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長崎県崎戸町
スケッチによるまちづくりを宣言
炭鉱の遺構など崎戸の財産を活用

崎戸町教育長

佐古寶松

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 崎戸町は、長崎県の西に横たわる西彼杵半島の北部に位置し、北緯33度線上に連なる四つの島からなる人口二千四百人足らずの少子、高齢化の町である。現在は架橋によって本土と陸続きになっているが、人の出入りも少なく紺碧の海と炭鉱遺構が独特のハーモニーを醸し出す不思議な雰囲気を持っている。
 この町は江戸時代、鯨組の納屋場として栄え、先進地紀州とともに捕鯨業の二大中心地であった。また明治になると炭塊が発見され明治四十年十一月に石炭を採掘してから、昭和四十三年三月の閉山の日まで日本屈指の石炭の町として栄えた。当時は、人口も二万五千人を数え、狭い商店街に人があふれていたという。

町おこしは内からの力で

 振り返ってみると、人口数百人の寒村が鯨でわく捕鯨基地となったのも、黒ダイヤの町としてにぎわったのも、外部の力によるものであった。
 鯨の姿と石炭の輝きが見られなくなったとき、町民は自立への模索をはじめた。そして、「第三の町おこしは内からの力で」を合言葉に商工会青年部や町おこしグループを中心に諸々の町おこしイベントに挑戦してきたが、継続できる事業とはなり得なかった。
 そんな中、平成十二年四月に就任した新町長は、「潤いのある町づくり」を行政施策の一つに掲げ、その具体化を教育委員会に指示した。教育委員会は、その具現化策として、本町には「紺碧の海」をはじめ「美しい船だまり」「大正時代の風情ある家並み」「炭鉱遺構」など他の自治体にはない風景がある。こうした町の財産に着目し、これを売り物にした特色ある事業の開発に取り掛かった。専門家のアドバイスを受けながら到達したのが「スケッチのまちづくり」であった。この案が、町おこしグループの協議の場に持ち込まれ、熱い議論を経ながら推進構想が具体化されていった。
 <推進構想>
1)趣旨
 全町民が「スケッチのまちづくり」という目標を共有し、協働することによって町の活性化を図る。

2)町の将来像
(1)町民の一人ひとりが、わが町に自信と誇りを持つ。
(2)文化薫る町、心がいやされる町になる。

3)推進戦略
(1)スケッチ環境が整った町をつくる。このためスケッチ場所を整備するとともに、スケッチポイントや案内板を設置する。また、絵画専門指導員を配置し、児童・生徒および町民への出前講座を開く。
(2)本事業は、町民主体で推進する。
  推進委員は、公募によって選任し、学校を拠点に、スケッチ交流活動を展開する。
(3)交流人口を増やす。県下に呼び掛けてスケッチ大会を開催し、入選作品の移動展覧会を行う。美術館を開館し、個展やグループ展を開催する。

4)推進ネットワーク
推進ネットワーク

 町の活性化に期待を寄せていた町長並びに町民は、この構想に賛同し、十三年五月十日、町議会において「スケッチのまちづくり推進町」の宣言がなされた。

町民主導の地道な実践

 スケッチのまちづくりを町民主導の事業とするため、中核となる「スケッチ推進委員」を公募によって選任することにした。応募者は、会社員、自営業、主婦、教員など八人であった。これに教育委員会推薦の二人を加え、計十人に推進委員を委嘱した。なお、広い視野からの助言を得るため、地元新聞の論説委員、長崎大学美術担当教授および長崎県美術協会事務局長の三人を顧問として迎えた。
 また、スケッチ・ポイントの除草などの環境整備や美術館の管理などは、町民のボランティアで進めることとし、ボランティアを募集したところ、高齢者も含めて二十七人の応募があった。この本事業は、自前で推進することを基本とし、広報活動や人的・物的支援を県にお願いすることとした。
 これまでの主な取り組みとして、スケッチ場所の除草作業を行ったり、スケッチ案内所の開設、スケッチポイントの看板を設置するなど環境の整備を図ったり、スケッチマップやスケッチ大会のポスター配布などの啓蒙活動を実施した。このほか町民を対象とした絵画教室、児童生徒のための夏休み絵画教室、崎戸スケッチ大会がある。十三年度には四百六十人、十四年度には五百八十人がそれぞれ参加、好評だった。
 同大会終了後、崎戸町だけでなく、佐世保、長崎の両市でも入選作品の展覧会を開催した。また、民家を活用した「崎戸ふるさと美術館」もオープンした。

予想以上の効果

 事業を行うに当たって推進委員はオリジナルな企画づくりに燃え、環境整備などの作業にも積極的である。十四年六月に開館した「ふるさと美術館」は、老人会、婦人会などのボランティア活動で管理・運営されるなど、当初の狙い通り、町民主導で進められている。
 また、町内三カ所で開催される絵画教室には、多くの町民が喜んで参加しているほか、町立の四つの小中学校の児童生徒は、絵画への関心も高まり、うち二つの学校は、県教育委員会の図工・美術教育の研究指定を受けることになった。ふるさと美術館には、作品が替わるたびに町民が入館して鑑賞を楽しんでいる。
 さらに崎戸スケッチ大会には、町外からも三百人を超える人びとが参加しており、スケッチ目的の来町者は、年間五百人を超えるようになった。ふるさと美術館には、町外からの来館者が多く、交流人口が増加するなど予想以上の効果が上がっている。
 スケッチに関するテレビ放送は、地域活性化センターが十四年八月に提供した番組で取り上げられたり、新聞報道によって、町民一人ひとりがわが町への誇りを持つとともに、来町者との会話によって元気づけられ、美術館でのボランティア活動を楽しみにしている高齢者が増えてきた。

さらなる飛躍を求めて

 潤いのあるまちづくりの具現化策として二年にわたり実践してきた「スケッチのまちづくり」は、飛躍の三年目に入る。この事業をオンリーワン、ナンバーワンにしたいと考え「ローカル」と「オリジナル」を全面に出して実践してきた。
 今後は、それに「グローバル」な視点も加え、十五年度は(1)画題となる「炭鉱遺構」の保存活動(2)全国のスケッチ(絵画)の町と連携する「スケッチ・サミット」の開催(3)姉妹校、中国上海市西小学校との「児童作品」の交流―といった新たな取り組みを計画している。


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