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岐阜県河合村
雪にこだわる村の雪中酒
村おこし実行委の発案で

河合村企画商観課

中矢正志

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●●●雪を逆手に村づくり

 河合村は、岐阜県の最北端に位置し、富山県利賀村と接し、周囲を急峻な山々に囲まれている。泉鏡花の小説『高野聖』の舞台となり、奈良・唐招提寺の襖絵の題材となった「天生(あもう)峠」をはじめとする、美しい自然環境を太古の昔から受け継ぐ村である。
 しかしながら、特別豪雪地帯である本村は、冬期間における除排雪の煩わしさ、交通の不便さなどによって、雪に対する問題を抱えてきた村でもある。
 昭和三十年代までは、雪を利用して手漉き和紙、木材の伐採・搬出、木炭の搬出など住民の生活と雪との調和があった。しかし経済の高度成長は、これらの生活構造を一変させてしまい、「雪さえなければ」という被害者意識だけを残してしまった。
 このような意識を改革する手法として、現在の住民生活にマッチした施策、しかも意識的に雪との調和を図る施策の展開が必要となってきた。被害者意識の強かった雪を逆手に取り、天からの贈物として積極的利雪、親雪活動を展開し、都市との交流や新たな産業おこしを図りながら、新しい雪国文化の創造と過疎からの脱却を目指しているところである。

●●●雪を資源に都市との交流

 村が「雪」にこだわり始めたのは、あるイベントからである。昭和六十三年八月、盛夏に開催された「ぎふ中部未来博覧会」の会場に三十トンの雪を運び込み、真夏に雪国を再現し、併せて雪を利用して抑制開花させた桜、コブシ、チューリップなど早春の花木を雪の周辺に配し、大好評を博した。
 これを契機に、東京都港区麻布に在住の作曲家・故いずみたく氏の助力で東京夏の三大祭りのひとつである「麻布十番納涼まつり」に参加することになり、雪を利用した山村と都市との交流が開始された。

●●●次々と利雪事業を展開

 これ以後、利雪事業を含め、雪を生かした地域づくりへの各種取り組みを次々と展開してきた。「克雪」関係では、道路除雪、屋根雪処理などに対する取り組みを中心に展開しており、「利雪」関係では、飛騨かわいスキー場の整備、雪の保存、夢雪回廊三六五の整備、花木・野菜の貯蔵、雪のイベント利用、そして平成五年から「雪中酒」の販売を開始するようになった。
 当初、雪は牧草地に保存していたが、平成元年の麻布十番納涼まつりでの雪のイベントが、マスコミで大きく報道されたことで「うちにも真夏の雪をぜひ!」という問い合わせが自治体等から数多くあり、雪室を備えた保存施設を造ることになった。
 実のところその当時、雪を利用した各種の試みについて情報収集を始めたばかりであり、雪の保存方法、保存花木の収集・出荷等について十分なデータがあったわけではなく、試行錯誤の状態であった。
 麻布十番納涼まつりでは、村の特産品販売のほかに持参した雪で冷やした缶ビール、生酒を販売しており、雪で冷やした酒は、氷水や冷蔵庫で冷やしたものより、舌ざわりやノドごしが良いとの評判になり、できたての生酒を雪で保存してみたらどうだろうかということになり、それを実行するべく準備に取りかかった。

●●●飛騨かわい・雪中酒の誕生

 ところが、村内には酒の醸造元がないため、隣接の古川町にある醸造元のうち一社と提携できることになり、平成五年二月搾りたての生酒(七百二十ミリリットル)五百本を試験的に雪室に保存し、七月を待つこととなった。
 雪室内は室温零度、湿度約九五%に保たれ、雪の中でどのように熟成されていくのかに注目が集まった。
 この事業推進の中心となったのは、商工会員を中心とした「村おこし実行委員会」のメンバーである。
 七月に雪室から取り出し、関係者に試飲してもらったところ「生酒特有の風味がよりまろやかになるようだ」と、それぞれ好評を得ることができた。
 平成六年に通販の免許を取得し、その年の二月に千五百本を保存し、酒の名前も文字どおり「飛騨かわい・雪中酒」と名付けた。
 風味を損なわないように出荷を夏場の三回だけに限って、通信販売の募集をしたところ大好評となった。この通販が大好評となった要因として、保存した雪を発泡スチロール製の箱に生酒とともに詰め、さらに三月ごろから雪室で抑制栽培した桃の枝を添えて、夏場に咲かせようとしたアイデアが受け入れられたようである。
 そして平成七年には、醸造用の水は村内の天然水を利用することとなり、醸造本数も三千本にし、今年度も同本数を醸造した。
 この雪中酒に人気があるのは、一年で一番寒い時期にしか味わえない生酒を真夏に味わえることと、雪や桃の花を添えているため、清涼感あふれるお中元商品として価値があることがあげられる。なお価格は二本入り五千二百円、一本入り三千五百円である(いずれも送料込み)。
 −天然の雪室が育てた芳醇無比の味と香り、冬にしか味わえないしぼりたてを真夏に雪と共にお楽しみください−をキャッチフレーズに始めた「雪中酒」は、ようやく軌道に乗りかけたところであり、さまざまな課題も山積みとなっている。
 しかし、「雪」をテーマにして村おこしをしている当村にとって「雪中酒」は、まさに、「雪にこだわる村の雪中酒」なのである。


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