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岩手県遠野市 『遠野物語』をまちおこしのテーマに 市民と行政が連携し文化事業を |
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遠野市総務部企画調整課主事 |
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大里政純 |
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東京から東北新幹線で約三時間、JR釜石線に乗り換えてのどかに田んぼと山並みを眺めながら約一時間。昭和五十六年の東北新幹線の開通は、それまでの国内観光のベクトルに大きな変化をもたらした。加えて、折からの「ふるさと志向」を背景に、東北の新たな観光時代の幕開けとなった。そのころから遠野を訪れる観光客が年々増えてきた。
遠野市はかつて、宿場町・城下町として栄えた時代があったが、時代の変遷とともに、まちは次第に活力を失っていった。人口も減少の一途をたどり、産業構造も弱く、過疎化の進行に歯止めはかからない。
しかし、このような逆境のなかで、遠野には地域を甦らせる貴重な宝が残っていた。それは、脈々と語り継がれてきた民話と、それを大きく世の中に知らしめてくれた柳田国男の『遠野物語』であった。民話と『遠野物語』という地域資源にこだわったまちづくりが始まり、いつの間にか「民話のふるさと遠野」という言葉が定着していったのである。
このまちづくりを推進するうえで、遠野市総合計画、いわゆるトオノピアプランが大きな役割を果たした。
総合開発計画はどこの市町村でも策定されているが、本市では昭和五十二年に策定し、当時ではめずらしくトオノピアプランと命名した。「大自然に息吹く永遠の田園都市」を目指し、生産加工都市、健康文化都市および博物公園都市の三つを将来の都市像に掲げた。そのひとつ、博物公園都市構想では、市内全域の公園化を計画、代々の市長のもと数々の事業を展開してきたが、常に根底には、遠野を永遠のユートピアへとの思いが流れていたのである。近年、その努力が徐々に花開きつつある。
民話を生かしたまちづくりとして、手始めに昔からある千葉家曲り家、続石、五百羅漢、カッパ淵など、遠野の暮らしや民話の世界をイメージ・彷彿させる資源の掘り起こしとPRを行った。
ソフト事業では、今年で二十二回目の公演となる遠野に春を呼ぶ市民の舞台「遠野物語ファンタジー」の継続開催や、十四回目の冬のイベントとして定着した遠野昔話まつり、平成四年度に開催した世界民話博。また、『遠野物語』の注釈研究を重ねている遠野常民大学の活動の一環としての「遠野物語ゼミナール」の開催。そして、平成七年には、遠野物語を中心とした歴史民俗の調査研究を進める「遠野物語研究所」の開設と、市民と行政の文化パワーが次々と発揮された。
ハード事業では、昭和五十五年に、わが国初の民俗館を併設した遠野市立博物館を整備したのを皮切りに、昔話村、伝承園を整備していった。また、ふるさと創生一億円事業では、遠野駅から博物館までの通りに、遠野はもちろん国内や世界の民話や童話の主人公の彫刻を配置した民話の道を整備した。そして七年四月に、消えゆく南部曲り家を移築復元した「遠野ふるさと村」がオープンし、人気を博している。
このほか駅前の交番がカッパの顔に変身し、郵便ポストにはカッパが腰をおろしているなど、ほほえましい試みも相次いでいる。
このようななか、平成七年七月七日に、JR東日本が遠野駅を改装し、B&B方式のホテル、フォルクローロ(民話)遠野をオープンさせ、首都圏での遠野のPRに大きく貢献していただいた。
全国津々浦々、各市町村にはそれぞれの地域資源がある。遠野はいま、民話という無形の資源に加え、昔からある南部曲り家と馬、木材という有形の三つの地域資源にこだわりながらまちづくりを進めている。それは、遠野ふるさと村であり、遠野馬の里であり、遠野地域木材総合供給モデル基地の整備であり、二十一世紀に花開く内発型の産業おこしである。
とはいえ、社会情勢の変化に対応した施策も必要不可欠である。昨年にはインターネットホームページを開設し、世界へ向けて情報の発信を行いつつ、地域内の情報化のためのCATVの整備も検討している。また、かつて市で賑わった中心市街地の再生を目指し、下一日市地区土地区画整備事業にも着手し、文化の香る街並みがお目見えする日も近い。
加えて近年、グリーンツーリズムにも取り組んでいる。来年には新たに二軒の農家民宿ができる動きもあり、遠野の観光は「見る」観光から「体験する」観光に脱皮しつつある。
日本列島改造や高度経済成長、そしてバブル経済と、この四半世紀ぐらいの間に、日本は急速に大きな変化を遂げてきたが、このスピードに追いつくことができず、一歩も二歩も遅れをとりながら歩んできた本市にとって、バブル経済崩壊の影響もほとんどなかった。逆にその国民的反省として、物の豊かさよりも心の豊かさを求める傾向が強まったことは、本市にとって追い風が吹き始めている感がする。
これはまさに、イソップ童話のウサギとカメの競争のようなものであり、一周遅れのトップランナーである。
せっかくの地域資源であり宝である民話と『遠野物語』である。ますます大切に、さらにこだわりを持ち保存し活用することにより、全国の遠野ファンに、もしかしたらいまでも本当に山奥にはマヨイガが存在し、カッパや山姥、雪女たちが活躍し続けているのではないかというロマンいっぱいの遠野を、いつまでも愛し続けていただけるようなまちでありたいと考えている。
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