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漫画にみる老人の孤独 |
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日本大学法学部講師=漫画ジャーナリズム論 |
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山田綴 |
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昨年夏、三十数年勤めた新聞社を定年になった。それを見越していたかのように、定年の直前に、住んでいる団地の役員を引き受けさせられた。
二棟だけのこじんまりとした団地だが、それでも二百四十世帯が入っている。建物の維持管理、修繕、ゴミ処理などの運営を、理事と称する役員七人が、任されている。こういう仕事は、まだ体が動きやすい若いうちにやっておくに限る、と思って引き受けたのだが、私を含めて六十代が五人を占め、あとの二人は三十代と四十代が一人ずつ、という典型的な高齢化社会の縮図とわかった。
月一回開く理事会で、団地全体の高齢化が、よく話題にのぼる。折しも横浜市が、この春から実施しようとしている「ふれあいネットワーク」という施策があって、独り暮らしのお年寄りを地域ぐるみで支えていきましょう、明るい地域に発展させていきましょう、というこの試みに、わが団地としてもどう取り組んでいくべきか、話し合ってきた。
ところが、話し合ってみて、この地域ぐるみ活動が、意外と難しいことがわかってきた。多くの独り暮らしのお年寄りが、ふだん、ほとんど近所づき合いをしていないうえ、隣近所から口出し手出しをしてほしくない、と思っているふうなのだ。もともと近所づき合いのわずらわしさを嫌って、こうしたマンション形式の団地に入ってくる人も多い、と聞いているので、そうした気持ちもわからないでもないが、いっそうお年寄りの孤独化、孤立化を深めていくことにならないか、と気掛かりではある。
老人の孤独化といえば、すぐに頭に浮かぶのが、大友克洋の漫画『童夢』である。巨大な高層団地を舞台に、不審な死を遂げる事件が続発する。警察が捜査に乗り出すが、いずれも死の動機が判明しない。一方、警察の捜査対象に全くなっていないところで、意表をつく筋書が展開される。突然、独り暮らしのボケ老人が登場し、超能力を用いて人を襲い、団地の屋上から落下させて、自分が欲しいと思うおもちゃや装飾品を奪い取っていく。老人の部屋には、こうして集めたおもちゃ類が山積みになっている。
同じ団地に住む少女が、老人の超能力に気づく。「なんて、いたずらっ子なのかしら」とつぶやく少女は、こちらも超能力を発揮して、老人の暴挙を阻止しようと、壮絶な闘いを挑む。二人のすさまじい対決は、ついに高層団地を大破壊へと導いてゆく…。
この漫画は、十四年前に発表されたとき、衝撃的なストーリー展開と、リアルな描写が高く評価され、漫画として初めての「日本SF大賞」を受賞している。
読み終わって、気持ちの底にどしっと残ったのは、孤独な老人の悲哀感だった。終(つい)のすみかにしようとしている地域から、自分からはみ出していってしまう姿は、私たち自身の問題でもある、と思うのである。