平成22年9月特集 ICTを活用した商店街の活性化

長野県駒ケ根市・飯島町・中川村

域内の公共汎用カードとして発展
―地域インフラと提携しICTを高度利活用―

つれてってカード協同組合

矢澤哲也

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「つれてってカード」は、長野県南部の駒ヶ根市・飯島町・中川村の三市町村でICカードシステムを運営する商業者の協同組合である。「商業振興を通じた地域貢献」を目的に活動をしている。

一九九三(平成五)年、駒ヶ根市に郊外型大店舗が出店し、その影響で地元商店の売り上げ低迷が続き、後継者の不足や閉店が相次いだ。

世界各地のカード事例を研究

当時、証紙と台紙の紙ベースで運営していた「駒ヶ根スタンプ協同組合」は、平成六年から地域商店街の情報化を検討するため、「カード研究委員会」を発足させ、世界各地のカード事例を研究し、組合のIT化への対応と地域通貨としてのカード運営方法を検討開始した。

二年間の研究の結果、英国スウィンドンで世界初のネット型マネーとして開発されたモンデックスマネーを基本に、地域行政、地元金融機関と連携・協力し、ICカードによる「国内初の電子マネー」をシステム構築した。

その間、地域住民へのサービス向上、地元商店の結束、顧客創造、組織のスキルアップのため、地域内の協力機関と共に「地域情報化委員会」を設立。地域通貨の先進例タイムダラーズ・イサカアワーズ、LETS等の方策を採り入れたカードを商業ベースでの情報化・決済手段から進化させた、地域内で価値創造を行う地域貢献型コンテンツの「コミュニティーカード」を目的とした。

地域内の価値を循環可能なカードシステムで運用し、その基盤を関連組織と連携・活用することで、カード利用は循環的に地域を潤す振興策となる―との理念は、地域内の多くの関連団体にコンセンサスを得ることがきた。

また、関連団体も含めてカード利用の検討を重ね、地域内の住民が何を要望し、何を作り上げていくか、それを知る手段としてこのカードは駒ヶ根市のみならず市外の地域や機関とも連携し、広域な地域貢献が可能であると判断し、組合主導で地域内組織のインフラと提携・協力した「エリア・アライアンス」が実現した。

行政窓口でのカード決済も可能に

平成八年十月、駒ヶ根市全域の商店を網羅する加盟店でICカードシステムを運営開始。同時に行政と連携し、公共機関(病院・文化施設・温泉・交通機関)でのカード利用を行い、地域内の汎用通貨として利便性向上に努めた。また地域金融機関と連携し、それまで未知の概念だった電子マネーの利用を地域の消費者に普及・定着させ、地域内の資金循環を活発化させた。

平成十年には、隣町の飯島町のスタンプ組合と合併、組合・カードの名称も利用者の意見を反映し、「つれてってカード協同組合」に変更した。翌年には近隣の中川村スタンプ組合とも合併し、利用者の利便性を優先し、広域な商業組織として行政区を越えてその利用地域を拡大した。

組合の利用地域拡大とともに、国内初となる行政窓口でのカード決済を可能とし、平成十四年には「IT装備都市実証実験」にてシステムをリニューアルし、行政での福祉サービス及び文書管理システムも搭載した。

平成十九年の第二次リニューアルでは、地方自治情報センターの支援を受けて、全国初となる「標準仕様の住民基本台帳カード多目的利用発行システム」を開発し、関係三市町村で「商店街カード」機能を搭載した「多機能型住民基本台帳カード」を発行。同時にシステムもASP(Application-Service-Provider)の導入でランニングコストを削減し、加盟店も月三千円でカード利用が可能となり、さらに多くの加盟店が加入した。

なお、住基カードへの機能搭載に係わるシステム変更や機器改修については、総事業費六千万円のうち二千万円を組合が拠出、残り四千万円は財団法人地方自治情報センターから補助を受けた。

連携による地域商店街カードの可能性

その結果、住基カードの発行枚数は、翌年には導入前と比較し十倍に増加した。翌年二十年からは近接する伊那市で展開する「い〜なちゃんカード」とも利用提携を開始し、近隣四市町村全地域の利用者は、「つれてって」と「い〜なちゃん」いずれのカードでも共通のポイント・プリペイドカードサービスが利用可能となった。

さらに、平成二十二年には「い〜なちゃんカード」でもこの「住基カード併用システム」を活用し、既存の導入方法より迅速かつ安価に住基カード併用が実施され、標準システム構築補助金の成果が発揮できた。現在、つれてってカードの発行枚数は一万五千八百枚で、発行対象地域(駒ヶ根市、飯島町、中川村)の住民の約三人に一人が所有、地域内小売店の約七〇%(百七十一店)と公共機関十カ所で利用可能である。

地域行政や地元金融機関と連携した成果は、住民票や印鑑証明等行政窓口での発行手数料、病院での診療費、温泉施設の入浴料、高速バスチケット、文化センター利用の支払い等公共施設、交通機関でのカード利用から、信金でのプリペイド優待入金など地域に密着した商店街カードとして「いつでも、どこでも、つれてって」をキャッチフレーズに、十三年間、地域内での公共汎用カードとして活動を展開することができた。

地域の格差なく、利用可能な基盤整備と安心を実感できる地域での信頼関係が構築された現在、組合ではカード利用=地域貢献のスキームをプラットホームとして運用すべく、SC(社会資本)活動を行っている。持続可能な地域社会の構築へ向け、社会資本としてさまざまな活動を推進し、カード事業を通じてCSR(社会的信頼性)を高めている。

環境活動としてエコポイント事業を導入

社会的に環境問題がクローズアップされ、消費者も身近な問題として捉えている状況にあることから、地域貢献を標榜する組合も、そのニーズへの回答としてエコポイント事業を導入した。

これは、駒ヶ根市が取り組んだ「グリーンヴァリュー」制度を活用したエコポイントの流れを汲むもの。太陽光発電やペレットストーブの利用、廃品回収などのエコ活動の一つとして、消費者の環境保護活動に行政がポイントを発行し、加盟店と金融機関支店に設置された端末でカードへエコポイントを付与する―という仕組みだ。

平成二十一年一月から稼動し、地域の環境保護や資源の循環利用に活用している。

環境保護活動では、駒ヶ根市との連携にとどまらず、環境省の「エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業におけるエコポイント交換商品等」に採択され、自治体が発行するエコポイントだけではなく、国が発行するエコポイントでも利用可能となり、今年七月現在、一千万を超えるエコポイント利用が行われている。併せて住宅エコポイントも同様に運用している。

また今年七月からは、総務省ユビキタスタウン構想推進事業の採択を受けて、地域の高齢者の生活利便向上などをめざし、「ユビキタスタウンモデル」となるまちづくりにも取り組んでいる。