロの森といえは、狭山丘陵のことを指すまでになった。
 開発から里山の自然と文化を守るのも、私たちの大切な役目だ。開発されそうになった林は、保全運動を展開し、場合によっては、行政への公有地化の働きかけもする。トトロの森一号地(一千平方メートル)は基金の中から六千万円で、二号地(千七百平方メートル)は五千六百万でそれぞれ買い取った。いずれもわずかな面積だが、それぞれの周囲は、所沢市や埼玉県が買い取り、公有地化され保全地区となった。

地域密着型の自然保護活動

 いったん公有地化された雑木林は、自治体の狭山丘陵の保全整備に関する担当課と整備方法や管理運営などについて定期的な協議をしながら進めている。実際の下草刈りなどの維持管理作業は自治体と保護団体が共催で、自治会や市民にも広報などで呼びかけて行っている。いわゆる地域密着型の自然保護活動だ。
 現在、この一帯の里山の環境は急激に悪化している。里山に生きる動植物。里山ならではの文化。踏み圧に弱い田畑のあぜ。里山の生き物が生息できるための保全管理手法を毎年続けて調査研究し、実践していくのも、私たち里山を守る自然保護団体に課せられた仕事だ。
 また、基金が任意団体なのも問題。今後、雑木林への維持・管理を積極的に進めるためには、専従の事務員の確保や、永続性のある組織化が必要だ。


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