![]()
団体探訪 特定非営利活動法人シニアSOHO普及サロン・三鷹
東京都三鷹市
(財)地域活性化センター 編集委員
地域の課題が多様化・複雑化している。高まる行政ニーズに対する有効な施策を打ち出すためには、行政からの視点だけでなく、住民からの視点をいかに取り込むことができるか、また、地域の課題を住民自らが主体的に解決する住民自治の仕組みづくりができるかが、地域の未来を占うカギとなるだろう。そのような中、地域のシニアが主体的に活動する拠点づくりで注目を集めている「特定非営利活動法人シニアSOHO普及サロン・三鷹」が東京都三鷹市にある。
三鷹市は、都心から西へ約十八キロ、東京都のほぼ中央に位置する。都心周辺のベッドタウンとして、昭和三十年代には大規模な公団住宅や都営住宅、民間アパートなどの建設が進み、現在は人口十七万人のまちである。このまちで、主にシニア世代を対象にパソコン教室や起業支援を通じて、活動と交流の場を提供しているシニアSOHO三鷹の久保律子代表理事を訪ねた。
シニアSOHO三鷹は、「シニアの地域ビジネス参加のプラットホーム」を目指して創設された団体だ。プラットホームとは、企業OBや子育てを終えた主婦が、それぞれが持つ経験と人脈、そしてノウハウを自分たちが住んでいる地域でビジネスとして活用するための活動と交流の場を提供することだという。始まりは平成十一年までさかのぼる。当時の代表理事であった堀池氏はじめ、市内在住の同じ大学の同窓会の集まりがきっかけとなって、始まった。翌同十二年にはNPO法人格を取得、同十七年に代表理事に就任した久保さんの下、紆余曲折を重ねて発展を続けた。
シニアSOHO三鷹は、「地域社会貢献」「自己実現・情報交換」「ひと味ちがうパソコン教室」の三点に重点を置いて取り組んでおり、一件百万円以上の事業はプロジェクト方式としている。プロジェクトとは、理事会に諮り認定された事業のことで、会員の中からプロジェクトリーダーを募り、プロジェクトリーダーが責任を持って実施する方法をいう。プロジェクトリーダーは、事業に協力してくれるメンバーを募り、責任を持って事業を遂行させていく。売り上げの二〇%はシニアSOHO三鷹に、一〇%はリーダーが、一〇%は営業担当者に、そして残りの六〇%をメンバーに支払う方法で運営されている。今回の取材は、代表的な取り組みである「三鷹いきいきプラス」「わくわくサポート三鷹」についてお話しを伺った。
三鷹いきいきプラスは、三鷹市から受託している事業だ。「ちょっとお願いしたいことがある」「ちょっと教えてほしい」「一緒にできる仲間がほしい」といった願いのある人と、仕事をしたい人(それに応じることができる人)とのマッチング事業である。現在、「いきいきプラス登録会員」は約千五百人。依頼の内容は、パソコンから折り紙教室、料理や日曜大工など様々だ。久保さんが特に強調していたのは、依頼者と受託者が双方同意の下で実施していること。登録情報を単に機械的に結び付けるのではなく、必ず事務局が間に入って内容を審査した上で、当事者同士の協議をセッティングする。そのため、現在までトラブルもなく、順調に活用されている。
次に、わくわくサポート三鷹はハローワークの仕事を、おおむね五十五歳以上を対象に就労支援を実施している。厳しい雇用情勢の中、若者に混ざってハローワークで仕事を探すシニア層の心的負担は大きい。そこで、これらの人を対象にした求人情報提供を行うため、専門のキャリアカウンセラー四人を社員として雇っている。この種の事業をNPOが運営しているのはシニアSOHO三鷹だけである。
シニアSOHO三鷹がこれらの事業を、行政(または民間企業)から単に委託を受けるのではなく、事業の運営の仕方などについて行政(同)と協議を重ね、納得のいく内容で受託している。「既存の制度をいくらで受託する」のではなく、「どこまでならできる」「何ができない」「いくら経費がかかる」といった内容を含め、地域の実情について、行政(または民間企業)と徹底的に協議し、無理のない活動を心がけているからこそ、継続してサービスが提供できるのだ。そして、それを可能にしているのは、会員一人ひとりが持つ経験、人脈、技術、知恵とノウハウが集積され、なおかつ、それを生かしているからだと久保代表は語る。
順調に見える活動にも悩みはある。プロジェクトリーダーに立候補する人がいつも固定されてきたことだ。自由な組織を標榜して設立された会だが、売り上げが伸び、いつしか企業のような組織となってしまった。もともとは、企業OBなどが持てる経験や人脈を活用するプラットホームを目指していたのに、プロジェクト活動だけに参加する会員は少なくない。そのため、同じ事業のリーダーは連続三年までとして、多くの会員が参加できるように人の異動を敢行している。常に新しい風を入れる、一度は離れて俯瞰する立場から物を見る意識を持たせるなど、組織が停滞しないための策を取っている。
次に行政との距離について、危機感を抱いているという。シニアSOHO三鷹は、三鷹市と緊密な関係を築き、今日まで発展してきた。売り上げは三鷹市、民間企業、市内外のTMOなどから約三〇%ずつだったのが、近年では同市からの受託が八〇%にも上る。お得意先を作ることは大切だが、一部の顧客頼みとならないようリスクの分散が急務の課題だ。
シニアSOHO三鷹の取り組みで優れているのは、先にも述べたように、百三十人にも上る会員一人ひとりが持つ経験、人脈、技術、知恵とノウハウを余すところなく活用していることだろう。しかも、活動開始当時から、「読み・書き・そろばん」の感覚で、「これからの時代はパソコンを活用できたほシニアSOHO三鷹の取り組みで優れているのは、先にも述べたように、百三十人にも上る会員一人ひとりが持つ経験、人脈、技術、知恵とノウハウを余すところなく活用していることだろう。しかも、活動開始当時から、「読み・書き・そろばん」の感覚で、「これからの時代はパソコンを活用できたほうがいい」からと始めたIT教室が、今では数多くの事業を受託するまでに成長している。それも、ただ受託するのではなく、いかに地域に根差した取り組みとなるかを行政と対等の立場で、「何が出来るのか」「どんな付加価値が付けられるのか」を意識し、実行しているところが特筆すべき点ではないだろうか。行政がコストダウンのために民間活力を利用することは、近年主流となってきたが、単なる下請け企業であってはいけない、そこに地域の知恵とノウハウが埋め込まれていなければならない、と久保代表は語った。
これまでで挙げた取り組みのほかにも、市内小学校で児童の安全を見守る学校安全推進員「みたかスクールエンジェル」など、地域に根差した取り組みにも力を入れている。初めは、照れていた子どもたちも毎朝あいさつを交わすうちに、笑顔が見られるようになったという。
近年、団塊世代の大量退職が叫ばれているが、いわゆる二〇〇七年問題ではシニアSOHO三鷹の会員は増加しなかったようだ。これは、年金が受給される年齢まで再就職先に勤める人が多いからだそうだ。しかしながら、少なくとも近い将来には、これらの人たちが地域に帰って来ることが見込まれる。今後もこのような市民団体が設立され、シニア世代を含む住民が地域の中で活躍できる場が多くなれば、自ずと地域が元気になっていくのではないだろうか。
| ★団体プロフィール★ | |
|---|---|
| 設立年 | 2000年11月 |
| 設立・運営主体 | NPO法人 |
| 代表者 | 久保 律子 |
| 会員数 | 129人 |
| 事務局連絡先 | 〒181-0013 東京都三鷹市下連雀3-38-4 三鷹産業プラザ310 |
| 電話 | 0422−40−2663 |