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兵庫県養父町
温かい心を育む童話のまちづくり
「一日五分読んであげて」
プロジェクトを展開

養父町生涯学習推進室係長

橋本義弘

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 養父町は兵庫県の北部、中国山脈に連なる山岳から流れる円山川を本流とする大屋川、建屋川、米地川の各支流から開けた山村で、面積の約八割が山林原野で占められ、残るわずかな耕地に大小四十の集落が点在している。昭和四十五年以前には一万人以上あった人口も、今では九千人弱と過疎化が進むとともに、少子高齢化の進行も著しい。

人の花咲く、心豊かな町

 こうした中にあって、住民一人ひとりが持っている能力を開花させることで心豊かなまちをつくろうと、「人の花咲く心豊かな養父」をテーマに住民と行政が協働でまちづくりを進めている。現在、町内五つの小学校区にある公民館は、住民自らが運営し、自分たちの住む地域を楽しくしようとさまざまな教室や事業が展開されている。
 そして、行政はそのような自主的な活動を情報提供や財政的支援などの側面から支援を行っている。これは、行政と住民が協働で、学習を通して人が育つ「学習コミュニティ」をつくり出そうとするものである。「童話のまちづくり」もこの一環として取り組んでいる。
 養父町童話のまちづくり事業は、平成十三年十月、町議会が「あたたかい心を育む童話のまちづくり宣言」を行ったのをきっかけに、生涯学習推進計画の自ら学べる人づくり施策の一つとして、平成十三年度に「養父町童話のまちづくり推進計画」を策定した。この計画に基づいて、まちぐるみの童話の読み聞かせや読書活動の普及を昨年四月からスタートさせた。

読書環境と課題

 読書は、子供が言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をよりよく生きる力を身につけるうえで欠くことのできないものだが、近年子供の読書離れが進んでいる。
 この要因としては、テレビ、ビデオ、テレビゲームなど、安易で刺激的な遊びが増えたこともあるが、それ以上に、周囲の大人たちの読書離れが進んでいることの方が大きく影響していると思われる。家庭などできちんと読書習慣をつける働き掛けができていれば、子供たちは成長するに従い、本に親しんでいくものである。
 子供たちの生活環境の中で、親や近所の大人が本に親しまないばかりか、本を読んでいると無駄な時間を過ごしているかのような雰囲気があれば、子供の読書習慣は育たない。まず、大人が努めて読書に励み、読書を「大切なこと」にしていくことが求められている。
 このため、大人自らが読書の大切さを再認識するとともに、町ぐるみで読書活動への支援や雰囲気づくりを推進していくことが必要である。
 また、いくら子供に読書を勧めても、身近に本がなければ読むことはできない。本町には図書館がないので、学校以外の機関や地域に図書を増やしたり、住民参加で借りやすいシステムをつくったりして、本を身近なものにしていくことも必要である。
 さらに、住民が主体となって、童話の読み聞かせや童話の創作、本の紹介、子供が本に関心を持つような集いなど、多様な活動を生み出していくことが求められている。こうした住民活動を喚起し、育成していくために、読書活動に関する知識や技術を学べる機会や場の充実を図っていく必要がある。

三つの視点

 童話のまちづくり事業の目標は、住民みんなが参加することによって、子供たちが楽しみながら読書に親しむ環境や活動をつくり出そうとするものである。したがって、計画では「子供と大人がともに育つ、あたたかい心を育む童話のまちづくり」を基本理念に据えて推進している。
 そして、この実現を図るため、「読書活動に対する支援のある町」「図書が身近にある町」「読書活動に関する多様な学習機会のある町」という三つの視点に沿って、行政と住民が共同で取り組みを推進している。
 また、これらの行動計画を進める牽(けん)引的な活動として「一日五分読んであげてプロジェクト」を展開している。これは、住民が自主的に一日五分、子供に本の読み聞かせをしていこうというもので、本計画の基本的な流れを生み出すことが期待されている。
 この事業の推進を担うのは、「養父町童話のまちづくり推進会議」である。メンバーは、保育所、保護者会長、幼稚園、小中学校、PTA会長、校区公民館長、読み聞かせボランティアグループ、行政などである。また、これを「保育所・幼稚園推進専門部会」「小学校・中学校推進専門部会」「地域推進専門部会」に分けたことで、実際に動きやすく連携しやすいものとなった。会議では、計画を具体化するための取り組みが議論され、それが実践へと結び付けられている。

動き始めた取り組み

 まだ、これといった成果は上がっていないが、一つの目標ができたことで、いろいろな動きが生まれてきた。
 学校では、読書タイムの設定による読み聞かせを行うとともにPTAと連携して講演会を開催している。保育所や幼稚園では、日常の読み聞かせとともに、図書便りの発行、親子集会などでの童話の読み聞かせ、父母を対象にした講演会などの取り組みや、お便りを使って保護者へのPR。また、地域および校区公民館でも、行事に合わせて子供たちに地域の人たちによる本の読み聞かせや文庫の整備が行われている。
 もちろん、町の公民館でもお父さんと一緒と題した童話を聞いたり工作をする教室、手作り絵本教室、絵本の朗読と歌の集い、読み聞かせグループによるケーブルテレビを使った童話の朗読の時間の放映などが行われている。
 童話のまちづくり事業は、住民のみなさんの自発的な取り組みと行政が行う環境と、条件整備が両輪となって進めていかなければならない。
 今、動き始めたばかりで暗中模索の段階であるが、少なくとも共感してくれる住民が増えてきつつあることを感じる。息の長い話であるが、読書が町の文化となり、子供にとっても大人にとっても温かい心が育つ人づくりの一端になることに期待をしている。


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