平成21年3月特集 平成20年度 地域づくり 総務大臣表彰

団体部門 長野県飯田市

本物の体験へのこだわりが生んだ地域連携
―株式会社 南信州観光公社―

専務取締役

高橋 充

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農家のホームスティに年間1万人超が参加

南信州は中央・南両アルプスの間に天竜川が流れる巨大な谷である。気候は信州地方では最も温暖で、そこに住む人々の気質はとても穏やかである。当地域で、平成八年より飯田市商工観光課観光係が中心となり、体験教育旅行の受け入れに取り組み、平成十三年に当社が設立された。

受け入れ地域は飯田市から下伊那郡全域に広がり、現在年間百十を超える学生団体を受け入れている。

体験プログラムには自然、環境、農林業、味覚、伝統工芸、ボランティア、アウトドアアクティビティ、野外活動、ウィンタースポーツなど様々な分野があり、種目数は百六十五種目を数える。公社は体験プログラムの手配・コーディネート・精算の一切を請け負う窓口として、その責務を果たすべく活動している。

我々の基本的な理念は、地域に暮らす人々の生業や、ありのままの暮らしの中に直接飛び込んで、援助や指導を受けながら利用者と受入者が体験を共にし、その体験交流を通して互いに感動し、高まり、そして人間関係の構築の好機となるものが本物の体験である、ということである。

体験プログラムの中でも最も利用の多い農家へのホームステイは、南信州の十五市町村・二十九ブロックに暮らす四百五十軒を超える協力農家の方々に支えられ、現在年間七十校、約一万五百人を受け入れている。一般家庭に入るので様々な制約はあるが、現在の若者達に不足しがちな人間関係構築能力を高めるには絶好のプログラムである。

受け入れの基本方針は、あくまでも普段通りのことを行い、特別なことはせず、ありのままの生活に入るということだ。この原則を、農家はもちろん、学校側にもきちんと伝えることで、その効果は一層高まる。

体験プログラム通じ広がる地域内の連携

当社が設立された二〇〇一年当初は受け入れ農家が四地区七十軒程度だったが、同年春に前年の四倍の二十校を受け入れたことで、一カ月半で十六地区、二百五十軒に増えた。

このことは単に受け入れ地域が広がっただけでなく、後に公社と受け入れ農家の間に入り調整を行う「地域コーディネーター」が自然発生的に生まれることにつながった。

その他の分野では、乗馬牧場の理解と協力で、単なる引き馬に留まらない本格的な乗馬の体験を行っているほか、ラフティングや渓流釣り、マウンテンバイクなどは地元設立の会社やNPOが担っている。また、そば打ちや五平餅などの味覚体験では、地域興しグループや地元農家のご婦人たちが主体の、特産品加工グループが担い手となっている。

経営は設立以来、補助金を受けずに独立採算で行い、四年目から単年度の収支が黒字に転換した。多くの学生を受け入れることは日本や世界の将来を担う若者たちの教育にも貢献することであり、責任は大きい。

数多くの地域の人々に協力を得ることには、地域イメージを損なうことが許されない厳しさがある。しかし、そのことを大いなる喜びと捉え、これからも取り組んでいきたいと考えている。