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ヨーロッパ地域づくり視察団報告

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地方行政の構造改革、循環型社会の形成など
特色ある事例に学ぶ

(財)地域活性化センター企画調査課課長

大野明男

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 (財)地域活性化センターの平成14年度ヨーロッパ地域づくり視察調査団は、昨年10月7日から18日までの12日間、「地方行政の構造改革・循環型社会の形成・自主的な産業振興・ITによる地域振興」をテーマに、イギリス、ドイツ、イタリアおよびフランスの4カ国を訪問した。地方自治体職員、民間企業社員、団体職員で構成する総勢20人(団長=牧之内隆久地域活性化センター常務理事)は、訪問先で特色ある地域づくりを視察した。

イギリス・ニューハム区
行政評価の導入


 最初の訪問国であるイギリスでは、大ロンドン都ニューハム区を訪れた。同区は、ロンドン市街から八キロほど東に位置する人口二十五万人弱の住宅地域と工業地域が混在したバラ(Borough)と呼ばれる自治都市である。最近は空港の整備や大規模展示場の開設などで急速に開発が進んでいるものの、かつての中心産業であった造船業が衰退し、構造的な不況により失業率も高く、一九九八年にはイングランド、ウェールズ内で三番目に貧しい自治体であった。
 ブレア政権が自治体改革政策の柱として打ち出した「ベスト・バリュー(BV)」は、行政サービスの質的向上を図るため、イギリス国内における標準値や評価指標を用いて、各自治体に行政サービスの現状を自己評価させ、継続的な改善を義務づけるシステムである。
 一九九八年から同区は、BVのパイロット自治体の一つとして「コストの五%削減、質の一〇%向上」という基本目標を掲げ、改革に取り組んだ。これにより一千万ポンド(約十九億円強)の経費節減を達成。その浮いた経費をIT関連事業などの優先度の高いサービスに再投資している。
 同区のBV実施における留意点は、(1)住民が何を望み、どのような改善を求めているのかを詳細に把握したうえで将来を見据えた達成すべき指針を明確に策定する(2)見直しは継続して行い、挑戦・比較・協議・競争の四つの視点で評価する(3)改善がみられないものについては、その原因を徹底して追求するとともに優先項目を設けて実施する―ことである。説明してくれたBV担当マネージャー・メイヤー氏の「新たな試みを行う際には、最初から完全にできるとの過度な期待をせず、積極的に住民参加の機会を設け、住民とともに行っていく決意がなによりも重要である」という一言には「はっ」とさせられた。

ドイツ・パッフェンホーフェン市
環境に優しいまちづくり


 次に訪れたドイツでは、ビールの祭典「オクトーバーフェスト」の余韻の残るミュンヘンに滞在し、そこから北へ五十キロ離れた近郊の丘陵地帯にある人口二万二千人のパッフェンホーフェン市を訪問。環境への取り組みを視察した。
 ドイツ連邦政府は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)排出量を二〇〇五年までに一九九〇年水準の二五%を削減するという目標を掲げ、循環型社会形成に向け取り組んでいる。
 こうした中にあって市は、自然破壊を極力抑えるため、周辺の環境に応じ建物の規制を行うとともに街路樹の整備や歩行者と自転車の専用道路の設置などエコロジカルな面に重点を置いたまちづくりを進めている。また、CO2の削減策としては市街地への乗用車の乗り入れを抑制するため、菜種油を燃料とする市バスを運行。家庭へのソーラーシステム設置費用の助成も行っている。
 さらに二〇〇一年に新型高効率の木質バイオマス火力発電所の操業に踏み切り、ここからの熱エネルギーを地域に供給することで、従来熱源としていた石油・ガスなどの消費を減らすことに成功。この結果、連邦の目標を上回るCO2排出量削減三二%を達成している。
 説明役の市長代理カール氏の「当市は州都ミュンヘンに近く、何かと影響を受けやすい。まちづくりに当たっては市のアイデンティティを確立し、豊かな自然環境を損なうことがないよう配慮している」とのコメントが印象深かった。

イタリア・コモ市、ミラノ県ブリアンツァ地区
自主的な産業振興


 三番目の訪問国イタリアでは、ロンバルディア州の州都ミラノ市を拠点に中小企業における自主的な産業振興・人材育成などを視察した。
 まず、ミラノ市の北東約百キロにある湖水地方コモ市に行き、この地域の伝統産業である絹織物・染物産業の実情を視察するために、アキッレ・ピント社を訪れた。
 地元の中堅企業である同社は、一九三三年にシルクの織物工場として設立。時代の変遷とともにシルクに加え、綿やウール、化学繊維などさまざまな織物の製造と染色、デザインプリントまでを幅広く手掛ける家族経営の会社である。
 顧客のニーズを迅速にキャッチし、短期間で商品化のうえ、市場に送り出すようにするには、最新のデジタル技術は欠かせないことから、日本製のコンピューターも導入して対応している。誇りある伝統産業を継続していく中においても、新しい素材やデザインはもとより時代に即した新しい技術を活用していくことが、会社の存続発展に必要不可欠であるとのことであった。
 このほかコモでは、国立絹織物高等専門学校も訪問した。また、ミラノ市近郊にあるブリアンツァの家具メーカー・ブズネリ社を訪れ、在宅勤務制度を取り入れた家具製造状況を視察した。
 イタリアには、大企業は少なく、多くの中小企業が国の産業を支えている。今回の二社はいずれも多品種少量生産に対応している事例であり、中小企業が多い日本にも共通する部分があり参考になった。

フランス・イッシー・レ・ムリノ市
ITによる地域振興


 小雨降るパリ市街地からセーヌ川沿いをバスで約二十分。イル・ド・フランス州オー・ド・セーヌ県にあるイッシー・レ・ムリノ市は、人口約五万三千人のパリ市南西部に隣接する近郊都市である。同市のITを活用した行政についての基本的な考えは、(1)市内のあらゆるところであらゆる年齢層の市民がITの恩恵が受けられる(2)市民に対し新しいサービスを提供する(3)市行政の近代化と市民の行政参加の向上を図る―ことである。
 そこで市では、一九九六年に地域情報化計画を定め、ホームページの開設、ケーブルテレビによる市議会の中継などの電子サービスを開始するとともに市民がインターネットに容易にアクセスできるような環境づくりを目指している。たとえば三歳以下の子供に早期からパソコンのある生活に慣れさせる効果を狙ったサイバー託児所開設や、就学児童には一クラスに二台の高速大容量ネットワークパソコンの配置。また、高齢者向けにはパソコンや電子メールの使い方を身をもって体験できるようにサイバー・ティー・サロンを設けている。
 さらに市はEUの電子投票プロジェクトにも参加し、インターネットによる選挙を検討中であるという。
 日本においても地方分権、少子高齢化などの流れの中で、住民の利便性や行政サービスの向上、地域の振興などさまざまな行政課題を解決する手段としてITの活用は極めて重要である。同市の取り組みは、今回の調査はもとより、今後においても大いに参考になると思われる。
 以上、今回の視察調査の概略を述べたが、この結果を今後のまちづくりの参考としていきたい。



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