nagare.GIF yuyake.GIF




地域の活性化につながるITの活用

総務省自治行政局地域情報政策室

北村崇史

1.はじめに

「わが国が五年以内に世界最先端のIT国家となる」この野心的な目標が掲げられて以来、わが国においては、官民の総力を挙げた取り組みを図ってきた。具体的には、「e‐Japan重点計画」「e‐Japan2002プログラム」といった政府の行うべき施策を定めた各種計画を次々に策定するとともに、これらの施策について、着実に実施してきた。
 また、これらの取り組みの成果を踏まえ、「e‐Japan重点計画」を見直し、目標達成をさらに確実にするものとするべき施策の全容を明らかにする「e‐Japan重点計画―2002」が平成十四年六月十八日に策定された。
 本稿においては、このようなIT施策の中でも、地域文化・伝統芸能の保存と継承、地域の活性化、地域情報の発信、地域への愛着を高めるための教育など幅広い行政分野において、その活用が期待されているデジタルミュージアム構想について述べることとする。なお、意見にわたる箇所については、私見であることをお断りしておく。

2.デジタルミュージアム構想

 総務省においては、平成十一年度から「デジタル・ミュージアム構想」を推進している。
 本構想では、近年、文化財などを電子的に保存する「デジタル・アーカイブ」が注目されていることを踏まえ、デジタル・ネットワーク時代におけるアーカイビングの一環として、地域の美術館や博物館などの文化施設を地域文化の情報蓄積・発信拠点として位置づけるものである。構想の基本的な考え方として、(1)デジタル画像技術を用いて、有形・無形の文化財などを記録するとともに、デジタル化したコンテンツをだれでも自由に閲覧できる仕組みの構築【ためる】(2)地域間の文化財交流を促進するため、地方公共団体の施設およびインターネットにおいて情報の送受信・閲覧を可能とする【つなぐ】(3)ハイビジョン・ミュージアム・システムなど既存システムとの整合性を考慮し、美術館や博物館が従来から所有する画像資産の有効活用を図る【いかす】─ことを念頭に置いて、地域が主体となれる、情報資産を高度に利活用するための環境整備を行おうとするものである。
 本構想については、情報通信技術(IT)の進展下において地方公共団体が早急に取り組むべき事項などについて提示した「IT革命に対応した地方公共団体における情報化施策等の推進に関する指針」(平成十二年八月二十八日情報通信技術(IT)革命に対応した地方公共団体における情報化推進本部決定)および、本指針に盛り込まれた内容の計画的推進を図るため、自治省(総務省)として取り組む事項などを年度ごとに提示した「地域IT推進のための自治省アクション・プラン」(十二年十二月二十五日同本部決定)においても、電子自治体構築のための重要施策の一つとして位置付けられている。
 これらの施策を具体的に支援するため、地方公共団体におけるデジタルコンテンツの制作に対する財政支援については、十二年度は、都道府県分を普通交付税の単位費用(総額二十五億円)で、市町村分を特別交付税(総額五億円)で措置したところであり、四十五市町村においてデジタル・コンテンツの制作が行われ、所要の経費について特別交付税措置を行った。
 また、標記システムの整備(ハード事業)について、「地域活力創出プラン」の一事業である地域情報通信基盤整備事業の対象とし、地域総合整備事業債による財政措置を講じた。

3.平成13年度の取り組みの結果について

 このような経緯を基に、総務省においては、十三年度も引き続きデジタルミュージアム構想の普及推進を行ってきた。
 十三年度においては、地方公共団体におけるデジタルコンテンツの制作に対する財政支援については、都道府県分を普通交付税の単位費用(総額十億円)で引き続き措置した。
 市町村分については、市町村におけるデジタルミュージアム構想の浸透が進んだことから、特別交付税措置額を十二年度の倍に当たる総額十億円を措置した。
 この結果、十二年度から八団体増となる五十三市町村においてデジタル・コンテンツの制作が行われ、所要の経費について特別交付税措置を行った。
 デジタル・コンテンツの内容も地域の風景、祭り、文化財から、民俗芸能、伝承の保存など多岐にわたり、地域の独自性を前面に打ち出したコンテンツの制作が行われた。
 また、これら支援施策のほかにもデジタルミュージアム推進協議会と協力し、各種セミナーにおいて講演を行うなど、積極的な普及施策に努めてきた。

デジタルコンテンツの制作に対する支援について(市町村分、平成13年度実績)

●制度の概要
地域の美術館・博物館などに収蔵されている有形の文化財や地域の祭礼などの無形の文化財など広義の「地域文化」をデジタルデータ化する経費について地方交付税措置を講じる。
●対象事業
広く地域文化一般をデジタル化する事業
●対象経費
撮影許可料、企画づくり、撮影料、デジタル化経費、書誌データ作成費、インターネット変換経費、その他
●措置内容(平成13年度)
都道府県…普通交付税(単位費用)による措置 総額25億円 標準団体〔人口:170万人〕当たり 36,054千円
→普通交付税として、東京都を除く46道府県に措置
市区町村…特別交付税による措置 総額10億円
→事業の有無について照会→3月に事業費の50%程度を交付
〔市町村の実績〕
53市区町村においてデジタルコンテンツを制作(前年度45市町村)
事業費:総額324,000千円程度(前年度350,000千円程度) 
都道府県 市町村 コンテンツの内容
北海道 紋別市 市博物館所蔵資料
青森県 鰺ケ沢町 江戸期民族資料(弘前藩海運史資料)
岩手県 花巻市 市人文系博物館収蔵品
  釜石市 バーチャル鉄の歴史館展示品
  東和町 萬鉄五郎作品
  一戸町 御所野遺跡センター資料
宮城県 仙台市 市所蔵美術資料ほか
山形県 米沢市 米沢市新博物館【上杉家文書など】
栃木県 益子町 陶芸の歴史、益子再発見(祭り・伝統芸能)
  壬生町 おもちゃ博物館
群馬県 吉井町 歴史の里 吉井町【文化財、歴史散歩道】
東京都 文京区 ふるさと歴史館及び鴎外記念室資料
神奈川県 厚木市 郷土資料館所蔵品
新潟県 新潟市 郷土歴史博物館所蔵品
富山県 上平村 五箇山周辺民具・生活用具等記録
  福野町 町文化センター所蔵品
石川県 加賀市 九谷焼美術館【古九谷、加賀の茶器など】収蔵品
  志雄町 町内民話(版画)
山梨県 大月市 民俗芸能(紅富士太鼓、笹子追分人形)
長野県 松本市 北アルプスの四季〜松本城
  上田市 上田市博物館所蔵品、養蚕資料ほか
  塩尻市 21世紀に伝える風景ほか
  佐久市 佐久市近代美術館
  丸子町 民族伝統芸能記録保存
  南箕輪村 村伝説絵本
岐阜県 大垣市 市川里美絵本原画ほか
  中津川市 報道記録、青頓記念館所蔵品ほか
  羽島市 民族伝統芸能の記録保存【竹鼻祭の山車】
  土岐市 発掘調査等記録ほか
  笠松町 文化財、祭りほか
  南濃町 自然・歴史・文化財ほか
  安八町 文化財ほか
  伊自良村 文化の里収蔵資料
  白川町 白川の文化財
  東白川村 文化財
  加子母村 尾張藩三浦山・三ケ村山守文書
  山岡町 文化財
  金山町 岩屋岩蔭遺跡記録
  白川村 世界文化遺産冬の白川郷の風景絵画
静岡県 磐田市 遠江国分寺史跡
愛知県 蒲郡市 生命の海科学館収蔵品
三重県 名張市 赤目四十八滝、民族文化財映像記録
大阪府 和泉市 久保惣記念美術館所蔵品
岡山県 岡山市 市美術館・博物館の所蔵品、民謡・方言の記録保存
  津山市 洋学資料館所蔵品
山口県 防府市 埋蔵文化財調査結果ほか
  岩国市 錦帯橋平成の架替事業記録映像
香川県 高松市 高松市美術館所蔵品
福岡県 田主丸町 民俗芸能・伝承記録(虫追祭、河童伝承)
長崎県 時津町 郷土芸能【浮流ほか】
熊本県 本渡市 天草切支丹館展示品ほか
大分県 臼杵市 臼杵石仏等歴史遺産映像
沖縄県 読谷村 読谷バーチャル平和資料館
53  
     
平成14年度における支援措置
地域情報化推進事業の「電子自治体の推進」の内数として措置。


4.今後の展望について

 デジタルミュージアム構想については、電子自治体構築のための重要施策であることから、引き続き、他の電子自治体関連施策と連携しつつ、その推進に引き続き努めることとしている。
 ただし、デジタルミュージアム構想は、既に述べた「ためる」「つなぐ」「いかす」の三つのキーワードを理念とする、幅広い行政分野にかかわる施策である。
「ためる」地域文化、伝統芸能の保存については、有形の文化財の保存のみならず、無形の文化財、たとえば地域の祭り、地域にのみ継承されている舞踊、美しい自然などのみならず、地域住民の日常生活やさまざまな行事の保存もまた、重要な「文化の保存」とも言えるのではないだろうか。
 これらのデジタル・コンテンツ制作についても、地方公共団体職員のみが行うだけではなく、地域住民との協働により制作することで、行政と住民の信頼関係が構築されることとなるだろう。
「つなぐ」全国の美術館や博物館に相互リンクなどにより接続するのみならず、ホームページ上に掲載し、地域住民、学識経験者にも情報を公開し、掲示板などの活用により情報の交換を活発にすることで、新たな交流の輪が広がることとなる。また、同様の伝承を有する地域との情報交換および交流が深化することが期待される。
「いかす」デジタル・コンテンツを編集し、地域の発信のための番組制作、教育用コンテンツの制作を行うことにより、単なる文化財の保存のみならず、地域文化・伝統芸能の全国への発信、教育への活用で子供たちへの地域への興味を呼び起こし、愛着を高めることが期待される。





●9月号の目次へ