平成23年1月特集 里山の保全・活用と地域再生

京都府綾部市

元気な地域は元気な里山から!
―旧校舎を拠点に地元一体型の里山づくり―

NPO法人 里山ねっと・あやべ 理事・事務局次長

朝倉 聡

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小学校からみんなの学校≠ヨ

「里山ねっと・あやべ」は京都府綾部市で、閉校した旧小学校の施設を拠点として活動しているNPO法人である。綾部市は京都府北部、丹波地域にあり、人口は三万六千人。過疎化対策の「水源の里条例」でも知られる。

その西端の小畑(おばた)地区にあった豊里西(とよさとにし)小学校は生徒数減少に伴い、一九九九年に閉校した。その後は宿泊交流施設「綾部市里山交流研修センター」として改装し、里山ねっと・あやべが指定管理制度のもと、綾部市から委託を受けて管理運営している。

綾部における都市農村交流の窓口のひとつであるとともに、住民にとっては自らが卒業した「母校」である。宿泊や農業体験で訪れる都市住民と、地元住民の双方に活用され、合宿や同窓会、パン焼き、バーベキュー、楽器の練習など、さまざまな形でにぎわっている。

スタッフのひとりである塩見直紀の『半農半Xという生き方』(ソニー・マガジンズ新書)を読んだことで、訪問してくれる人も少なくない。

特に力を入れているのが「綾部里山交流大学」だ。全国広域から講師と参加者を集め、合宿型のセミナー形式で地域づくりや仕事づくりについて研鑽する。いわば小学校が、地域人材育成のための市民大学に姿を変えたわけだ。最近では、京都府職員や綾部市職員など行政職員研修の場としても活用されている。

周辺はなだらかな丘陵に包まれた牧歌的な田園地帯である。主な農産物である米の水田のほか、茶園や栗園も広がるが、農業の主な担い手は高齢者であり、後継者確保は急務だ。村人は田畑の維持につとめているが、どうしても休耕田はある。

そこで私たちは、そうした田畑を活用して、「米作り塾」や「そば塾」を開催している。米作り塾への参加を契機に綾部に移住し、農家になった人もいる。

高台の水田に山水を引き、手作業重視で行う田植え・収穫は楽しく、休耕田を転用した蕎麦畑で白い蕎麦の花が一面に揺れる光景は美しい。

そば塾への参加を通じて綾部に移住してくれた蕎麦職人の指導のもと、育てた蕎麦をみんなで手打ち蕎麦にして楽しむ。蕎麦の茎を燃やせば灰ができるが、この蕎麦の灰汁はこんにゃく作り体験にも使える。

宿泊者の食事は、地元主婦たちの料理グループ「幸風(さちかぜ)」が中心となり、郷土の食材を活用して「おかあさんの味」で提供している。

もちろんご飯は「米作り塾」塾生たちが手塩にかけて作ったお米だ。最近では、宿泊者に限らず地元住民なども気軽に訪れ、地元野菜を活かした料理を楽しめる地産地消のワンデーレストラン「トヨサト食堂」も始めた。

自らこねたパン生地を「石窯」で焼き、焼きたてを食べるパン体験は、集客力の筆頭だ。施設内には最近「薪ストーブ」も設置した。

この石窯や薪ストーブの燃料となる乾いた薪の多くは、地元の村人が提供してくれる。意外と使えるのが、地元特産・丹波栗の栗園から拾ってくる栗のイガだ。

じわじわとよく燃えるので、着火剤として重宝する。このようにして少しずつにせよ天然の燃料循環に寄与し、人の笑顔も広がっていく。

「森林ボランティア」活動では、施設の裏山を舞台として、山道作り、シイタケ栽培、木工品加工や木の小屋作りなどの活動をしてきた。

現在取り組んでいるのが、校庭の隅での「竹炭窯」作りである。風呂の湯船を再利用した設計が特徴だ。里山の植生を浸食していく竹を伐採し、竹炭を焼いて活用し、里山に関する啓発にも役立てていく構想だ。

里山空間をつくるネットワーク

今後は単に学校跡に人を呼ぶのではなく、周辺エリアをふくめた、総体としての里山空間へと人を招く循環づくりについても構想したい。

地元の小畑地区と、隣の福知山市をむすぶ古道・金谷(かなや)峠。昔は盛んに利用された峠道も近年は倒木に埋もれて荒れていた。しかし、地元の酪農家・村上正(まさし)さん(里山ねっと・あやべ理事)は、自分も幼時に歩いたこの峠を再生したいと考え、村人有志とともに生え込みを切り開き、杭で道を補強して古道を復活させた。

それは地元一般のためであるとともに、綾部市里山交流研修センターを訪れる旅人たちに、もっと山に親しんでもらうためでもあった。最近では毎秋、「金谷峠を歩く会」を開催し、色づいた紅葉のなか、綾部市内外からの参加者が秋の里山を楽しんでいる。また峠の麓では毎春、山菜を摘んで料理する「里山山菜まつり」も開催するようになった。

大学とも連携しマツタケ山の再生活動も

このほか、里山ねっと・あやべは立命館大学ボランティアセンターの「地域活性化ボランティア」の受入れ窓口をしてきた。今年、学生たちは「あやべ里山再生プロジェクト」と題し、市内各地で里山再生活動に取り組んだ。

マツタケ山の再生を視野に入れた松苗の植樹や、一面に桜の花開く山を目指した桜の育樹活動、市内の峠道の古道再生などである。里山ねっと・あやべは大学と地元の受入れ団体とを橋渡しする役割だ。大学との連繋だけでなく、企業研修の場として地元の里山を利用し、森林の手入れなども行われるようになっている。このような人と人との関係づくりが、今後の里山づくりを支えていくだろう。

「地域再生は、田畑だけでなく、里山を包含したものでなければならない」―。峠再生を進めた村上正さんの強い信念だ。「里山ねっと」の名前のとおり、学校跡を拠点としつつ、都市と農村の循環、そして人と自然との循環を再構築していきたい。

(※) 里山ねっと・あやべの活動についてさらに知りたい場合は、ホームページ(http://www.satoyama.gr.jp)のほか、前田吉範「里山活用による地域活性化」(『週刊農林』2082号)、幹田秀和「里山活用による地域活性化」(同2083号)、新山陽子「里〜山へ自然と人と活動が融合した里山の再生」(同2085号)を参照されたい。