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平成21年10月特集 住民拠出の協働型まちづくり
コミュニティ・ユース・バンクmomo(名古屋市)
代表理事
「授業でmomoを知りました。自分から行動を起こすのは大変で、いつも動けずにいました。この出資で私も力になれたらうれしい」(十代・女性)、「持続可能でハッピーな地域に少しでも近づけるよう、地域と向き合う小さな一歩として出資しました」(二十代・女性)、「娘の出産祝いを出資します。子どもの将来のために役立ててもらえたらうれしいです」(三十代・男性)、「定額給付金の使い道を考えましたが、地域や人のためになる事業へ有効に使ってほしいと思いました」(四十代・男性)。
これらは、NPOバンク「コミュニティ・ユース・バンクmomo」のWebサイトに掲載している「出資者の声」の一部である。私はNPOバンクの最大の特徴を、「顔の見える関係の中でお金を融通し続ける仕組み」にあると考えている。
「お金による支援」と聞いて、まず思い浮かぶのに「寄付」と「助成」があるが、NPOバンクはそのどちらとも異なり、寄付ではなく「出資」を集めているため、出資者は請求すれば払い戻しを受けることができる。また、元本割れのリスクもあるため、「自分の大切なお金」という意識を持って、そのお金の行き先に常に着目し続ける。
さらに、助成ではなく「融資」をするため、融資先は支援されたお金を返済しなければならず、返済されたお金は、また別の融資先に循環していく。つまり、NPOバンクの仕組みそのものが、「お金を通して出資者と融資先がつながり続ける仕組み」となっている。
当団体の融資対象地域である愛知、岐阜、三重の東海三県は、経済のグローバル化の進展に伴い、地域コミュニティの崩壊が深刻さを増している。各地の都市部で商店街のシャッター通り化が進み、農村部からは「限界集落」という言葉も聞こえるようになった。
生まれ育ったまちでずっと暮らしたくても、暮らすことが困難なこの時代、自分が望む地域でずっと暮らしていくためには、ずっと働いていくための事業が必要だ。その事業を起こすために必要な人(特に若者=jとお金≠ェ、地域外に流出しているのが各地の現状ではないか。
そこで当団体は、地域の「自分たちの地域は自分たちで担う」という当事者意識を育むために、地域の未来を担う若者たちが中心となって、誰もが大切なお金を出資で集め、持続可能な地域づくり事業に低利・無担保で融資をしている(これを当団体ではお金の地産地消≠ニ呼んでいる)。今年八月末現在の出資者(正会員)数は三百三十三(個人三百十九人、団体十四団体)、出資総額は三千七百七十七万円、融資累計は十件で二千二百万円となっている。
しかし、このお金の地産地消は、「出資を集め、融資を行う」だけでは実現できない。出資者からの志金≠ェ地域の中で生かされるためには、実は融資をしてからがスタートで、その後も融資先をつかず離れず見守って、必要な場合は手助けをする必要がある。
そのため、当団体では「融資」という資金的な支援≠フほかに、@メディア機能(当団体のネットワークを活用し、融資先に関する情報発信を行う)A場づくり機能(出資者と融資先との対話の場をつくる)―の二つの機能を発揮して、融資後の非資金的な支援≠ノも取り組んでいる。
メディア機能では、会員用メーリングリストやニューズレターなどによる「内部者(出資者など)向けの情報発信」と、プレスリリースや取材対応などによる「外部者向けの情報発信」を通して、融資先の取り組みを積極的に紹介している。
また、場づくり機能としては、融資先にとって最も有効な人材が適切な支援をできるよう、融資先のニーズをテーマに出資者などと直接対話する「momo bar」「momo cafe」「融資先訪問ツアー」「経営戦略会議」などを企画運営している。
こうした取り組みは、出資者の志金≠ェ真に世の中を変える力となるために必要なアクションだと考えている。どの融資先も、完済時の基本的なイメージは「必要な経営資源を自分たちで集められるようになる」ことである。審査からその成長イメージを描き、融資実行後はその仮説を出資者とともに検証していく。融資先にとっては三百人以上の応援団とともに歩むことになり、特に創業期の事業者にとっては心強いようだ。
「momo」という団体名の由来である童話「モモ」を書いた、ドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデは、経済活動の前提条件であるはずの自然資源を破壊してしまう経済システムの矛盾に目を向けて、お金を次のように表現している。
「重要なポイントは、パン屋でパンを買うための購入代金としてのお金と、株式取引所で扱われる資本としてのお金は、二つの異なる種類のお金であるという認識です」(NHK番組『エンデの遺言』より)。
当団体が扱っているお金は、「パン屋でパンを買うための購入代金としてのお金」である。昨今の金融不安に象徴されるように、「いつ、どこで、誰が、何をしているか」というプロセス(安全)や納得感(安心)が得られにくい金融を、できる限り見える化≠オようという当団体の取り組みには、生まれ育ったまちでずっと暮らしていくためのヒントがたくさん隠されている。
今後の最も大きな課題の一つは、NPOバンクならではの特性による法律への対応だ。多重債務者の救済を目的とした改正貸金業法は、純資産額を段階的に引き上げることや、信用情報機関への加入などを業者に求めている。
NPOバンクの純資産額は国会の付帯決議で適用除外となったが、信用情報機関への加入義務については未解決で、その加入金や回線開通費などの負担、融資を受けた情報が消費者金融からの融資と同一視されるなど、融資先に不利益を生む可能性がある。
来年六月までに行われる完全施行までに、これらの規制からNPOバンクを除外してもらうために、マスコミや政治家の協力もいただきながら、多くの人にこの問題に関心を寄せていただくことがいま求められている。