kaigaobi.gif

tensen.gif

福岡県北九州市
地域活動から国際活動ヘ
現代美術センターを創設

北九州市教育委員会文化部主幹

石本信義

tensen.gif

鉄鋼彫刻の街に

 北九州市は九州の最北端に位置し、昭和三十八年に門司、小倉、若松、八幡、戸畑の五つの市が合併して発足した百万都市である。
 製鉄業を中心とした基礎素材型産業を経済基盤として発展した都市の性格上、近年の構造不況のあおりをまともに受けており、現在、末吉興一市長のもと「水辺と緑のふれあいの“国際テクノロジー都市”へ」を基調テーマに「北九州市ルネッサンス構想」を掲げ、市を挙げて二十一世紀に向けた都市の再生に取り組んでいる。そのなかで「文化の薫るまちづくり」を進めるため、市民も自主的にさまざまな文化活動を行っている。
 本市のほぼ中央部に当たる八幡東区(旧八幡市)は、明治三十四年に官営八幡製鐵所が操業を開始した地で、「鉄の都」として輝かしい歴史を持つが、産業構造の変化の影響を最も受けている地区である。
 昭和六十二年に、YAHATAを芸術性豊かな鉄鋼彫刻の街として国際的にアピールするという趣旨で「国際鉄鋼彫刻シンポジウム―YAHATA'87 」が地域住民が組織した実行委員会の自主的運営によって開催された。

地域ぐるみで支援

 このシンポには、英国の現代彫刻家のフィリップ・キング氏とデヴィッド・マック氏など、鉄を素材とした作品を制作している彫刻作家十人が参加し、一人三十トンの鉄を使って巨大な作品を制作、展示した。
 新日本製鐵八幡製鐵所などの地元企業から材料や制作工房の提供を受けるなど、地域ぐるみのサポートのなかで、当初の計画をはるかに超える規模で運営され、大成功をおさめた。
 この市民の間に起こった「鉄鋼彫刻をいかした現代美術のまちづくり」の動きは、一方で、フランク・ステラ氏など三人の作家が参加した「第二回国際鉄鋼彫刻シンポジウム―北九州'93 」の開催などに引き継がれ、リサイクルをテーマにして市民が集めた百万個の空き缶を使った作品などが制作された。
 その結果、世界的な巨匠の制作した鉄鋼彫刻がいつの間にか、一つひとつ町のなかに増えてきており、現代美術の最先端の作品にふれた市民の間に、美術への関心が高まってきている。
 さらに、もうひとつの動きは、平成元年の「現代美術サマーセミナー・イン・北九州」に引き継がれた。それは世界的なアーティストや美術関係者を講師に招き、全国の大学院クラスの若い学生を対象とした約一週間の泊まり込みのセミナーである。
 このセミナーは七年度までに七回開催され、ダニエル・ビュラン氏、ポンテュス・フルテン氏など延べ三十六人の海外の講師と二万九十七人の受講生が参加し、大きな成果を上げた。

既存の施設を活用へ

 また、「国際鉄鋼彫刻シンポジウム―YAHATA'87 」からかかわってきた地元の市民・企業関係者による実行委員会は、五回目からは市民ボランティア団体「現代美術ソサエティ北九州(CASK)」を設立するまでに成長した。
 このセミナーで蓄えられたノウハウ、人的ネットワークを生かして常設の現代美術専門の学習、研究機関を設立しようという機運が高まり、「現代美術センター・CCA北九州」が八年十月に任意団体(理事長には市長が就任)として設立され、今年の五月から本格的に活動を開始することとなった。
 ソフト先行型の事業のため事務局、教室などは地元の九州国際大学が開設する文化交流センター施設の一部の提供を受け、制作用スタジオは廃校になった中学校の体育館や近隣の中学校の余裕教室の活用を図るなど、既存のハードを最大限活用する方針で開設準備を進めている。
 団体の設立を記念し、昨年十月に開催したシンポには、ダニエル・ビュラン氏、ジャン・ユベール・マルタン氏など海外からアーティストや美術館ディレクターなどが九人参加し、東京、京都、北九州の三会場は現代美術を志す若者であふれ、大盛況だった。
 また定員の二倍以上あった受講生の選考も二月末に終わり、現在、約三十人の受講生を受け入れるため、宿舎の提供など企業の協力やボランティア団体との連携など地域の協力体制づくりを行っている。

若い芸術家を世界へ

 現代美術センター・CCA北九州は、若い世代のアーティスト、研究者を対象としたトレーニングコース「リサーチ・プログラム」の運営と、現代美術に関する図書、カタログ類の収集・研究、データベースの整備、出版などによる情報ネットワークづくりを主な活動とするほか、図書資料室の公開や展覧会、一般向けセミナーの開催も予定している。
 このプログラムにはマリナ・アブラモヴィッチ氏、ダニエル・ビュラン氏はじめ現代美術の第一線で活躍している世界的なアーティストらが、教授として交代で滞在することになっている。
 また、ディレクターとして運営の中心となる美術評論家中村信夫氏は、CCA北九州では対話を重視した自由な雰囲気を尊重し、世界に通用する若いアーティストを送り出したいと語っている。
 現代美術センター・CCA北九州は、「鉄鋼彫刻をいかした現代美術のまちづくり」という地域活動の盛り上がりのなかから生まれた。
 これからは、北九州市を現代美術界の世界的ネットワークの重要な拠点とするために、世界的な視野で人の交流、情報の発信などを行わなければならない。そのためには、いままで以上に地域社会と連携しながら、地域に根ざした個性を持ったセンターに育てなければならないと思っている。


●前ページへ戻る

●3月号の目次へ