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山形県南陽市 夕鶴の里づくり 生涯学習による地域づくり |
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夕鶴の里 |
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渡部昌久 |
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夕鶴の里づくり事業は、民話を大きなテーマとして「語り部の館」と「資料館」の二つの施設で、伝統文化の伝承と活用によるまちづくり事業である。当地は鶴女房の民話を開基縁起としている名刹珍蔵寺という寺があり、それに鶴巻田、織り機川や羽付などといった川や地名が残っていて、民話の里として相応しい雰囲気をもっていることからも、民話事業発足の大きな要因となった。
名称の「夕鶴」は木下順二氏(劇作家)の推敲を重ねた戯曲『夕鶴』というすぐれた脚本と、千三十七回という驚異的公演回数と共に、そのすべての舞台が常に新鮮で多くの観客を動員し、深い感動を与え続けたことで極めて高いネームバリューをもつ名称であるが、当地の事業も民話をテーマとしたことから事業効果の一層の高揚を期待し、名称の借用をお願いし先生のご理解をいただいたものである。
木下順二氏は「ヨーロッパにはギリシャ神話やローマ神話によって民衆の中に何千年という時間をかけて血となり肉となっている歴史的知恵が生活の根底にあり、その知恵がテーマとなってすぐれた戯曲を生み今日のヨーロッパ文化、芸術が形成された」……と、そして「日本の社会の中にヨーロッパの血となり肉となった知恵に比肩する知恵があるかないかはいろいろ意見があるところであるが、ギリシャ神話やローマ神話に対するものとしては人びとへの浸透度からいって日本神話より民話が考えられる」と述べられている。
また松本新八郎氏(専修大教授)は「日本の民話が民話らしく成形したのは平安時代の末期であった。この時代主として農民によって語られ武士の手によって地方から京都や宮廷、貴族の警護に当たった武士の中で語られ各地のものが交流していった。それを裏づける多様な文学遺産『竹取物語』『今昔物語』『宇治拾遺物語』などがあるが、物語の基になっているものは口で語られた口頭創造の語りで、いろいろな説話が記されその中から、本格民話や武士社会での教訓としての英雄物語、動物と人間との関係、それに狩猟、耕作にかかわるもの、または武士や貴族社会を批判、風刺したもの、日本のロビンソンクルーソ的「妹背鳥」やシンデレラと同じストーリーで語られる「米福糖福」などすでにこの時代に語られていた。そして「室町幕府時代これらの民話を基にして『能』や『狂言』が生まれた。能は武士階級に奉仕した日本のオペラであり、狂言は民衆が創造した小さな科白劇だった……」と記述している。
さらに江戸時代に入り能や狂言、文楽その他の芸能の要素を吸収消化し、庶民演劇として普遍的魅力を備えた「歌舞伎」が生まれた。このように、日本の民話の歴史を見てみると、千年余の時間の中で日本の最高の芸術を生む母体となっていることが、歴史学者や文学研究者の手によって解明されている。日本の伝統文化も多種多様であるが、民話はとくにすぐれた文化であるといえる。
民話はそれを母体として世界に誇れる最高の芸術を生んだが、それだけではなく民族の歴史や文化の発達、社会構造の変遷を証すると同時に、人びとの生活の普遍的倫理やモラル、運命共同体としての集落の規範、家族の愛情や秩序を語っているもので、現在でも重要な意義をもつ文化だと考えている。
「かにむかし」や「ほととぎす兄弟」または「なら梨とり」など人間と自然、正と不正との葛藤、労働と生命、自分の信念と生きる道の選択といった教育性に富んだ語りでも、民話独特の優しい語りとわかり易さによって、幼い魂の成長に欠くことのできない役割を果たし得る機能をもっていると考えている。
高学年になると民話で語られるお話(虚構)の世界を非科学的・非合理的な世界として楽しむことを知らない子供たちが増加している。しかし語りの世界にふれることによって、現実の話ばかりではなく豊かな夢や空想の世界に、想像のつばさを羽ばたかせることもできるようになるに違いない。
とくに幼児期に、父母や祖父母の語りによって培われる人柄「適応力・創造力・思いやり・優しさ」といった生きる知恵を身につけた素晴らしい人間として成長することを期待すると同時に、民話には次のような機能があることもぜひ理解してほしいと考えている。
人にやさしい心を育てる
人に夢・想像力(情操)を育てる
人とふれあい・絆を深める
人に知恵・生きる術を教える
日本のすぐれた文化を継承する
(1)日常的活動と民話会の語り
夕鶴の里は資料館にセットされているスライド映像「鶴女房」と地元の語りべ「民話会ゆうづる」の民話口演が特徴である。スライド鶴女房は、全日本コンクールで大賞を受賞した作品で、人間の弱さと純粋な鶴の心情を描いたもので遠く関東方面より訪れてくださる人びとにも「ここまできた甲斐がありました」と感銘深く観賞していただいている。民話口演は年間約五百回と一日二回ほどの口演ですが献身的な活動で協力していただき、多くのお客さんに喜んで聞いていただいている。
また、当市には旧町村単位に八館の公民館があり、それぞれに常勤職員が配置され、地区の総合的な開発と生涯学習による地域づくりがすすめられているが、夕鶴の里はこれらの公民館とのネットワークを結び、地区内各戸での語りの復活を目標とした民話講座を開いている。公民館ひとつごとに三回講座で子供の成長と発達段階に相応しい子育てと民話の役割をテーマとしたもので、専門家と民話会語りべをセットにし楽しみながら学んでいただいている。
(2)「夕鶴の里友の会」の活動
夕鶴の里の職員体制とも関係しているが、事業目標を達成するためには、さらに多くの館内、館外活動が期待されている。その中で夕鶴の里の事業目標に協賛するかたちで独自に学習講座や、他市町村の民話団体との交流研究などに積極的に取り組んでいただき大きな成果をあげている。
語りの学習会 月一回
民話紙芝居の作成 十日間(この中から
童心社より全国的に出版されたもの二作)
友の会報の発行(情報発信)
切り絵紙芝居の作成(現在進行中)
異世代民話交流事業(小中高生と語りべの交流・三ヶ年継続事業)
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