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べにばな王国

山形県副知事

金森義弘

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 山形県の母なる川・最上川。西回り航路による舟運が華やかなりしころ、この川の道は「紅の道」とも呼ばれ、出羽国の歴史に燦(さん)然とした栄光をもたらした。紅の道の「紅」は言うまでもなく紅花のことであり、山形県の県花である。
 紅花の原産地は地中海沿岸、エジプトといわれており、シルクロードから中国、そして日本へと伝来した。現在の最上川中流部にあたる地方は高品質の紅花の産地として江戸時代に注目され、舟で運ばれた紅花は織物や口紅となって江戸や京都の暮らしを彩り、その類まれな艶やかな色で人びとを魅了した。
 漂泊の俳人・松尾芭蕉が夏の出羽路を来訪し、野趣豊かな自然や温かい人情に触れて旅をしたのは、折しも紅花の最盛期。可憐な花の揺らぐ憧憬から山形で、「眉掃きを俤にして紅粉の花」と「行くすゑは誰が肌触れむ紅の花」の句を詠んでいる。愛らしい姿と鮮やかな紅色に心うばわれる人は多い。
 ところが、この紅花、最近では栽培農家の減少などにより、生産量も年々落ち込んでいる。そこで、紅花のもつ歴史や生活文化をしのび、紅花のある日常を復活させようという取り組みが各地でなされている。
 先日、将棋駒で有名な天童温泉で紅花を食材にした創作料理の発表会があった。紅花は血液をサラサラにする効能があると言われ、健康食として注目されている。食前酒の「紅花酒」はウォッカがベースの澄んだ黄色をしたカクテル。紅花ドレッシングを使った「サラダ風お造り」、紅花ソースがかけられた「甘鯛ワイン蒸し」、紅花の芽をあしらった「山形牛しゃぶしゃぶ」など、いずれも紅花がふんだんに使われた十二品のコースが披露され、参加者は鮮やかな料理に驚きと感心に満ちた表情で舌鼓を打っていた。
 この創作紅花膳の発表会は、紅花料理の普及により紅花の需要拡大や観光振興を図るため県が企画したもの。今後は県内の各温泉旅館で紅花料理を取り上げていただけるよう要望していく方針だ。
 県内指折りの紅花の生産地であり、宮崎駿監督のアニメーション映画「おもひでぽろぽろ」の舞台となった山形市高瀬地区を通るスーパー農道、通称「山形べにばなロード」。今年、県ではロード沿いで紅花の栽培を地元生産者に委託した。今までは、生産者の畑は山林に隠れ、見えない状態だったが、この夏は道路沿いに点在する紅花畑がドライバーたちの目を楽しませてくれた。将来的には、本県の代表的観光地である山寺や天童、蔵王などとの連携を強化し、広域的な観光拠点として全国にアピールしたいと考えている。
 また、産地である山形市、天童市、寒河江市、河北町などでは毎年紅花まつりが開催され、紅花染め体験や写真コンテストなどの趣向を凝らし、県内外からの観光客でにぎわいを見せた。地元の人たちは、遠方からわざわざ花を見に来てくれる人との交流を楽しみにし、紅花の魅力を懇切丁寧に伝えようとする。
 十年前には「べにばな国体」を開催し、また、「紅花の山形路」を観光キャンペーンのキャッチコピーとして採用するなど、県民の紅花に対する思い入れは強い。華やかな時代を復活し、名実共にべにばな王国を標榜するために、紅花の魅力を広げる取り組みを進めていきたいと思っている。



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