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福井県丹南地区 陶器など4業種が「新・越前屋」ブランドづくり 見え始めた商品作りへの目的意識 |
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東京生活研究所ディレクター(新・越前屋トータルコーディネート担当) |
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山田節子 |
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閉塞感増す地場産地
「新・越前屋」の取り組みも四年目にさしかかった。この間、政治の世界も経済の状況も良い手立てが見つからぬまま、疲労感や消失感が深まるばかりである。
このような社会状況の中、伝統的工芸品のおかれる環境は一層厳しいものがある。工芸は本来、人の生活を豊かに快適にしてくれる生活用品の生産行為である。したがって、生活の場で必要とされ、使われ、次のものづくりへと創意工夫される循環の中で、地域特有の素材・技法・価値をはぐくみ地域経済の活力となってきた。
物不足のときを過ぎ、高度成長期から低成長期へと、「洋風化・合理化・簡便化」への憧れを軸として、多様な消費体験を積んだ生活者のライフスタイルは激変し続けた。産地は変化から遊離し、大量に売りやすい商品の習慣的ものづくりに終始し、時代の流れに取り残された生産の場と化していった。
そのような傾向に拍車がかかったのは平成三年のバブル崩壊であった。すでに地場産地は生活文化としての工芸を面として供給する拠点ではなく、量で動くギフト市場と化していた。その儀礼的ギフトも激減し、低価格品生産のため海外生産移行などによる複合的現象で、産地としての地場の閉塞感は全国的規模で深刻さを増すばかりとなった。
このような重たい課題を抱えた「伝統的工芸品産地広域交流対策事業」補助金事業として十一年の春、「新・越前屋」はスタートした。
予想を超える55社が参加
福井県中央に位置する丹南地区は全国の地場産業が抱える問題の縮図のように、陶器・漆器・和紙・打刃物の伝統産地が集まっている。その異業種の交流の中から、「工芸の里」構想を推進し今日性ある生活ブランドを育てたいとの意図で発足したものである。
事業者一人ひとりが背負う危機意識の大きさと取り残される不安から、予測を超える五十五社の参加となった。その背景には九、十年と越前焼工業協同組合で推進した、「地域産業起業化支援事業」の「越前の蕎麦を盛る器」の開発の成果があったと思われる。
かつて、粗食であったそばが、いまや、飽食時代の本物志向・こだわり志向の代表格としてぜいたく食になっている。福井の人たちも越前そばには誇りがあり、越前焼を作る一人ひとりが、それぞれにうんちくがある。時代のこだわりイコール越前焼をつくる人のこだわりであり、生活実感を伴った商品開発の手法を体得したプロジェクトとなった。女性事務局長を中心に、そこで培った力がその後の結束力や開発力に反映され、今日に続いている。
そのような結果を期待して集まった人の数が多すぎて、収拾のつかぬことは予測されたが、各事務局で抱える問題の温度差をも含めて、初年度事業は、時代の変化を産地の多くの人が把握するための勉強会に主眼を置くこととした。
「現代和」をテーマに
発足から二カ月後の六月、「新・越前屋」構想を提案し、七月には丹南地区工芸品の技術、素材が活きる新工芸として、「現代の床の間」「現代の食卓」「現代の縁」の三つの切り口を提案した。
人件費の高い日本で作られるもののコストは必然的に高くなる。しかし、この国の伝統的美意識の精神と技術にはずば抜けたものがある。今、洋風化された日常の中で育った日本の若者の心をとらえているのはグローバルな感覚での「現代和」である。シンプルでモダンな和のスタイルが、事実、日本以上にトレンドとして欧米で注目されている。
高齢化している作り手に「現代和」を感じてもらうことは、当初至難の技であったが、高齢といえども、中には茶道の心得のある人がいて、一つの答えをだしてくれたものも含め、試行錯誤の中、百四十アイテムの試作品が生まれた。年度末には県外委員三人、県内委員十人の求評会を開催し、地域の方々にも見てもらった。好意的な意見が多く、可能性は把握できたが、商品化となると問題はまだまだ山積みであった。
次年度の目標は大消費地である東京銀座の百貨店での展示発表会に目標を置き、試作品の精度アップと交流会ならではの異素材の組み合わせから生まれる、新商品開発に主力を置いた。
十二年二月、二週間にわたり、在庫リスクを背負って展示販売会を開催した。自分たちで売り場に立ち、客の顔を見、その声を聞く。容易なことではないが、そのことで時代が変化していることの実感を感じてもらいたいと願った。
たとえば、越前漆器の蕎麦箪笥に打刃物の取っ手をつけ、越前焼の蕎麦の器を納めたセットを「蕎麦パーティーに呼ばれ手土産に」とうれしそうに抱えて帰った男性客がいた。越前和紙に漆をかけた「漆和紙」と打刃物の技を活かした「和釘」が高く評価されよく売れた。「都会の人は不思議なものをほしがるね」と作り手たちが驚かされた。しかし身についた習慣的なものづくりを脱し、驚きを継続的にものづくりに活かすことは、金銭的なリスクもあり、実に難しいことである。
百貨店に常設売り場がオープン
十三年、三年目の新・越前屋の取り組みは、製品化に向けて、商品開発・生産・管理・販売のシステムが本格的に稼動し、ブランドとして市場欲求に答えるところまでいくべきであった。しかし参加意識ばかりが先行し、それぞれの事務局と行政サイドの青写真のようにはことは運ばず、開発費や在庫リスクの問題など、補助金行政から脱皮し、自立事業の転換することの難しさに直面した。どこにも余力のない時代、補助金の範囲での活動に終わり、だれのための事業なのか、それすらあいまいな様相を呈し停滞しはじめた。
このような状況になっても、福井の人びとにはあきらめぬ粘り強さがある。年度末に至り、行政担当者たちが経済産業省の連携活性化計画認定第一号の指定を取り付け、新たな展開を創出した。産地プロデューサーや販路開拓アドバイザーも雇用され、体制を強化した。
そして本年度四月には、かねてより課題であったアンテナショップとして、福井市のだるまや西武に常設売り場が用意された。
至れり尽くせりといった観があるが、今まであいまいであった部分が日常として露呈し、売り上げはもちろんのこと、季節ごとの商品演出も含め現実的責任に直面している。否応なく参加者は選別され、統一コンセプトに即した多様な対応が不可欠となってきている。
それでも体験の場を得、内部に熱心に売り場演出を担う人も育ち始め、商品作りに意欲的な目的意識が見え始めた。
「ものを作らぬ国は滅びる」といわれる。「作り手」の中に「使い手」の思いが共存し、地域それぞれの「使う人の生活文化」が豊かであることが何より肝心と感じている。
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