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群馬県白沢村
住民参加の伝承冊子づくりで
ふるさと文化を再発見

白沢村文化財調査員

飯田祐中

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 白沢村は、群馬県北東部の沼田盆地の東端に位置し、明治二十二年四月に七カ村がひとつになって、村制が施行された。
 利根川の支流片品川の河岸段丘上にあり国道一二〇号線、県道大間々線が村の上下を横断し、標高四百〜六百メートルに集落が点在している。人口三千六百人の農業主体の小さな村である。

昔話を絵本に

 白沢村は児童文学者・望郷詩人の「おのちゅうこう」先生の故郷である。先生は村に伝わる昔話数編を「日本の民話」などに紹介された。民話や昔話はその土地に営々と生きてきた祖先の温もりや、民衆のたくましさ、生きざまを伝えてくれる絶好の材料でもある。
 本村の「民話と伝承冊子づくり」は、おのちゅうこう先生の業績に学びなから、古くから村内に語り継がれてきた昔話を絵本に編集し発行するというものである。この事業は本の編集・発行を通じて、村民の郷土への愛着と理解を深め、さらに、連帯意識を高める「明るい村づくり」の地域活性化の一助とすることを目的とし、平成三年度から始められた。なかでも明日の郷土を担う子供たちが昔話に親しみ、ふるさとを見直す契機とすることを主眼にしている。そして、「地域で語り継がれた昔話は、地域住民の手で受け継いでゆく」という精神を生かすため、編集委員は全員を村民より公募した。
 編集委員は、村内の「しらさわ赤りんごおはなし会」に所属するお母さんたちや、昔話に関心をもつ村民を対象に、初年度の平成三年度は十七人が選任され、平成五年度には二十三人と応募者が増加した。編集にあたっては「昔話にこめられた祖先の心を発見し、それを育んできた郷土をみつめ直す」ことに最大のポイントを置いた。
 冊子の名称は、第一集が『かたりつぐ白沢むかしばなし』(平成三年度)。第二集『続かたりつぐ白沢むかしばなし』(平成五年度)とし、発刊された。
 事業年度と経費は平成三年度より六年度とし、総額千二百万円(村、県補助金)を計上し、第一集は当初予定の千五百部を好評につき二千部を増刷した。第二集は二千二百部を発行。編集態勢としては、事務局は教育委員会で担当し、第一集は阿部委員長を中心に採話、再話、挿絵の三部会の委員構成とし、第二集は委員長、小野副委員長を中心に部会を構成せず、原文と挿絵に委員を割り当てた編集委員会制で推進した。

初めての取り組み

 第一集、第二集ともに、それぞれ十六編からなり、計三十二編の昔話を絵本として編集することができた。
 第一集の内容は、金屋の長者、聖が坊、雲谷寺の鏡、岩坂の天狗、田植え地蔵、高平の酒地蔵、郷倉やぶり、猿智、蓬と菖蒲、だんだんだんご、野地穴の浦島ギツネ、生枝の三騎石、太郎三郎、米山の湯、狼、打伏の森。
 第二集の内容は、立薬師、化物石、ほととぎす、楢の木さま、古語父山の鬼女おのぶ、ほらふき爺さん、お助け検地、高平の不動さま、長太夫橋、正縁塚と一本松、道路や橋づくりに力をつくした岡村八弥、河童、もうれんのふしぎな穴、天下御免の水車、河童の薬、白馬にまたがった愛岩さまである。
 本事業は、すべてが初めての取り組みで戸惑いもあり、いかに進めたらよいか試行錯誤の連続で、編集委員全員が絵本づくりはまったくの素人であったが、採話作業や取材活動などを通して地域を知り、伝承文化に触れるよい機会となったと実感している。また、ほのぼのとした挿絵は、絵心のある委員が分担して描き読者から好評で、第一集は増刷を余儀なくされるほどであり、第二集の編集委員の応募者の増加も、第一集発行の好評が理由であったと考えられる。
 完成した『かたりつぐ白沢のむかしばなし』は、おはなし会のお母さんたちによって、定例おはなし会、サマースペシャルの集い、クリスマス会などで劇やパネルシアター、朗読などを通じ子供たちを中心に村内に紹介され、「故郷を見直し、語りついでゆく」という当初の目的にそった活用が図られた。さらに、平成五年度には、絵本の原画展を開催し、約六千人の入場者があり、大きな関心を呼ぶことができた。
 委員が、村内を歩くと「あの話は○○ばあさんに聞いたことがある」というように、以前にも増して声をかけてくれることが多くなった、ということもひとつの成果と考えられる。
 今後は、同時に作成した『むかしばなしイラストマップ』をあらゆる機会に活用し、より理解を深め、さらに、冊子は村の生涯学習奨励事業補助グループや、文化協会傘下の団体、子供会などの社会教育団体・グループと保育園、小学校、中学校などで、さらに活用を深め、今後も、この絵本を白沢村のイメージアップに活用していきたいと考えている。

大きな成果はふるさとへの愛着心

 この事業で何よりも大変であったのは、「語りべ」が村内に皆無であったことである。そこで、関係資料を探し、地域の古老などに尋ね、断片的な話を物語として再話する作業の積み重ねによって編集せざるを得なかった。また、全国各地に伝わる同様の昔話との共通点や、本村の独自性なども検討する時間がなかったことが悔やまれる。
 この事業を実施するに当たって、最も重視した点は、「住民の直接的な参画」であり、そのため専門家に依頼することなく、村民の手作りによる絵本づくりとしたことで、より親しみのあるものに仕上がったことが、大きな成果として挙げられる。明るい地域づくりの方法・手段はいろいろと考えられるが、民話をテーマに取り組めたことはふるさとを見直し、愛着心を高めることができたと考えられる。


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