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鳥海山の肖像権 |
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前山形県遊佐町助役 現消防庁消防職員企画官 |
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金澤和夫 |
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山形県遊佐(ゆざ)町の小野寺喜一郎町長は、とらわれのない自由でユニークな発想の持ち主である。
出色なのは、国道バイパスに架かる橋の名称決定に際し、上りと下りとで運転者の目に入る景色が全く違うのに着目して、ひとつの橋について二つ、上り下り別々の名称をつけることを主張した(建設省の了解が得られず実現しなかった)ことであるが、もうひとつ、鳥海山の「肖像権」に関するコメントもなかなか大胆なものであった。
地域間競争の中で、地域の魅力を対外的にアピールするため、各自治体ともマスコミを使った広報や取材誘致に懸命の努力を行っている。そうした状況は十分ビジネスの種になるようで、鳥海山という魅力的な素材を抱える遊佐町に対しても、町をPRする企画の売り込みは頻繁であった。
これに対して「町民の税金を投じてまで鳥海山を宣伝するつもりはない。それより町民の宝である鳥海山をタダで映像や写真にして営業に使うのは問題。肖像料を払え」というのが主張の要点である。
もちろん、冗談である。本気で言っていたら町長が務まるわけがない。でも、なかなか立派な冗談だと思うのは、この主張に時代の流れを読みとったうえでの真実が込められているからにほかならない。
ひとつは、自然食品ブームやアウトドア志向に、そして環境に対する意識の高まりにみられるように、ブナの天然林、雄大な雪渓、清冽(れつ)な湧水の川とそこをさかのぼる鮭といった鳥海山の資源は、現在ではきわめて価値の高いもので、決して安売りする必要のない財産だという認識である。
もちろん、鳥海山に限らない。ホンモノの山や森、海岸、農村はますます少なくなると同時に、都市住民のますます求めるところとなっており、それだけ価値を増しつつある。それはひとときの流行ではないであろう。いまだにホンモノを残している田舎町が、田舎であるがゆえに、かえって強気に出られる時代を迎えているのである。
もうひとつは、今日ではこうした豊かな自然は決して「自ずから然る」ままに残っているのではなく、その地に住む人びとの努力に、多くを負っているのだという主張である。これは単なる精神論ではない。
鳥海山のお花畑が荒らされないためには、ちゃんとした登山道を造らなければならない。湧水を守るためには森林を公有化して、手入れをしなければならない。砂浜には養浜事業や清掃、松林には松くい虫防除、減反のなかで田園風景を守るには景観作物の植え付けなど、いずれも手間と金がかかるのである。
わが国の財源配分は、道路や公園のように「造る」行為に対しては手厚いものがあるが、昔からあったもの、自然のものを「守る」行為に対しては評価が薄いと言わざるをえない。「全国の田舎よ団結せよ。持てる財産を高く売ろう。来訪される都市住民から、入山料、入森料、入浜料、入村料をいただこうではないか」
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