平成24年10月特集 スマートシティーを目指して

宮城県東松島市

超高齢化対応や防災が大きな柱
―東松島市が目指す「環境未来都市」とその展望―

東松島市復興政策部復興政策課復興政策班兼環境未来都市推進室 主幹

 谷口 塁

クリックすると画像をご覧いただけます クリックすると画像をご覧いただけます

はじめに

 平成23年12月、東松島市は「環境未来都市」に選定された。「環境未来都市」構想は、政府の新成長戦略に盛り込まれた国家戦略プロジェクトの一つであり、環境問題や高齢化社会、経済活性化などの課題に対応したまちづくりやビジネスモデルの成功例を創出し、国内外に展開させることで、需要拡大や雇用創出などを実現し、その結果、我が国全体の持続可能な経済社会の発展を目指すというものである。
 本市では、未曾有の被害をもたらした東日本大震災からの迅速な復旧とさらなる復興を実現するために「東松島市復興まちづくり計画 あの日を忘れず ともに未来へ〜東松島一心〜」を策定。
 この計画を牽引する「分散型地域エネルギー自立都市プロジェクト」などのリーディングプロジェクトが「環境未来都市」構想と合致したことから、本市の復興まちづくり計画を着実、かつスピード感をもって具現化していくために、「環境未来都市」選定に向けた取り組みが行われたのは、至極自然な流れであった。

「環境未来都市」構想の概要

 本市の目指すべき将来像の実現に向けた課題及び目標は、次のとおりである。
(1)環境(低炭素・省エネルギー)
 目標値: 市内自然エネルギー自給率
 平成23年 1%未満→平成38年 120%
 ・地域独立電源の創出を目指し、「MATSUSHIMA自然エネルギーパーク構想」を実現
(2)超高齢化対応(地域の介護・福祉)
 目標値: 65歳以上就業率
 平成23年 29.29%→平成28年 33.44%
 ・介護、福祉が必要な高齢者への対応を図るため、地域住民相互の高齢者介護、見守り体制を構築
(3)防災(災害に強いまちづくり)
 目標値: 避難所におけるエネルギー自給率
 平成23年 0%→平成28年 100%
 ・地域独立電源を整備し、災害発生時の自立サポート機能を構築して、公共避難所における自立避難生活機能を向上

進捗状況と今後の展開

 「環境未来都市」構想の実現にあたっては、行政だけではなく、民間の力を採り入れる新しい枠組みが必要であることなどから、中間支援組織「東松島みらいとし機構(仮称)」を立ち上げ、今後はこの組織が中核となり、構想実現に向けたさまざまな事業展開を実施していくこととなった。
 機構では、「環境未来都市」構想の改定のほか、実施主体となるプレイヤーの招聘や実施フィールドの提供、産学官民のコンソーシアムによるプロジェクトのコーディネート、そして各プロジェクトのマネジメントなどを行っていく。
 また、実施主体となる各プロジェクトは、「くらし部会」・「産業部会」・「コミュニティ・健康部会」・「エネルギー部会」の4つの部会のいずれかに属し、本機構を稼動するエンジンとなっていく。
 本機構は、本年3月から6月まで開かれた、5名の委員から成る「東松島市復興推進設立準備委員会」において、「極めて先進かつ緻密に練りこまれた東松島市の復興に向けた叡智の結集であり、今後の本市の環境未来都市づくりに向けた戦略上、欠かせないものである」とされた。
 委員会は回を重ねるごとに、広がりの様相を呈し、最終的なオブザーバー参画者数は、デンマーク大使館をはじめ、企業、医療法人など40名を超えたことは、本機構に寄せる期待が大きいことを物語っていると言えるだろう。
 また、並行して、市は「独立行政法人国立高等専門学校機構仙台高等専門学校」、「一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団」、「デンマーク王国ロラン市」、「住友林業株式会社」と連携・協定を締結し、官民一体となった「環境未来都市」構想実現に向けた礎を着々と整えていったのである。

全ては市民とともに

 被災地である本市が、こうした「環境未来都市」構想の実現に向けた取り組みを行うには、確固たる理由が存在する。震災以降に実施された平成23年度東松島市市民満足度調査で、市民が重要度が最も高いと考える項目に「地震、津波、風水害などの災害対策」、次に「高齢者が暮らしやすい環境づくり」、「省エネルギー化や自然エネルギーの活用推進」と続いており、先述した「環境未来都市」構想の3つの柱と合致している。
 この点を見れば明らかなように、本市での「環境未来都市」構想に向けた動きは、決して世論やマスコミなどからの二次情報による機運醸成ではなく、震災を機に、市民一人ひとりが感じ、そして考えた上の切実なニーズから生まれたものなのである。
 太陽光発電をはじめ、バイオマス・風力発電などの再生可能エネルギー導入については、今後、FS調査(実現可能性調査)を実施するとともに、様々な課題を解決し、再生可能エネルギーを導入していく。しかし、これらを導入することのみにとどまることなく、本市の地域特性を最大限に活用し、雇用創出や地域経済活性化につなげていくことが肝要である。
 また、環境配慮型の未来都市を構築するためには、市民一人ひとりが意識を持ち、主体的に取り組むという市民の能動的な姿勢なくしては成し得ない。そのためには、さらなる地域コミュニティ形成や教育の在り方も含めた総合的なまちづくり概念の浸透が不可欠である。
 このように本市では、「環境未来都市」づくりを軸とし、2050年には東日本大震災を経験した世代と次世代が一緒になってまちづくりの担い手となり、自然災害から立ち直った象徴的なまちとして、日本だけではなく、世界各国から多くの来訪者を招き、国内で最も市民が誇りを持ちながら、健康で豊かに暮らすことができるまちづくりを目指していく。