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愛知県高浜市 「手から手へ」、選べる給食サービス 協力店のボランティア精神で365日 |
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高浜市社会福祉協議会主査 |
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森野 隆 |
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愛知県三河平野の南西部に位置する高浜市は人口三万八千七百二十八人(平成十三年一月一日現在)、面積はわずか十三平方キロ。車で五分も走れば通り抜けてしまう小さな町である。その小さな町で、全国各地から視察や新聞、TV局、雑誌の取材と、かなりの反響を呼んでいるのが、毎日、一日も欠かさず、お年寄り家庭に食事を届ける給食サービスである。
「食生活の楽しみを」と市長が提案
高浜市の給食サービスは、市内の六十五歳以上の単身者および高齢者世帯を対象に平成五年八月から始まった。当初は、週二回、火曜(夕食)と木曜(昼食)に、その日によってあらかじめ決められている一種類のメニューの弁当を、約七十人の利用者に配食していた。
それが十年八月、市長がこんな提案をした。 「だれもが、日々の食生活の中で、いろいろなメニューを考え、食するのがごく当たり前なことではないだろうか」「決まった弁当でなく、いろいろなメニューの中から食べたいものを選んでいただくような、『選ぶ』楽しみと『食』を楽しみにしていただけるサービスを考えられないか」「新たに建物を造ったりするのではなく、今ある地域資源を活用できる『店の出前』という形で店の協力が得られれば、商店の活性化にもつながる」。
すなわち、食生活を高齢者の自立支援の重要なファクターとして位置づけ、何よりも「食」を楽しみにできるシステムの構築をしよう。そして店の協力が得られれば、衛生面でも配達でも、店のノウハウを活用できる―というものである。
早速、市内飲食店協会の会員約三百店に呼び掛け、説明会を開催したが、各戸に配達して回ったうえに器を回収することに店の人手の面などから理解がなかなか得られず、最終的に残ったのは十一店であった。職種はさまざまで、八百屋、魚屋、丼物屋、中華、弁当屋などである。
このときのある食堂の店主の言葉が忘れられない。「市内で商売をする以上、何か地域の方へお役に立てればと思った。いずれ私も年をとる。そのときは、このサービスを利用したいので、ボランティアのつもりで協力するよ」と言ってくださったのだ。
メニューは各協力店より二品目程度を提供してもらい、最終的に二十一種類のメニューが決まった。
好みのメニューを毎日出前
こうして十一年一月十八日から、毎日出前する新しい給食サービスが始まった。年度内の発案から年度内の実施に至るまで、六カ月という異例の速さであった。
各店が協力できるメニュー(和食、中華、洋食)の中から、利用者が自由に選び、注文する。店は注文を受けて午後二時過ぎごろから調理し、午後四時から出前をする。これは夕方からの店の繁忙時間を避けた時間帯であり、各店は限定数を設け、無理のない食数で対応するのである。この制度では、各店の理解とボランティア意識が欠かせないものとなる。また、食の偏りを把握するため、それぞれの利用者がいつ何を食したか、パソコンによる管理体制もとった。利用者の反応も良く、メニューを選べる楽しさが人気となって、登録者は二倍の百四十三人となった。
だが、スタート直後、協力店より苦情が入った。「朝から電話が殺到し、通常の商売ができない」と言うのである。当初、注文は利用者が食べたいものを直接、協力店に注文するというものであった。すぐ対応策を考え、社会福祉協議会が利用者から電話やFAXで注文を受け、各協力店へ発注する方法に改めた。いま、社会福祉協議会の朝は、「カツ丼一丁」「すし弁当一丁」という具合に始まる。
すべて協力店任せにするのではなく、それぞれの立場において、役割を分担することが大切となる。お互いできることは協力して行う。協力店には、食事の配達をお願いし、社会福祉協議会は、注文の受けと発注、チケットの販売を行う。利用される方にももちろん協力していただく。配達時間帯は留守にしない、食べ終わった器は軽く水洗いしておく、箸は用意する、などである。
一食当たりの価格は出前料五十円込みで四百五十円。このうち二百五十円が利用者負担で、残りは市、県、国が補助する。メニューは季節によって変動はあるが、月曜日なら茶そば、五目ごはん、中華風ちらし寿司など、火曜日なら和食折、北京丼、ざるそばなどの中からというように、好きなメニューを注文してもらう。このところの人気メニューはすし弁当、魚弁当、うな丼である。
出前の際に安否確認
給食サービスは出前ばかりではない。協力店には出前の際、お年寄りたちの安否を確認することも協力をしていただいている。給食を注文する世帯は必ずしもホームヘルパーの契約をしているとは限らず、日ごろの安否確認が難しかったが、協力店からの通報で体調の異変を知り、直ちにヘルパーを派遣できたことも何度かある。
現在は協力店も十三店に増え、利用者は二百八十人(対象者の一八%ほど)、一日平均百六食を高齢者宅へ配食している。単身者や高齢者夫婦だけでなく、介護者の入院や旅行などにより、一時的に独居となる高齢者に対しても給食サービスを利用できるよう、対象者の幅をもたせたシステムにしている。
今後、高齢化の進展により、対象者の増大は言うに及ばず、見守りの必要な高齢者も増加することは必至である。充実したサービスを提供するためにも、各メニューにカロリー表示するとか、アンケート調査などを行い、利用者の反応を常に把握することが必要であろう。
この制度は、ただ食事を配達するのではなく、安否確認が重要なポイントであり、地域社会から遠ざかりがちな高齢者に、給食の配達を通してふれあいが芽生えるといった波及効果がある。
今後の課題は、地域との触れ合いを視野に入れ、サービス協力店に利用者が自ら出かけて行く方法を検討することも大切となる。閉じこもりがちな高齢者が散歩がてら食事することにより、協力店も増え、「与える食事から選ぶ食事」に、といった利用しやすいサービスが期待できよう。
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