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埼玉県春日部市
胸張っていえる、「彫刻の街」へ
伝統が生んだ“新しい文化”

春日部市自治文化課主事

折原宏美

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四十八体にもなった彫像

 「ハーイ、撮るよ!」(カシャ)「ねえねえ、今度は私」こんな記念写真のひとコマとなっているのは、女子校生の通学路に設置されている黒川晃彦の作品「小さい花」。この彫刻は実際のベンチとしても利用ができ、ちょっとひと休みする人たちの姿も見受けられる。
 駅前通りの綿引道郎の作品「詩想」には、彫刻のジャケットに一輪の赤いバラが添えられ、おしゃれないたずらがあったり、昨年設置した藤原吉志子のうさぎをモチーフにした作品「おでかけ」の前では、「ウサギの足をなでると私の足も良くなるのよ」といってお年寄りが祈願している光景があり、私たちもちょとうれしくなる。
 このように、いま、春日部市では、市民と彫刻のお付き合いがさまざまな形で始まっている。直接彫刻に手で触れられるため、人それぞれ、いろいろな形で親しんでいただいている。現在は、“彫刻のある街づくり”事業で設置した十八体と、他の事業や寄付によって三十体、計四十八体の彫刻が春日部市内に設置されている。

市民に“ゆとり”“うるおい”を

 本市では、平成元年度、“ふるさと創生事業”の実施について、市民や職員からアイデアを募集した。その中で、「芸術パーク・芸術モール事業」・「彫刻展示ストリートの建設」が、最優秀作品として選ばれ、市では、このアイデアを「彫刻のある街づくり〜アート・アメニティ構想〜」としてまとめた。
 それは、日本では珍しい橋上公園の古利根公園橋を核とし、春日部市野外美術館として位置付け、市民文化会館、駅前広場、ポケットパークなどの「点」を駅前通り、学校通りなどの「線」で結びネットワーク化し、都市や自然との調和を図り、合理的に美しく、かつ個性的な都市づくりを推進すると同時に、文化的な“ゆとり”や“うるおい”を市民や春日部に来た人たちに感じてもらおうとするものだ。彫刻の設置場所は、現在のところ、春日部駅を中心とした都市景観形成重点地区九十四ヘクタールで、道路整備などが完成した箇所を選定している。
 春日部のシンボルは、樹齢千二百年を超える特別天然記念物の藤・伝統的産業・古利根川である。昔からこうしたシンボルを活かしたまちづくりを進めたいという願望が、春日部市民にはあった。とくに、春日部市民にとって、江戸時代から自分たちの生活を支えてきた古利根川をシンボルとして生かせないかと強く考えていた。それが、昭和五十九年、市制施行三十周年に古利根公園橋となって形作られた。

古利根公園橋が下地に

 ですから、古利根公園橋には、麦わら帽子をシンボリックなデザインとした街路灯、明治時代に走った千住馬車鉄道のレリーフが配置され、また新しい文化を示す「彫刻」も配置された。これが、「彫刻の街づくり」の下地となった。
 また、伝統的産業による技術・文化が「彫刻」を生んだということもいえる。桐タンスや桐小箱、また麦わら帽子や押し絵羽子板も、以前から春日部に根付いた産業であり、文化である。そういった意味で、伝統的産業によって培われてきた工匠たちの技術・文化というものが、春日部の人びとの生活のベースにあり、私は「彫刻」を好む市民の心になったと思っている。
 春日部市では彫刻を設置するばかりではなく、平成二年度から、市民の生涯学習と文化の向上を目指して“彫塑教室”を毎年開催しており、これまでに五人が県展に入選し、実力も向上してきている。
 また、“市民彫刻展”も、同年度から隔年で開催しており、昨年も八月下旬から九月上旬の六日間開催、市内外から多くの人たちにご来場いただいた。さらに、“彫刻のまち平和ミニコンサート”は、五年度から毎年十月十日に、柳原義達の作品「道標・鳩」のある市民文化会館庭園を会場に開催している。

今後も積み上げる

 こうして、彫刻をひとつの題材として、いろいろな文化につなげていこうというのが春日部市の“彫刻のある街づくり〜アート・アメニティ構想〜”の考え方である。
 彫刻のまちづくりは、まだまだ始まったばかりだが、これからも着実に積み上げていきたいと考えている。私は、彫刻を通じて、いろいろな想いと夢をともに語れる人たちが増えてくれることを期待している。一人ひとりのなかで、一つひとつの彫刻がいろいろな時代と物語を語り出すとき、私たちの彫刻が、春日部市の新しい文化として根付いてくれると期待している。
 私はいつか、「あなたの街はどこ?」と聞かれたとき、胸を張って「彫刻の街・春日部」と、市民のみなさんが彫刻の物語を紹介したり、自慢してもらえるような街になったらいいと思っている。そして、市民だけでなく、多くの人たちにも彫刻の野外美術館に立ち寄っていただき、直に触れて彫刻の物語を聞いてもらいたいと思っている。


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