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高知県 海洋深層水で高知ブランドづくり 関連商品の売り上げ百億円超える |
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高知県海洋深層水対策室長 |
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池田敏宏 |
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室戸市といえばかつては捕鯨、近くは遠洋マグロ漁の基地として、また近海・沖合漁業を基幹産業とするまちとして発展してきた。段丘状の地形に黒潮が洗う雄大な海岸線を有する自然景観が人びとをひきつけ、さらに四国八十八カ所の霊場のうち三カ所の霊場が存在するなど、観光スポットとしても高知県を代表する地域の一つである。
全国に先駆け研究に着手
しかし、近年の漁業を取り巻く環境は厳しさを増し、観光面でも入り込み客の低迷という情勢が続いている。こうした中、市民生活とのかかわりが深い室戸の海に着目した取り組みの一つとして海洋深層水の研究開発を進めており、事業が軌道に乗りつつある。
そもそも、室戸市が海洋深層水の研究を始めようとしたのは、昭和六十年、旧科学技術庁のアクアマリン計画海洋深層水資源の有効利用技術に関する研究のモデル海域に室戸岬海域が指定されたことが発端であった。
どうしてここか、と言えば、陸から急に水深が深くなっているという立地条件はもとより、室戸岬の東側には南西から北東に流れる深層水の流れがあり、これが岬の壁にあたり昇るという特色ある海域だからである。
この流れは湧昇流と呼ばれているが、ある学説によると、こうした湧昇域は全海域の〇・一%なのに、そこでの漁獲量は全漁獲量の三分の二を占めるといわれている。栄養分が湧き上がり、非常に良い漁場を形成している。この室戸岬の東側では、古くからブリ、マグロの定置網漁が盛んで、さらにはクジラも現れる。これも湧昇によって豊富な栄養分が得られるためである。プランクトンから小型、そして大型の魚というように食物連鎖を呼ぶ地域というわけである。
海洋深層水は、陸棚外縁部、光合成が行われる限界であるおよそ水深二百〜三百メートル以深にある海水を総称して呼ばれている。
平成元年に室戸岬に日本で初めて開設された高知県海洋深層水研究所の取水口の設置水深は三百二十メートルであった。七年に増設した三百四十四メートルと合わせ、二カ所で合計九百二十トンを取水するようになり、また十二年に県の取水施設とは別に総事業費十六億円で室戸市が建設した取水施設「アクアファーム」は、三百七十四メートル、同四千トンの規模である。
多様な分野で商品化進む
高知県海洋深層水研究所はわが国で唯一、陸上での研究施設であったので、開設後は特性の把握といった基礎的な研究はもとより、水産や工業といった産業面をはじめとした各分野への利活用研究が容易となった。基礎的な分析研究を蓄積しながら産業分野や医療分野などへの応用利用の研究を続けるとともに、無機栄養塩に富み、清浄性、低温安定性に優れている海洋深層水を用いた商品づくりにチャレンジしてもらうため、七年の十月から企業などへ無償で分水を始めた。
県の工業技術センターを中心に試作開発が始まり、県特産のユズと深層水をミックスした飲料水の商品化がさきがけとなり、続いて深層水のミネラル特性・清浄性に着目したミネラルウォーターが生まれ、酒、しょう油、豆腐、パン、また化粧品など多岐多様な分野での商品化が加速された。
酒やしょう油、パンなどの発酵食品分野で深層水を用いると、発酵が促進され香気が増し、酒においてはアルコールの量も多くなるといった効果が得られた。豆腐ではキメが整い、保水性が増すといったことや、化粧品ではしっとり感、肌へのなじみの良さといった使用成果が寄せられている。
こうしてビジネスとしての室戸海洋深層水の利活用が始まったのであるが、その売り上げの推移を見ると、実質の初年ともいえる八年は八社合計で約二億円、九年は二十四社で十三億円、十年は三十一社で二十六億円、十一年は五十四社で三十九億円、それが十二年には七十四社で百五億円と百億円を超え、まさに急成長した。中でも十一年にはメディアで大きく取り上げられたこともあって、この年から翌年の売り上げは二・七倍と急激な伸びを示した。
商品数も先ほどの分野に、さらに冷菓、水菓子、漬物、ウェットティッシュ、入浴剤などが加わり四十品目を数えるに至っている。
ブランドマークを制定
商品化に当たっては、海洋深層水の特長をどう引き出しものづくりにつなげるか、という点からの開発コンセプトを大事にしている。海洋深層水は生きた海水なので厳しい管理も求められる。こうしたこともあり、商品化のための分水を許可するに当たっては、県と室戸市が合同で審査組織を設けチェックし、この中から生まれた商品には県が商標登録している「ブランドマーク」の使用を認めている。マークは濃紺(深層水)と淡い青(表層水)のリングを重ね合わせたもので、室戸海洋深層水のいわばシンボルとして消費者の皆さんに識別してもらおうというものである。今では九十社を超える商品に使用が拡大している。
相次ぐ県外企業の進出
一方、地域の振興といった面からとらえると、冷え込む二次産業が多い中で、取水地である室戸市では、進出企業の受け皿として取水地に隣接したエリアなどでの工業団地づくりが進んでいる。(株)シュウウエムラ化粧品(本社東京)、赤穂化成(株)(兵庫県赤穂市)といった企業に加え、この四月には飲料販売のダイドードリンコ(株)(大阪市)と地元資本の共同出資会社の新工場が着工されるなど、県内企業も数社加わり深層水関連企業が集積・立地し、新たな雇用の創出といった面でも地域経済に大きく寄与している。
また室戸市では、深層水を産業としてのみならず、健康づくりといった切り口で地域づくりに生かしている。かつて海水は暮らしの知恵として、日常生活のさまざまな面で多様に用いられていた。室戸市では市民の皆さんに海洋深層水を分水し有効利用してもらっており、炊飯に用いるとおいしいご飯になるとか、コーヒーをたてるとまろやかさが増す、といった声が寄せられるなど、生活の中へも海洋深層水が浸透しつつある。
海洋深層水を資源として産業利用していくのみならず、市民の暮らしの中に用いられることで地域のアイデンティティとして作用し、地域の存在感を高める起爆剤の役割も果たしていると思う。
激しさ増す地域・自治体間競争
海洋深層水を用いた商品であるということだけで話題となり、もてはやされた時期は過ぎ、今後真の評価が問われる。高知県では信頼というブランド化への第一歩を築くため、商品開発の段階で審査を行い商品化に取り組んできたし、特性把握や機能解明といった基礎的・基盤的な研究や応用利用開発に力を注いできた。海洋深層水は事業として地域間・自治体間競争といった様相を呈してきたが、時代に流されることなく、資源として海洋深層水と向き合い、科学的に探求していく取り組みと信頼される商品づくりを積み重ねていくことこそが、肝要だと考えている。
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