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鳥取県智頭町
酒蔵支援からまちづくりへ
「杉の雫・吟醸の会」を通したまちづくり

鳥取県ジゲおこし団体連絡協議会代表幹事

安藤隆一

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●●●大成功だった「第二回全国酒蔵トラストサミットin智頭」

 参加都府県二十、参加団体十二、参加人員三百人を超え、予想をはるかに上回る大盛況のうちに幕を閉じたサミットであった。そして何よりも、このサミットのメーンテーマである「酒づくり・人づくり・まちづくり」の議論を通して、私たちの運動が「酒蔵支援」から「まちづくり」へと進化していることを確認できたことが大きな成果であったといえる。
 お招きした講師陣は、「泥酔の美学」から「ほろ酔いの楽しみ」への社会の変遷を分析された武庫川女子大学教授の高田公理さん。「酒づくり」と「人づくり」を両方実践しておられる新潟県の平田大六さん、世界を駆けめぐるフリージャーナリストの勝谷誠彦さん、「森林交付税」の提唱者で有名な和歌山県本宮町長の中山喜弘さん、中国から「日本酒とお菓子」の研究で日本大学に留学中の燕満紅さん、酒蔵で働いたこともある水博士の広島電機大学教授の佐々木健さん、そして「酒蔵を通した地域づくり」リーダーの世古一穂さんなど、非常に多彩な顔ぶれであった。
 サミットと前後して、智頭町の酒蔵に特設スタジオを置いて、全国二十一民放FM局をネットした「ヒルサイド・アベニュー」という三時間番組を買い取って、全国に向けて「智頭町やサミット」を発信したり、酒をテーマにした芝居、大阪から智頭までの地酒列車、酒蔵見学、山仕事体験ツアー、稲の交流会などこれまたいろいろのイベントを開催した。

●●●ことのおこりは「お酒」

 美味しいお酒の三要素は、水・コメ・杜氏といわれている。この智頭町は杉の町として知られ、古くからこの杉の美林が質の良い豊かな水を確保してきた。しかし、近年林業が不振で、このままいくと山林の保全が困難といわれている。そこで、この町にある造り酒屋諏訪酒造の南条倫夫さんが、「酒を飲んで、森を守ろう」と、始めたのが「杉の雫吟醸の会」。現在会員は全国に約五百人。会費は一万円で、会員は特別に造られた美味しいお酒が飲め、会費の一部を「森を守る」ための運動の基金として積み立てるというシステム。
 会としては、今年で四年目を迎え、「水や森」をテーマとしたシンポジウム、N響の三人のメンバーを招いた「杉の雫コンサート」、山仕事体験ツアー、地元林業研究会への援助などの活動を行っている。
 最近会の中で「水や森を守る」のは林業支援だけでよいのかという意見も出てきた。中山間地域の森を守るのは、もちろん林業の活性化も必要であるが、他の産業も(とくに農業が)活性化して、そこに人びとが住んではじめて可能ではないかというのである。この智頭町には昔は酒米を作る農家がかなりあったと聞くが、近年は皆無となった。ところが、「杉の雫吟醸の会」の酒を地元の酒米で作ろうということがきっかけとなって、地元農家の酒米作りが増えているという(食管法も新食糧法となり、直接酒蔵と農家との取り引きも可能となってきたことも有利に働いている)。 
 いずれにしても、町の農業の活性化につながってきたわけだ。

●●●広がる交流と連帯

 酒というものは、飲み過ぎなければコミュニケーションの手段としてほんとにいいものだ。一杯飲めば初めて会った人でも十年来の友となる。「酒蔵トラスト」の先輩として、指導をお願いした「成政トラスト」の谷本亙さんとの出合いが、北陸地方との交流のきっかけとなった。
 とくに富山県のコロンブス計画との交流は、鳥取県の地域づくり運動である「ジゲおこし」の現在に大きな影響を与えているといってもよい。個人的なことを言わしてもらえば、筆者も彼の紹介で「民間主導の地域おこし」を模索する石川県地方課の北川係長や、地域での新しい価値の創造を目指す滋賀県の「淡海文化」の推進役・滋賀総研の秦、奥野両研究員など、これからの「地域おこし」の新しい波となるであろう人びととのつながりをもつことができた。
 また、酒米を通した地域交流も始まった。智頭町で栽培された酒米「玉栄」の種もみを富山県井口村の「井口吟醸椿の会」へ送り、このグループが生産した「玉栄」を原料に富山県の酒蔵で仕込んでもらった「峰椿」というお酒もできた。この井口村の会は、昨年もこの酒米が作られている田を見学に智頭町を訪れているし、今年のサミットにももちろん参加してくれた。将来は、この「玉栄」の原産地の滋賀県と三者で「玉栄」連合などで全国に売り出したらと考えている(現在全国でこの酒米を作っているのはこの三県のみ)。

●●●酒蔵を核とした地域づくりよ永遠なれ

 この中見出しは今回のサミットの「智頭宣言」の最後のフレーズである。筆者は、鳥取県の地域づくり協議会の代表幹事であると同時に、「杉の雫吟醸の会」およびサミットの事務局長でもある。またサミットは協議会の後援事業でもあった。そして単なる名義後援ではなく、協議会が全力を上げてその応援に取り組んだ。智頭町役場が共催団体のひとつであったにもかかわらず、町外の協議会参加団体のメンバーが多数、スタッフとしてかかわってくれた。
 これまで「酒飲み」というと何か不真面目な輩と思われがちであったが、「ほろ酔いを楽しみ」ながらの地域づくりというのはどうであろうか。しかめっ面の「ねばならない」地域づくりから、「人生を面白く、楽しみながら」の地域づくり、「酒をキーワード」とした地域づくりに「新しい風」を感じるのは私だけであろうか。


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