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福島県喜多方市
歴史的町並保存と
有機農業の里づくり

合資会社 大和川酒造店代表社員

佐藤芳伸

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●●●町並保存運動と蔵の会

 前社長・佐藤弥右衛門の発案で昭和五十二年から、市民運動として市内に残る蔵の保存と再生を提唱し、いち早く酒蔵の見学態勢を整備、市内の取り壊されようとする蔵座敷の移築再生を自ら実践し、市民と行政に蔵の歴史的価値と美しさを再認識させた。また、全国町並保存連盟の理事として、全国の歴史的町並保存運動の各団体の支援にも力をそそいできた。
 喜多方市の町並保存運動は、弥右衛門が昭和五十二年に喜多方のれん会(老舗十五店舗)を発足させ、商業と町並保存運動とを両立させてきた。現在、蔵の町喜多方の観光は、当社をはじめとし市内の数軒の酒造蔵元も、のちに酒蔵を観光客に開放するようになったり、味噌・醤油の醸造元も数軒見学できるようになってきた。
 地場産業としての酒が、その酒蔵の環境を保存し、再生し、利活用することによって市民の意識も向上し、観光商業型の個性的なまちとして活性化が進み、観光だけでなく、酒、ラーメンをはじめとする地場産品が、多く求められるようになった。町並保存の運動は、現在、「蔵の会」(会員六十五人)に継承されて、新たなまちづくりと活性化への広がりとなり始めている。

●●●蔵の町「喜多方」の醸造文化

 「喜多方」は飯豊山系から流れる伏流水に恵まれて、現在十二の酒造蔵元がある。
 会津盆地中央部の水稲は、豊かな自然環境の恩恵を受け、作況もよくそれが醸造業の振興を助けてきた。各農家は穀類の生産や養蚕をよく行い、貯蔵庫としての「蔵」を各戸が所有し得るほど力があり、街道に市が立ち、農産加工物資を背景に商いのまちが成立してきた。
 町の商人は、その流通で財をなし、蔵を造りまちの繁栄に寄与してきた。現在もまちの所々に残る蔵を町並みとして保存し再生し「蔵の町喜多方」はまち全体が生きた蔵の博物館として評価されている。また最近はラーメンでも有名になり年間で百万人の観光客が訪れ、活気に溢れている。 
 大和川酒造店は町の中央部に位置しており、江戸時代の蔵、明治、大正、昭和に造られた七棟の蔵がいまも残り、旧酒蔵は現在「北方風土館」として一般公開を行っている。

●●●大和川酒蔵北方風土館の運営

 旧酒造蔵の跡を大和川酒蔵北方風土館として開放し、酒造・民族資料、農業文化、蔵の文化、ティスティングルームを設置し、豊かな環境風土から醸し出される清酒のショールームとしている。平成三年より仕込み蔵(ファーメントホール)を利用してのコンサートや絵画展、工芸展、講演会をはじめとする催事を行って、地域社会への貢献に力を注いでいる。大和川酒蔵北方風土館の年間の来館者数は全国から十八万人、各種催事で地元から約一万人が参加しており、情報の発信受信の有効な空間として利用している。

●●●醸造文化と農業文化

 当社の酒米は熱塩加納村、熊倉地区、慶徳地区の生産農家三十八戸と契約栽培を行っている。中心は熱塩加納村であり、この熱塩加納村は“有機農業の里”と呼ばれている。
 農協の営農指導部長であった小林芳正氏と私は、収量と収入のみに価値を求めた化学肥料と農薬一辺倒の農作物生産に疑問をもち、地域の反対のなかで、自然環境との「共生」こそ農業の基本であると農協および農家を説き伏せた結果、ようやく現在は、農協も行政も村民も一体になってこれに取り組むことになった。有機低・無農薬米を推進する一方で十年前から、酒造好適米の新品種の導入を図り、いまでは福島県の重要な酒造好適米として使用されている。酒米栽培と有機栽培の出会いが現在の熱塩加納村の高品質の米造りをささえ、また当社のコメ作りが地域と農業の環境保全を推進しているといっても過言ではない。
 酒米作りになぜこだわるのか。農業文化としての「コメ」を確実に醸し文化を伝える「酒」となって、多くの人びとにコメの「いのち」が還流していく喜びがある。そこに厳しい農業環境のなかで金銭だけではなく、収穫を喜びとし誇りを感じている。

●●●都市と農村をつなぐ

ネットワーク「いのち」
 平成五年の秋、当社の発案でネットワーク「いのち」が発足した。この会は有機生産農家二十三人、生産加工会員六者、流通提携会員二者、地元を含む都市生活者三百五十人が会員である。誰がコメを作り、誰が醸造し、誰が届け、誰が食するのかを、お互いの「顔」が見えて「おもい」が届く関係こそ、都市と農村、そしてそれぞれの環境を大事にすることに繋がっていく。
酒蔵環境研究会との交流
 平成三年より毎年、酒研の会員二十人ほどが、春の田植えから秋の収穫までを実施し、冬には収穫された無農薬の酒米で実際に純米吟醸酒造りに取り組む。年五回喜多方へ来て延べ十五日間の滞在。相互に多くの情報交換を行う。
醸造バンク、和蔵会との提携
 農と醸造文化を提案する、酒販店のグループ「和蔵会」(片山雄介代表)の発案で、酒販店が窓口になって都市生活者が一年分のコメを予約する民間版のコメ備蓄システム。そのコメを純米酒の原料米とする。万が一凶作のときは酒にせずに飯米として食べる。また味噌、醤油への選択もできる。会員制。
酒造好適米栽培研究会
 小林芳正氏を講師として大和川酒造店の酒造スタッフと、生産農家、酒販店などが年二回良質な酒米栽培をするための勉強会と交流。
恵比寿講
 当社の年中行事のひとつで、酒造が始まる十一月に、酒米生産者に感謝して恵比寿講にご招待し、酒を醸す人、その酒を届ける人、酒を飲む人の顔や風景を確認する。
都市生活者と農業者の情報交換会
 当社と、ネットワーク「いのち」、JA熱塩加納の組合員で構成される「緑と太陽の会」が、都市生活者の民泊と田植えや稲刈り、蕎麦蒔きなどの農業体験や交流会を行う。


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