宮水の場と、サイバー酒蔵ストリート
産業復興計画の一環

兵庫県西宮商工会議所専務理事

白井利治

活性化構想まとめる

 兵庫県西宮市は、大阪市と神戸市の中間に位置し、両市へは鉄道で十五分の至近距離にある。人口約四十万人、大阪湾に面した気候温暖の地であり、文教住宅都市として発展してきた街である。
 主産業は、清酒をはじめビール、ウィスキーといった飲料製造やハム・ソーセージなどの肉製品、冷凍食品の加工など食料品工業で、ほかに船舶用電子機器、高度医療機器、特殊自動車のぎ装組み立て、油圧器・バルブ製作、ガラス製造、ステンレス製造、立体駐車場の製造組み立ての各本社・工場が立地している。
 平成七年一月十七日、震度6の直下型阪神・淡路大震災により、西宮市は神戸市、芦屋市とともに甚大な被害を蒙った。以後二年が経過し、復旧・復興は順調に進んでいるが、本格復興はこれからである。
 地震により、甚大な被害を受けた西宮のまちの一日も早い復興を願い、私ども西宮商工会議所は行政にも働きかけながら、当時ボランティアの申し出のあった学者、都市計画家、経営コンサルタントなど協力者とともに、プロジェクトチームを編成した。
 七年二月から五月にかけ、三カ月間に十回の会合、延べ五十時間を費やし、西宮の産業復興と防災都市を目指す「西宮復興・活性化ビジョン」をまとめ、直ちに西宮市長ならびに兵庫県知事に、当時策定中の震災復興計画に反映されるよう、要望書として提言した。

西宮の粋体験の舞台に

 このビジョンのプロジェクトのひとつを取り上げ、「宮水の場とサイバー酒蔵ストリート」計画とし、現在事業化を含め、構想の実現を検討中である。
 西宮といえば、まずだれもが思い浮かべるのがうまい酒である。そのうまい酒をつくってきたのが、宮水であり、酒造りを育ててきた西宮の風土であり、気風である。西宮の知名度に比べると、西宮の酒をはぐくんできた酒造り文化のほうは、あまり知られていないし、知らせる努力がされていなかったように思える。
 宮水を生む地形や六甲おろしなどの自然環境。古代の入り江が陸地と化したいまの西宮の町の広がり。地の利を生かしてみごとな酒をつくるものづくりセンスの良さ。海路を利用して、いちはやく酒の販路を江戸まで広げて大もうけした商売勘の良さ。西宮が浄瑠璃の発祥地であることも余り知られていない。芸能がないところはモノが育たない。ものをつくり、もうけ、楽しむといった、生き生きとした西宮の伝統が、酒造りを育ててきた西宮の文化である。

「宮水庭園」をつくる

 「宮水の場」はその核である。宮水の源である宮水井戸を修景して「宮水庭園」をつくり、それを眺められる場所に、西宮の酒と酒造り文化の奥の深さ、愉快さを、訪れた人に知ってもらえるよう、舞台を設定していく。
◎デザインされた宮井戸をのぞくと、西宮の白い雲と青い空が映える。
◎デザインされた宮井戸の夜は、幻想的な光の井戸となる。
◎百種を優に越える西宮の酒を利き、
◎小屋掛け、野掛けで、西宮発祥の浄瑠璃を酒とともに味わい、
◎酒造りの歴史や方法を知る。
◎酒だけでなく、酒器にも凝る。ガラス、陶器、歴史的なデザインから自らの手になる作品を創ることもできる。
◎自らの酒器と酒を持って帰ることもできる。
 買う、味わう、観る、創る、学ぶ、すべてが重なり合いながら、自由に体験できる舞台が「宮水の場」である。
 「サイバー酒蔵ストリート」は市域の情報網からインターネットを介して、この「西宮文化の粋」を載せて、世界に伝えるためのサイバー通りである。
 好きな酒、おすすめの酒の投票は刻々変わり、飲み手のつくる酒嗜好ガイドは日々進化し、つくり手の紹介する酒ガイドは酒の個性を強調し、酒のさかなの料理教室は確実に仕上がる。蔵の公開案内は自慢を増やし、宮井戸端会議は秩i株)ヤをつくる。

造り、飲み手の疎通の場に

 酒の造り手、飲み手、のコミュニケーションが昼夜、国籍を選ばずに繰り広げられ、宮水を世界の宮水に育てていく。
 これらの「宮水の場とサイバー酒蔵ストリート」は、文化を求めるビジター、とりわけ外国人にとって魅力となるだろう。ひとつのことにこだわらない自由さが「西宮の現代の粋」として育っていく。いろいろなアクションの舞台となる「宮水の場」とそのアクションを広げていく「サイバー酒蔵ストリート」は点、線、世界へとつながっていき、新しいタイプの観光を目指していく。
 この計画は、宮水と良質な酒米によって、つくられてきた酒造り文化を宮水とともに永久保存し、それに携わる清酒製造業ならびに関連する食料品工業や機械工業、さらには流通も含めた産業の発展を図り、併せて酒造りとともに生まれてきた文化を資源として加え、新しい観光産業と情報産業を育て、雇用基盤の拡充を図るものである。
 この地域には、かつて樽回船(いまでいうコンテナ)によって江戸に酒を積み出した今津湊、西宮湊があり、灘の五郷中今津郷と西宮郷がそれぞれ二つの良港から大量輸送をした。
 要は、宮水という酒造りに適した水の恵みをうけ、良質な酒米がはいり、酒造りが発展し三百年以上の歴史をもつ。酒に文化という付加価値をつけ、アメニティに富んだ文化の香り高い街づくり計画は、地場産業の新しい創造的復興を目指すものである。
 十五年計画で、総事業費は十五億円を見込んでいる。


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