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富山県福光町 酒蔵支援と地域グループ 成政トラスト吟醸の会 |
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(財)地域振興研究所 |
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谷本 亙 |
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成政酒造のある富山県福光町は県西南端に位置し、石川県金沢市と県境を接している。町内には昭和四十年代前半までに酒蔵が二軒あったが、現在は成政酒造だけになっている。酒蔵は市街地から車で十五分ほどの医王山山麓の舘地区にある。
酒蔵の水源は医王山の山腹より流れ出て、福光町内の水道水源にもなっている「槍の先」の水である。森林のエキスを出している「山のだし」で旨酒が仕込まれる。
しかし、昭和五十年代に入り、五百石の生産量をできるだけ維持しながらも、需要が停滞し、生産量は停滞、やや下降気味で推移してきた。このままいけばいずれ危機的な状況を迎えていたかも知れない。
さて、酒蔵トラストは醸成するための前段階の話がある。開始の前年、いまは東京麻布に雪を持っていったり、雪中貯蔵酒を造ったりしていることで知られている、岐阜県河合村に、学生のときからお世話になっている縁がある筆者とともに、地元舘地区の若者数人がむらづくり会議に参加した。
そこで見て、感じた衝撃は次の日、筆者を囲む会議が招集され、村で何かをしなければという衝動に変化した。
そこで、地区の財産である成政酒造に目が向けられた。本当の酒を飲むシンポジウムというものを村でやることになった。背後の山の名前から「医王トピアシンポジウム」が開催され、さらにその実行組織が誕生してむらづくりの核に、地区を見直す運動として続いている。
いまから思えば、「医王トピア」の運動はその後、酒蔵トラストの世話人を供給するインキュベータの役割となり、松谷杜氏はそのシンポジウムで酒の解説をしながら吟醸酒を仕込んでくれていたのである。
基金をつんで酒を仕込んで受け取る。一言でかたづけられるが、酒蔵トラストのノウハウを構築するためにはさまざまな試行錯誤と時間をかけている。そのようにしてノウハウを洗練し、蓄積によってどこでもすぐにでも始められるようになっている。
昭和六十一年の三月の終わりには劇的な出会いがあった。富山市内で酒の小売店を営み、酒蔵を回りながらアドバイスし、埋もれた地酒を積極的に世に出していた寺島圭吾さんである。
彼はただ吟醸酒を購入するだけではなく、次を造るために一人ひとりが資金を出せば、自然保護のトラスト運動のようにおもしろい酒造りができるのではないかと考えていた。
寺島さんは酒づくりの面からの採算制の検討、そのシステムの構築とPR活動を筆者に託された。
そして半信半疑の山田和子社長に申し入れて銀行口座を開いて、成政トラスト吟醸の会(以下トラスト)システムが始まった。発会式には県内でさまざまに活動している驚くほどたくさんの人が集まった。
当時のものは一人一万円(現在一万四千円)で三本もらえるシステムであり、基本的に小売店を通じて配達される。
もうひとつ交流という概念が加わっている。それは、酒は人を集めて楽しくさせてくれるということである。
さらに、六十一年七月には明治年間に建てられた酒蔵そのものの改造にも踏み切った。また、二階には宴会などや成政トラスト吟醸の会で使用することを見越して、コンベンションルームも設置した。現在でもイベント、会議、打ち合わせなどに活用されている。その次の年に出てきた吟醸酒は全国新酒鑑評会で金賞を受賞した。
酒蔵トラストは第三者としてかかわる世話人の存在なしでは続かない。世話人の魅力と酒蔵の魅力との相乗効果である。
成政トラスト吟醸の会世話人は、ボランティアでかかわる。企業サラリーマン、団体職員、役場職員などさまざまな人がいる。しかも、それぞれの本業の特性を活かしたかかわり方をしている。これまで役場職員でも地域活性化に直接かかわりのある課に属する人はいないものの、結果として活性化につながるボランティアにかかわっていることになる。
現在十人前後の世話人が企画、酒の発送、冊子編集、会員募集、お客さんの接待などに忙しくかかわっている。
異業種交流のようにまわりを包み込むような人の輪が、酒蔵にエネルギーと情報をたえず与えつづけていることは酒蔵にとっては心強い。近年は全国酒蔵トラストグループとの交流も増えてきている。
交流もさかんになった。それは昭和六十三年から始まった富山県コロンブス計画(以下コロンブス計画)との関係を抜きにはできない。地域で活躍する任意のグループに注目し、それを支援していくことから地域の活性化を考えていく事業である。コロンブス計画には当初からトラスト会が参画している。
運動はさまざまに飛び火して、酒米五百万石での水とコメにこだわる、いわゆる「地米酒」を提案創造したり、有機無農薬米の生産グループの委託醸造を行っている。酒蔵の生産数量と商品数も年々増加してきた。商品にはなんらかのかたちで世話人会がかかわるなど、酒蔵とトラスト会の関係も密接になっている。
さらに、隣の井口村のグループが村の酒として地元米で造ったコメでの委託醸造を要望してきた。これは酒蔵がない地域の酒を出すという定義をつけて「地域PB」と名付けた。
また、秋田の美山錦を使った富山の酒のラベルのデザインを鳥取の人が行うなど、日本海を縦断するような企画の酒も出現した。まさに酒米と酒蔵、世話人を通じた強固で柔軟なネットワークが構築されている。
トラスト会員は七年四月現在の会員数は七百人以上となっており、北海道から沖縄まで会員を網羅してかなりな規模の会となっている。
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