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『イギリスの園芸療法』 |
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JTB海外旅行虎ノ門第一支店支店長 |
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小林英俊 |
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平成八年十月、岩手県東和町に日本で初めて園芸療法のためのモデルガーデンが開園された。
園芸療法は、今日、欧米を中心に広く認められつつある療法で、園芸を利用してリハビリテーションの手助けをしたり、高齢者の機能の衰えを少しでも防ごうというものである。もちろんフィジカルな面だけではなく、メンタルな面での効果もおおいに期待されている。花好きの日本人には、比較的受け入れやすいのではないかと思い、実態を知りたくて先進地のひとつイギリスを訪ねた。
ロンドンから北西へ車で二時間、コベントリー市の郊外にライトン・オーガニック・ガーデンがある。二十エーカーの広い敷地は、ハーブ・ガーデン、ローズ・ガーデン、装飾用キッチン・ガーデンなど二十三の特色あるガーデンに区分されており、あちらこちらで中高年の夫婦が楽しげに散歩している姿がみられる。その一画にスペシャル・ニーズ・ガーデンと名付けられた園芸療法専門の見本園がある。
この見本園の責任者で、イギリス園芸療法協会から派遣されている、園芸療法士マクビティー氏によれば、ここでも園芸療法のモデルプログムを実施しているが、家庭に取り込むための参考に訪れる人が多く、夏季には、ここの案内で大変忙しいそうである。
庭の中ほどに、高さや形の違ういくつかの花壇がある。大人が腰掛けて作業がしやすい六十センチのもの、車椅子での作業がしやすい六十〜六十五センチのもの、大人が立って作業しやすい高さのもの、またどこからでも手が届くように三角形にしたものもある。
それぞれの花壇にはトウ・ホールと呼ばれる窪みが造られていて、つま先を花壇の下に入れ、体を預けて作業がしやすいように配慮されている。また、車椅子でも曲がりやすいように花壇の角は落としてある。ちょっとした知恵や工夫で、すべての人があまり不自由を感じずに園芸を楽しめるようになっている。
奥のほうには、視力が衰えた高齢者も楽しめるセンサリーガーデンが設けられている。花壇は七十センチほどの高さで造られており、車椅子に座ったままでも草木の臭いを嗅いだり、植物に触れたりできるようになっている。
入り口には、小さな噴水が設けてあり、ここでも車椅子のまま、水に触れたり小石の感触を楽しんだりと、心憎い演出がなされている。
マクビティー氏が園芸療法で最も大切にしていることは、「いかにエンジョイさせるか」だそうだ。とにかく植物に興味をもってもらい、それを媒体に会話が生まれること、そして植物を世話する喜びや生きがいを感じてもらうことが園芸療法の大きな効果だという。「次に体の機能を回復させること」とマクビティー氏は続けた。植物を一生懸命世話しようと残存機能を動かすことがリハビリや老化防止に役立つのである。
実際、氏はハンディキャッパーの家五〜六カ所を巡回訪問したり、市内のデイケアセンターと、高齢者住宅が一体化した施設で園芸療法のワークショップを行い、彼らの機能回復の手助けをしている。
ケアセンターの施設に付随した温室でのワークショップを見学する機会を得たが、氏の指導のもと数人の高齢者が一緒になってビニール袋の堆肥や苗木を喜々として運んでいた。
温室内に並べられた寄せ植えの鉢をみながら、「生き物である植物を育てる楽しみをもつことでメンタルな満足が得られるのです」と氏は締めくくった。
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