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温泉施設、地域づくりの中核に |
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山形新聞論説委員 |
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岸彰一 |
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地方における地域づくりは、県や市町村を丸ごとエリアとする広大な「テーマパーク」のようなものである。テーマはさまざまだ。東北は残された豊かな自然を活用した例が多い。地球環境の保全が人類に突きつけられた大きな課題として考えられるようになって以来、多くの人たちが自然に強い関心を示すようになり、そのことで、これまで顧みられなかった田園風景や自然景観、昔ながらの食文化などにスポットが当てられ、新たな魅力となっている。
山形県もこうした時代的な背景から、かつては考えられなかったたぐいの「資源」を活用した地域おこしが盛んだ。春の田植え体験は今や名物として定着。首都圏からも多くの中学生や高校生たちが訪れる。泥んこになりながらの苗の手植え。秋には稲刈りもあり、取れたコメで収穫祭といった具合だ。また、県内陸部の最上地域では巨木探しが盛んだ。全国でも指折りの巨木が次々に見つかり、巨木ツアーも企画されるなど「自然王国」のシンボルとして地域の魅力アップにつながっている。
一方、雪国としてスキーやスノーボードなどのレジャー以外は何もなくなる冬でさえ、雪下ろし体験などで都会から若い人たちがやって来る。これらは「作業」であり、奉仕活動ででもなければ、わざわざやって来る人などはなかった。それが今では立派な「観光資源」となった。近年、注目を浴びるグリーン・ツーリズムは、こうした体験型観光の延長線上にある。
山形県の地域おこしの一端は、このような体験型観光に代表されるが、その中核となっているのが「温泉」である。県内には四十四の市町村があるが、温泉は全自治体にある。天童温泉や蔵王温泉、銀山温泉といった古くからの「温泉街」ばかりではない、むしろ新たに掘り出した「温泉地」のほうが数は多い。山形県のキャッチフレーズにも、これまでの「果樹王国」に「温泉王国」が加わり、「山形新幹線でどうぞ!」とアピールしている。
新しい温泉は、竹下内閣のときに全国をにぎわせた「ふるさと創生」一億円を活用したケースが目立つ。共通しているのは低料金と豪華な温泉施設だ。各自治体が公社方式で運営しているのがほとんどで、入浴料金は二百円から三百円。サウナや露天ぶろも付いている。どんな山の中の町や村にもあり、それぞれの地域特性を活かした温泉は終日、多くの利用者でにぎわっている。
たとえばリンゴ産地の朝日町にある「りんご温泉」は、毎日、男女別の露天ぶろと内湯に六十個ほどのリンゴを入れている。香りがよく肌もツルツルになると女性に人気だ。さらに寒河江市の「バラ温泉」、新幹線駅と温泉が一緒になった高畠町の「まほろば温泉・太陽館」、砂ぶろのある戸沢村の「いきいきランド・ぽんぽ館」などユニークだ。
こうした温泉施設が地域づくりの中核になっているのは、一般の観光施設が地元住民の利用とは懸け離れた「来訪者」のための施設になっているのに対して、双方が楽しめる数少ない施設だからだ。
離村を決意した山間地の住民の中には、温泉ができたことでそのまま喜んで住むようになった例もある。施設内では地元の取れたての野菜や果樹など旬の味も並ぶ。
サクランボやリンゴ狩りの後、温泉でゆっくり。渓流づりや山登りの帰りにひとふろ。本格的な健康づくりへの活用メニューもある。幅広い用途の温泉ネットワークは地域財産だ。
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