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北海道東川町
写真文化を核としたまちづくりを展開
美しい風景を守り育てる条例を制定

東川町写真の町推進室係長

片山孝司

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 東川町は、北海道のほぼ中央部、旭川市に隣接し、雄大な自然に恵まれた大雪山国立公園のふもとに広がる人口七千五百人余りの町である。
「人と自然がおりなす輝きの大地ひがしかわ」を基本理念に、大雪の裾野に広がる恵まれた自然環境を活かし、「日本の米づくり百選」にも選ばれた農業、旭川家具の製造や木工クラフトをはじめとする木工業、さらに、大雪山連峰の主峰旭岳のふもとに広がる「旭岳温泉」や日本の滝百選にも選ばれた羽衣の滝で有名な「天人峡温泉」などの観光を基幹産業とした〈お米と工芸・観光の町〉、そして〈写真の町〉としてまちづくりを進めている。

自然と文化の調和目指す

 東川町が「写真の町」を宣言したのは、昭和六十年のこと。当時、各自治体では一村一品運動として特産品開発がしきりに進められていた。
 わが町ではモノづくりではなく、文化による新たな歴史を今住んでいる人がつくり「これが東川」といえる個性豊かな町をつくろう、二十一世紀に向かって長い視野と展望に立って、自然と文化が調和する世界に開かれたまちづくりを推進しようと考えたのが「写真の町」だった。
 では、なぜ「写真」なのか。実は、「写真のまちづくり」という発想と実践が世界に前例がないため、「町の名前を有名にしたい」という目的が単発的なイベントより達成しやすいこと。カメラの世帯普及率は当時八七%であり、どこの家庭にもカメラがあり親しみがあること。そのうえ子供でも高齢者でも扱うことができる。そして何よりも写真は人間のあらゆる行為とかかわることができるといった理由などから「写真の町」とした。
 大雪山国立公園の雄大な自然と景観を住民の手で守り育て、写真をモチーフに写真写りの良い町(被写体となる町)、写真写りのよい人づくり、モノづくり(いきいきとした人づくり・モノづくり)を進めようと、写真文化を核としたまちづくりをスタートさせた。
 この宣言により町の存在と自分らしさをつくり出し、町自体が強い発信力を持って、町のイメージを確立していくことを狙いとした。

国内を代表する東川賞

「写真の町」を宣言し、その証しとして広く写真文化に貢献するため、まず自治体初の国際写真賞「東川賞」を制定し、未来に残すべき優れた作品(作家)を顕彰することとした。また、毎年夏には国内外の第一線で活躍する写真家などをゲストに招いて、写真展・フォーラム・スライドショー・ワークショップなど写真に関する催しを行う「東川町国際写真フェスティバル」を開催している。
 さらに写真の町十年目の平成六年からは、全国の高校生を対象とした「写真甲子園」を新たに加え、写真を通じて多くの人が出会い交流を図る場を提供している。
 当初、あまりにも専門的でかかわりづらいと敬遠がちであった住民も、写真甲子園が始まったころからは、運営面や食事の準備、ホームステイの受け入れなどのボランティア活動を通じて年々かかわりが深くなってきている。
 そして、写真の町としての十八年間の取り組みにより「写真の町=東川町」が定着し、知名度も高まり、「東川賞」は国内を代表する権威ある写真賞として位置づけられるまでに成長してきた。

さまざまな取り組み

 一方、写真を核としたまちづくりの面においては、写真の町実行委員会の中に住民で構成する〈企画委員会〉を組織して、住民の意見を反映できる体制を整え、写真写りの良いまちづくりを進めるためのさまざまな事業を展開してきた。
 まず、商工業の分野においては、写真写りのよい個性的な商店街づくりを進めるため、既存の看板をできるだけ取り外しオリジナルの手作り木彫看板、フラワーポットや写真展示などで町並みづくりに取り組んできたほか、郵便局・銀行・ホテルなどでも写真展示のためのギャラリースペースを設けるようになった。
 木工業を中心とした進出企業も、写真の町を意識して景観の保全に配慮した社屋建築・緑化植栽事業を積極的に進めている。
 また、農業においても、ただ単に農産物を生産するのではなく、心の安らぎや潤いある景観を創造するため、芝桜やりんご並木・ハーブや花などを植栽する取り組みが行われ、このことが評価され、農林水産省が主催する「農村景観百選」にも選ばれた。
 さらに、学校教育の中では、撮影会や夏休みの思い出を「写真絵日記」として発表している。地域でも、花いっぱい運動が展開されたり、老人クラブなどで写真サークルができるなど、写真の町を通じてさまざまな取り組みが行われてきた。
 このようなまちづくりを行ってきた東川町にも、近年心ない不動産業者による林地開発が行われたり、粗大ゴミが不法投棄されるなど、環境破壊が進んできている。このままでは、写真写りの良いまち、美しい東川の風景がなくなってしまうという危機感から、「次世代に継承する美しい東川の風景づくり」を基本理念に「美しい東川の風景を守り育てる条例」を定めた。
 この条例によって町、町民など、事業者および土地所有者の責務を明らかにして環境保全と景観形成を進めるために、必要な事項を定めた。条例施行により開発事業に関して条例趣旨に即した指導ができることになり、開発事業の適正化が期待できることになった。また、美しい風景づくりに貢献した町民団体や事業者に対する表彰など町民意識の高揚などさまざまな期待ができる。

高まった住民意識

 文化によるまちづくりの効果測定は非常に難しく、写真の町を始めたことにより、以前と比べて観光客がいくら増えたとか、経済効果がこれだけ上がったといったように一口で数値やグラフに表せるものではない。また、町民からも写真の町の事業がよく分からない、あるいはどうかかわったらいいか見えないといった意見もある。
 しかし、これまで写真に関する事業を実施してきたことで、東川町は「写真の町」という自治体としての個性がつくり上げられ、文化的な町というイメージが浸透し、写真の町としての知名度・認知度が向上してきた。
 さらに、何にも勝る大きな成果として、住民の文化に対する意識や「自分の町」という意識が強くなり、「美しい東川の風景を守り育てる条例」の制定など自分の住む町の素晴らしさを意識し、伝え、たくさんの東川ファンや応援者を生んでいることはうれしいことである。
 また、このことにより、優良田園住宅などの宅地分譲も順調に推移し、とくにクラフトや陶芸といった創作活動に携わる移住者が増え、人口もわずかずつではあるが増加していることは、写真の町効果の表れであると評価されている。
 これからも写真の町を通して、住んでいる人に自信を与え、わが町東川という意識を喚起しながら、まちに対する「誇り」と「愛着」「夢」が持てるよう、また、これからの時代を担う子供たちが胸を張って自慢できる「魅力あるまち」「全国ブランドのふるさと」づくりを住民と協働でつくり育てていくことが写真の町の目標である。


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