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食と健康を考える会 母の味でまちおこしを 郷土料理と「ふるさと薬膳」を |
山梨県北巨摩郡小淵沢町、八ケ岳中信高原国定公園南麓にひらける雄大な小淵沢高原は、鬱蒼たる森林と山稜に咲く豊富な高山植物がみごとに調和している。また、高山植物では、日本の三大宝庫のひとつに数えられている。
この恵まれた自然の地に郷土料理と薬膳のレストランを経営している女性グループの「食と健康を考える会」(田中洋子会長)を訪ねてみた。
レストランでは、地元に伝承されてきた郷土料理を掘り起こして開発した「ふるさと薬膳」が目玉。材料の有機野菜や低農薬のコメは、自分たちで栽培。調理、接客、経営まで一手にこなしているという。町では、「母の味でまち興しを」とこの女性グループの力に大いに期待している。
会のレストラン名は、「森樹(しんじゅ)」。八ケ岳山麓の自然環境にみごとにマッチしたネーミングである。平成八年七月のオープン以来、多くの食改善グループや農業技術改善グループなどの団体が視察に訪れている。
「食と健康を考える会」では、農林水産省からリフレッシュビレッジ事業の指定を受けた小淵沢町が、第三セクターを設立し建設した温泉宿泊施設「スパティオ小淵沢」が契機となって設立された。約千五百メートルをボーリングして出た温泉は、ナトリウム、塩化物、炭酸水素泉でミネラル分が高密度でとくに消化器系によく、「延命の湯」と名付けられている。これは、八ケ岳連峰の観音平に湧いている甲斐の名水「延命の水」にちなんで名付けられた。
町では、ここを拠点に「都市と農村の交流と食と健康の里づくり」という構想を掲げた。そこで地元の婦人会など二十三の活動団体からなる女性連絡協議会の中から自分たちの手で郷土料理のレストランを出してみたいという有志により、当会は設立された。メンバーは、現在七十二人。全員が小淵沢在住の婦人たちである。会は素人ばかりのため、接客マナー、薬膳の勉強から手打ちそばの体験など専門家の指導や研修を精力的に受けてきた。
食材を作る生産部、調理を担当する加工部、郷土食の研究や特産品の開発をする郷土食部、接客や薬膳の勉強をする学習研修部、そしてそば打ち体験などの体験施設を検討する体験工房部の五つに分かれ役割分担を担い、これに田中会長ら五人の執行部でレストランを運営している。
レストランで提供する料理は、農薬をできるだけ使わない地元産の農産物による郷土食と食事内容で病気を予防しようとする薬膳料理の二本立て。
中国で古くから言われる「医食同源」。日本でも「食はすなわち薬なり」という言葉があるように「薬膳理論をもとに小淵沢に昔から伝わる郷土食をより心身によく、より美味しく味わってもらいたい」(田中会長)という発想から生まれた。また町内では、数多くの山野草が自生し、県営の八ケ岳特用・薬用植物園の整備も進められており、薬草は身近な存在であったことも薬膳という発想につながったという。
現在、薬膳の専門家をコンサルタントに迎え、心臓・肝臓・腎臓・胃腸・肺の五臓に効く五種類の定食を用意している。「健康にとって一番大事なのは、旬のものを食べること。旬の野菜も変わるので、季節によってメニューを変えていく」と田中会長は言う。
五種類のメニューのうち、肝機能に良い薬膳定食をいただいた。虹鱒の梅酒煮・秋野菜の炊き合わせ・モロヘイヤのかき揚げ・くことリンゴのあえ物・湧水豆腐などの献立であった。薬膳というと、漢方薬を連想する方もいるが、特有の風味というものはなく、滋味深く、素材の新鮮さがわかる料理であった。「生命を養い、健康を維持するための料理」というキャッチフレーズどおりに感じた。
食材として使う有機野菜や低農薬のコメなどは、農地を所有する会員が栽培に取り組むほか、たらのめ、くき、こごみ、くこなどの豊富な地域の資源である野生植物を採取しており、食材の大半を自給している。そして八ケ岳の深層から湧き出る地下水を使って自分たちの手で調理する。このほか、特産品の開発や農業体験やそば打ち体験などの体験施設の研究にも力を入れている。
会員は経営に関して全くの素人ばかりのため、オープン前から研修会や勉強会を行い、田中会長らの執行部が、県の中小企業団体中央会のアドバイスを受け、事業を展開している。当面は、第三セクター「スパティオ小淵沢」が整えた施設や備品を借り受けて経営しているが、独立採算が最終的な目標であり早期の法人化を目指している。会員の共同出資による企業組合の形での法人化を検討中である。
「事業を継続していくためにも、しっかりした基盤をもって取り組んでいきたい」という意欲と、「伝統料理をもっと多くの人に食べてもらい、残していきたい。ふるさとの味を再発掘して、それを提供したい」(田中会長)という郷土への思い入れが根底にあり、会員の一致団結した姿勢がうかがえる。
町のCATV事業を担当している「にこにこ すていしょん」の中森チーフプロデューサーに話をうかがった。中森さんは、二年前、東京から小淵沢に移住されてきた、いわゆるIターン組である。小淵沢の魅力を「甲斐駒ケ岳と八ケ岳の大自然と首都圏との絶妙な距離(二時間程度)、豊かな文化性、おだやかな町民性」と語った。
現在、「食と健康を考える会」に視点をあてた番組を検討している。
女性ならではのセンスを生かして事業を興す例は全国的に増加しており、地域づくりの面からも、そうした女性たちが重要なポイントとなるだろうと考えている。CATVの番組により同会の活動を積極的にPRしていきたい意向を語ってくれた。
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