平成十四年度地域づくり海外調査研究事業報告(上)
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ニューヨークのコミュニティガーデンに学ぶ |
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(財)地域活性化センター企画調査課副参事 |
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川井美華 |
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(財)地域活性化センターコンサルタント業務課副参事 |
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米澤桂子 |
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(財)地域活性化センターでは、平成十四年度地域づくり海外調査研究事業として、平成十四年十月二十七日から十一月二日までの七日間、アメリカ東部地域で現地調査を行った。本号と次号でその概要を紹介する。
コミュニティガーデン(以下、CG)とは、直訳すれば「地域の庭」である。具体的には、「人びとが野菜づくりや庭づくりなどのガーデニング活動ができる共有の場所」といったところだ。アメリカには、近隣住民による共同ガーデンから、スクールガーデン、高齢者施設やグループホームのガーデンなど、実にさまざまなスタイルのCGが存在する。
アメリカでも特に活動が活発な都市の一つ、ニューヨーク市(以下、NY市)では、一九七〇年代、不法投棄などにより地域に悪影響を与えている空き地を借り受け、CGに造り替えるという市民活動が活発になっていった。
現在では、地域ごとの特性や、ニーズに対応したスタイルで展開されており、ガーデンを中心とした新たなコミュニティの形成に寄与している。
今回、NY市のCG支援組織「Green Thumb(グリーンサム)」とグリーンサムが支援しているいくつかのCGを訪問し、調査を行った。
Green Thumb
「Green Thumb」は、園芸の才能のある人に対し敬意を表して、「You have a green thumb.」といった表現に使われる言葉である。
グリーンサムは、NY市公園局の所管組織として一九七八年に活動を開始した。オープンスペースの保存・活用を通じ、市民活動を活発にし、地域活力を生み出すことを目的として、CG活動を行う地域ボランティアの支援をしている。スタッフはディレクターを含め十三人で、全員NY市の職員である。
現在、グリーンサムに登録されているCGは約七百あり、基本的な資材(土、材木、堆肥など)の無償提供、技術指導および専門家の紹介、整備に対する補助金の交付などを行っている。これらのCGで活動するガーデナーは約二万人に上り、国内最大級のCG支援組織といえる。
Clinton Community Garden
クリントンコミュニティガーデンは、喧騒(けんそう)のブロードウェイから徒歩で十分弱、集合住宅が立ち並ぶ人通りの少ない通りに面している。頑丈なフェンスと入り口の大きな鍵に守られたCGは、花壇や芝生がある美しい共有の前庭と、個人菜園用区画百個あまりからなる裏庭で構成されている。
二十四年前、荒れ果てた空き地だったこの場所を地域住民が市から借り受け、CGに再生した。その整備から管理まで、すべて無償のボランティアにより行われている。
前庭では数々のイベントが実施されている。CGが主催する地域住民全体を対象としたパーティーやコンサートなどはもちろん、個人の誕生日パーティーや追悼会なども開催できる。平均月十回程度使用されており、CGは地域住民が集う場として機能していることがうかがえる。
今回インタビューに応じてくれたメンバーがCGの意義として特に強調したのは、第一に、都会の子供たちに「自然界というものの感覚(sense of the nature world)」を教育する場であること、第二に、地域住民が自分たちの住む地域全体を見詰め直し、地域のデザインについて考えるようになったことである。「CGの活動を通じて『住民が自分たちで土地をデザインし、使い、維持していく権利を持っている』という自治意識が高まった」と熱く語っていた。
事例調査から学んだこと
今回の調査において、Clinton Community Gardenのほかにも、食糧自給を主目的とした「Taqwa Community Farm」、JFK高校内のスクールガーデン「Enchanted Garden」、文化イベントを多数実施し、若手アーティストの作品が目を引く「6th&B Garden」など、多くのタイプのCGを拝見した。グリーンサムの支援を受けているこれらのCGから、NY市におけるCGの現状と日本での実施に向けたヒントを学ぶことができた。
(1)CGの活動がもたらす
CG開設の当初の最大目的であった地域の環境改善という課題に協働して取り組む中で、結果として、コミュニティの再生、強化が図られてきている。CGはガーデニングを楽しむ場だけでなく、憩い、交流、食糧自給、教育などといった場を地域に提供している。
(2)市民の活動を支える社会システム
CGの活動の多くは、市民活動に端を発しており、それを柔軟に支える社会システムが存在している。グリーンサムの補助金を例にとってみると、申請要件についての細かな規定はなく、補助金額も個別に計画が立てられるなど、CGごとの目的や地域の状況に応じた支援が行われている。
また、一つのCGに対し、さまざまな支援組織が有機的に連携を図っており、市民側も行政、NPO法人などの多様なチャンネルから複数の支援を組み合わせて活用することができる。
(3)土地用途問題の解決の重要性
CGの土地の多くがNY市の開発部局に属しているため、開発計画が発表されるたびに、行政側と住民側が激しく対立する事態に陥っている。こうした事態に発展した原因は、第一に開発計画が大幅に遅れ、土地の「一時的な」利用を許可した市との当初の約束が忘れられてしまったこと、第二に長い年月の経過に伴い、CGが住民の間に地域資源としての地位を確立したことにある。
CGの土地が民有地であれ、公有地であれ、こうした用途問題を解決しておくことは、せっかくの住民活動をふいにしてしまわないためにも重要である。
日本でのCG活動支援に向けて
社会背景や歴史の違うNY市の事例をそのまま日本に当てはめて考えることは難しい。しかし、CGが地域にもたらす効果に着目し、こうした市民活動を活発にしていくことは、今後のまちづくりの手法として有効ではないだろうか。
環境改善や、清掃・緑化活動などを行う市民活動は現在でもさまざまな形で展開されており、支援事業や制度も多い。こうした既存の事業や制度(緑のまちづくり活動、公園アドプト制度、ビオトープ事業、市民農園制度、学校整備など)において、CGの要素を取り入れることによって、CG活動を通じた新たな地域活動が生まれる可能性を秘めている。
たとえば、公園アドプト制度は現在清掃、除草などの維持管理が主である。これに公園内の花壇づくりなどの活動を加えることで、住民が主体的に取り組める魅力が加わり、参加者の幅も広がるだろう。また、新たな公共施設を設置する際、緑地スペースの一部を市民にガーデニングの場所として開放し、CGにすることも考えられる。
いずれにせよ、CGの活動で一番重要なことは、活動住民の主体性である。こうした活動への支援を行う際には、住民が自由にかつ主体的に活動できる幅を持たせることが大切である。
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