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大阪府豊中市
豊中駅前まちづくり協議会
まちづくり構想提案が行政動かす
地域のゆめ実現へ自らも次々と実行

前(財)地域活性化センター企画調査課副参事

高橋康志

 豊中市は、大阪市の北に位置する人口約四十万人の住宅都市である。夏の全国高校野球大会発祥の地としてその名を知られ、市内の「千里ニュータウン」はわが国最初の新住宅市街地開発事業として有名である。
 市を南北に縦断する阪急宝塚線の豊中駅周辺は市の中心の一つである。市がこの豊中駅を含む地域を「豊中都心ゾーン」として連続立体交差事業と駅周辺地区の整備を進めようとする一方で、まちづくりの調査研究や構想づくり、その実現に自発的に取り組む住民グループの姿があった。

商店街の衰退に商業者立ち上がる

「豊中駅前まちづくり協議会」は、駅前商店街の有志が昭和六十三年に集まったことに始まる。「地域間競争が激しくなり、商店街が衰退してきてね」─事務局長の入江修一さんと運営委員の小林和久さんは振り返る。「本格的にまちづくりの勉強を」と商業者と市職員の若手ボランティアによる勉強会が毎週始まった。
「このまちを良くしたいという思いは僕らが一番だから、真剣に勉強しました。専門知識は市職員に教えてもらって、ずいぶん詳しくなりました」。小林さんはそう言って笑った。
 八カ月間続いた勉強会の成果が、平成元年七月の「豊中駅前周辺地域まちづくりビジョン素案」である。活動を伝える広報紙「じゃすとナウとよなか」もこのころの創刊だ。
 この素案を四回のシンポジウムで地域に問いかけ、公開の研究会で調査や議論を継続し、専門的・技術的な検討も加え、四年「豊中駅前まちづくり構想」として整理した。
「以前も構想や計画は多数あったが、まちは変わらなかった。作成段階から住民が参画し、月日をかけないと、実行できないと思って」と入江さん。

住民主導のまちづくりに市も支援

 一方で行政も手をこまねいていたわけではない。「まちづくりは市民同士や、市民と行政との連携と分担によってつくられる」と考え、四年四月にまちづくり支援室(現まちづくり支援課)を設置、五年一月に「まちづくり条例」を施行し、このようなまちづくり活動の「組織づくり」「活動づくり」「まちづくり構想づくり」を資金面、技術面で応援する制度を制定したのである。
 翌月、条例の認定第一号として、それまでの任意組織が条例認定の「豊中駅前まちづくり協議会」となった。対象地域約十二ヘクタールの住民(個人・企業)約九百人のうち約五百三十人が会員として参加して設立された。
 組織ができ、市の助成を活用して、サロンコンサートやジャズフェスタを開催したり、金融機関と協力して夜間の店舗のライトアップを実現したりと、「まちづくり」を多彩に実現していく一方で、条例に基づく「まちづくり構想」の作成を進めた。
 会員以外の住民も参加できるよう、議論は常に公開された。二年半の間に大規模な討論会だけで十六回開催し、交通・駐車場・シニアハウス・小学校の建て替え・まち全体の将来・各地区の将来などさまざまな角度から論点を設定し、徹底的に討論された。全戸配布の一次案、一次案へのアンケート結果も反映した二次案を経て、最終的にA4判八十一ページに取りまとめられた「豊中駅前まちづくり構想」は七年五月の協議会総会で承認され、翌月市長に提案された。
 商業者有志による商業地の活性化活動が地域住民全体によるまちづくり活動へと展開し、魅力ある商業地づくりと住み良い環境づくりとが「良いまちを創る」という共通目的で融合したのだ。入江さんは語っている。「何でこんなことをと、あほらしく思ったこともあった。でも自己実現だ。自分の中で悔いを残したくなかった。そんなとき全国の地域リーダーとの交流が励みになった」。
 この「まちづくり構想」に対し、市は公共の役割や支援策を検討し、中間報告を地域に提案した。協議会は地域住民のアンケート結果を取りまとめ、市に再提案した。このように地域と行政とが対話を重ね、市としての方針が「豊中駅前のまちづくりについて(基本方針)」として九年五月に協議会に示された。

夢を形にする取り組み

 市の方針は、基本的に地元と共通の認識であることを示したうえで、市と住民との役割分担を基に、市の果たす役割を明確化したものである。
 一方で住民の果たす役割もまた明確になったとも言える。入江さんは頭をかいた。「まちづくり構想をつくったら終わりかと思っていたが、階段と同じで登ったら先の階段が見えてくる。その踊り場でどうしようかと考えることもあるけど」。
 しかし、構想の一部を具現化し、歩道を設置したというから驚く。地区内のホテルがレストランを建築しようとした場所が、まちづくり構想では歩行者と自動車を分離したゆったりした通りとして計画されていた。ホテルは、協議会の構想を基に、道路に面した敷地を歩行者空間として提供したという。「協議会がつくったのではない。つくってくれたのは地権者だ。僕らはお膳立てをし、地域の思いを伝えただけ」と小林さん。
 さらに、構想実現化のための事業主体として、(有)豊中駅前まちづくり会社までつくってしまった。構想の「ゆっくり歩き回れるまち」を実現するため、買い物客用の自転車置き場を設置したり、豊中駅前の魅力と情報を発信する空き店舗を活用したレンタルスペース「わくわくステーション」を開設したりと、地域経営の視点から、地域に密着した多様な事業を展開している。まちづくり会社で代表取締役を務める小林さんは「まちづくり協議会と連携しながら、まちづくりに必要な事業をみなさんとともに進めたい」と意欲満々だ。
 昨年四月には、住民と市や国、交通事業者などが協働して豊中駅前地区交通社会実験を実施した。商店街のモール(歩行者専用)化やマイカーの交通規制、公共交通の利用促進策など十六の実験メニューを行った。
「実験がスムーズに実施できたのは、まちづくり協議会という仕組みと十数年の活動、それに行政とのパートナーシップがあったからだ。この実験をきっかけに、商店街では、物流・荷さばき問題の解決に向けた新たな取り組みが始まっている」と入江さん。この交通社会実験の取り組みは海外にも紹介されるなど注目を浴びている。
 最近では、ハード面だけではなく、「とよなか地域商業活性化プラン」を作成したり、それを実行に移すための「豊中駅前商人大学」を開講したりと、まちづくりの担い手づくりにも余念がない。小林さんは張り切る。「われわれ商業者が良くなることがまち全体が良くなること、と胸を張って言える商業者を育てていきたい」。 「まちへの思いはみんな必ずある。その思い、夢に向かってみんなが力を合わせることが大事なんだ」と語る入江さんからは、これからも地域とともにまちづくりを行っていくという、確かな思いが伝わってきた。

豊中駅前まちづくり協議会プロフィール

●設立年=平成五年二月
●設立組織=自主的組織
●運営主体=自主的組織
●代表者=川本年男
●会員数=約六二〇人
●事務局連絡先=大阪府豊中市本町1丁目12-23 TEL・FAX06(6858)6190
 http://www.infomart.or.jp/ooaana/tsbk1122/



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